February 12, 2018

2017年に読んだ本 〜国産小説編~

もう二月。バレンタインデーも目前。

いい加減書いておかないと、去年の話なんて考えられなくなる。
もう考えたくないから流した年もあったんだけど、そうすると本当に「あの年ナニ読んだっけ」の記録が無くなって案外不自由だと最近思うので、とりあえず書いとこう。

そもそも何故か毎年熱が入るのは翻訳小説の方だ。
国産ものに関しても数はそれなりに読んでいるはずなのに、なんだかとにかく打率が低い。
今年は特にその傾向が強かった。

今年に限っては、ベイスターズで言えば乙坂智みたいな感じ。悪くないけど、ここで一発!がなかなか出ない。いや実は最初下園と書こうとしたが(好きだからな)、それだともう引退だし、じゃあ石川 雄洋、とも思ったが、二軍に塩漬けだった今期を考えるとそこまでではなかろうと思えるし、すると「あと一発の怖さがコンスタントに欲しい」という願いを込めて、やっぱ乙坂でしょう…つーかなんつーか。

本来舶来ものが好きだから今の仕事なんだ、というのは間違いないし、そもそも翻訳小説に関しては、よく考えてみりゃあ「死んだ父親がマニアだった」という因子が大きい。そこに最近イマサラ気が付いた。特にアクション冒険小説系。
ワタシが高校生だったころから、たまにホイと自分の読んだジャック・ヒギンズやギャビン・ライアルなんかをくれたりしてはいたのだが、地方大学に行って東京を離れてからは、段ボール一杯のアクション冒険スパイ小説の類が、定期的に突然送り付けられてくるようになった。
当時すでに活字中毒だったから、本と名が付けばなんでも読んでいたワタシ。輝くようなハードカバーの新刊小説など、恐れ多くて本屋でそっと表紙を撫でるのが関の山だった身には、なんとも有難いことではあった。基本突然突発型御厚意(?)ではあったにせよ。

もうひとつ分析すると、翻訳小説は版元を絞り込みやすいし、インターネットでいいサイトもあったりするので、新しいものに網を張りやすいのだ。別に新しい本を常に追いかけるのが好きなわけではないんだけれど、新しいものをこまめに読んでおく方が、情報収集が簡単で高打率が期待できるから、いつの間にか自然とそうなった。視力と体力に恵まれていた若いころは気にも留めなかったが、ここに「寿命」というタームまで視野に入ってくると、無駄は極力省きたい、と強力に思うようになってくるので、最近は案外真剣である。五十代の半ばに来て、とりあえず老眼鏡なしで文庫本がまだ読めているのは有難いことだが、これがいつまで続くのかは神のみぞ知る、なのだし。

で、新刊情報を図書館の新着情報とあわせて常時ちょこまか洗う習慣をつけたら、コスパと打率を共存させて、自宅のまことに限られた図書スペースも圧迫されないで済むようになった。よしよし。閑人め、と笑いたいものは笑うがよろしい。
だから翻訳小説に関しては、取りこぼし無しとは言わぬまでも、そこそこイイ感じで拾えているのだろう。

一方で国産小説に関しては、その辺を今ひとつ自分の中でシステム化できていないんだろうな、と最近思う。
だから今年の目標は、国産系に効率の良い網を張るメソードを確立すること、としようかな。
ラミレス監督だって言っているではないか、データの読み込みが先ずは全ての基本だと!

で、以下が2017年のリスト。
とりあえず、小説とは書いたが実用書・新書・ノンフィクションの類もすべて含めた国産もの、ということで十位まで。感想が別サイトにあるものは書籍名のURL参照。
あ、買いたい人は書影からドウゾ。するとワタシに投げ銭が来ます(笑)。


1.『スウィングしなけりゃ意味がない』 佐藤亜紀 (KADOKAWA) 2017
ナチス政権下の不良青年らとジャズと青春の物語。通り一遍の戦禍とナチスの話にならないのがいい。楽しくもほろ苦い青春小説として楽しく読んだ。これは是非翻訳してドイツで出版してほしい!





2.『蜜蜂と遠雷』 恩田陸 (幻冬舎) 2016
行間から音が響き渡る、素晴らしい音楽小説。夢中で読み耽った。

蜜蜂と遠雷
恩田 陸
幻冬舎
2016-09-23



3.『東京自叙伝』 奥泉 光 (集英社) 2014
東京の歴史を怪しい地霊が語りつつ、なぜか未来まで・・・。積読山から掘り出した一冊。奇書であり、相変らずヘンな捻りと味わいに満ちている。しかも長い。でもそれが苦にならない。何故なのかは自分でもよくわからないけど、それが相性ってもんなのかなあ(笑)。

東京自叙伝 (集英社文庫)
奥泉 光
集英社
2017-05-19




4.『プロテスタンティズム』 深井智朗 (中公新書) 2017
ルターの宗教改革から始めて、現代のプロテスタンティズムに至るまでの社会的また思想的な背景を丁寧に解き明かした一冊。今迄どうもスッキリ分からなかったことが色々と腑に落ちた。思想の背景には同時代の政治や社会情勢があるのだ、という、要は当然の話だったのだけれど。ちょっと目からうろこ。





5.『お春』 橋本治 (中央公論新社) 2016
読んだ後になるほど、不思議な余韻がじわじわ来る話だった。江戸の世話物の現代語訳かと思っていたら、まったくの創作だと知って驚いた。

お春
橋本 治
中央公論新社
2016-07-06




6.『新・所得倍増論』 デービッド・アトキンソン(東洋経済新報社)2016
「日本のGDPを上げたければ、日本の女性の社会進出をもっと進めよ」という論が新鮮。専業主婦なんて税金の無駄遣い、ということなのだが、そこが論理的に説明してある。別に『世界一訪れたい日本のつくりかた』という『新・観光立国論』の続編にあたるものも出版。今月下旬には『新・生産性立国論』が出るそうです。このヒトの提言は、単にあれがダメこれがダメ系の在日外人愚痴話ではなくて、具体的な提言が説得力をもって書かれているから好き。できたら日本の観光ガイドがあまりに冷遇されている問題を取り扱ってほしいものなのだけれど。

デービッド・アトキンソン 新・所得倍増論
デービッド アトキンソン
東洋経済新報社
2016-12-09



世界一訪れたい日本のつくりかた―新・観光立国論【実践編】
デービッド・アトキンソン
東洋経済新報社
2017-07-07




7.『警視庁生きものがかり』 福原秀一郎 (講談社) 2017
日本内外で輸入生物の違法取り扱いを取り締まる課が警視庁にあって・・・というノンフィクション。どこかに同じような体温の話が…と思ったら『パンダの飼い方』などの白瀬さんと親交のある方だったとやらで、なんだかナットク(笑)。





8.『太閤私記』 花村萬月 (講談社) 2017
普通の小説だと確実に胃もたれを呼ぶ花村萬月の、いろいろな意味でのコッテリねっとり生臭調@R18系が、軍記ものになると案外しっくりきて、意外や楽しく読めてしまった。前編は『信長私記』。続巻も近日刊行予定との由。

太閤私記
花村 萬月
講談社
2017-10-18




9.『西洋医が教える、本当は速効で治る漢方』 井齋 偉矢 (SB新書) 2014
陰陽五行論なんかは基本的に後付けだから、とりあえず効能で使えば漢方は即効でいいぞ!という、なんとも清々しい理論。この方のこのシリーズを三冊ほど読んだが、わかりやすくてよかったな。昨今とみに漢方マニア化してるワタシには面白い本でした。





10.『白い紙/サラム』 シリン・ネザマフィ (文藝春秋) 2009
イラン人の女性作家が日本語で書いた小説集。イラン・イラク戦争当時のイランを背景に、男女の自由恋愛など先ず許されない環境の中、十代の少年と少女がそっとお互いの気持ちを寄り添わせていく情景がとても瑞々しく切ない。

白い紙/サラム
シリン・ネザマフィ
文藝春秋
2009-08-07




さて、今年も面白い本をたくさん読めますように。


PS:
ロンドン話は、あと数回くらいはなんとか…と思っているんだけれどどうなることやら…。



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January 02, 2018

2017年に読んだ本 〜翻訳小説編~

一年が過ぎて年末楽しいのは、一年間何を読んだか思い出して反芻する時。
今年もだらだらと手元を通りすぎて行った、ざっくり200冊ほどの本たちを思い起こしながらビールなんか飲む。「正月だから」ということで、エビスの金缶。これぞ活字中毒者の小さな幸せ。

一応一年を振り返るなら、夏にロンドンに行ったことが一つ。
そしてもう一つ、なんといっても横浜DeNAベイスターズの日本シリーズ進出は大事件だった。
この数年順調に強くなってはいたのだが、それでもハマスタでの日本シリーズ開催は、ワタシも含めたあらゆる横浜の民の予想を超えていた。たぶん数年前のワタシに「三年後にはハマスタで日本シリーズに参戦していますよ」と誰かが予言したら、夢を持つのは結構だけど、このヒトちょっと妄想キツイよな、と笑ってスルーしたことだろう。

忘れもしない、クライマックスシリーズ最終戦、広島に見事勝利を収めたシーンをハマスタのパブリック・ビューイングで見届けたあの夜。
滂沱の涙とともに万歳を繰り返しながら
「これって要するに、次は日本シリーズってことか?」
「え、ナニそれ、まさかハマスタでまた野球が見られるとか、そういうこと・・・?」
みたいなつぶやきが周囲一帯で漏れていたのである。
とにかく現実離れした話だったのだ。
願い続ければ、いつかは叶う日が来る、みたいなファンタジーがそのまま現実に来たような感じ。
小説世界を実体験しているようなもので、本当に夢のような秋を過ごした。
こちらに全力で突っ込んでいった結果、ものすごく体力を消耗したが実に楽しかったナ。

そんなわけで、終戦後一か月ほどは、ほぼ使い物にならずゾンビ化。
しかも秋以降の野球シーズン中は、まるっきり本が進まなかったから重症だ。
やはり読書というのは、脳の認知機能の一定領域を必要とするものだった、という当たり前のことに気付いたのは、11月下旬に来てサクサク本が捗り始めた時。
人間てそんなものなんだナ。ま、そりゃあそうか。

で、今年読んだ翻訳小説ベストテン。
どこかに感想を書いたものは、書名にリンクが張ってあるので、そちらを参照いただきたく。
実は今年はナンダカンダと公私でオーバーヒート気味だったので、11月末までほぼ感想らしい感想がまとまっていないのだが。


1. 『アメリカーナ』 チママンダ・ンゴツィ・アディーチェ

2016年刊行だが、これはもっと早く読みたかった。私的オールタイム・ベスト『半分のぼった黄色い太陽』のアディーチェの最新作だが、こちらはもっと現代的なメロドラマ。肌の色、階級、西洋社会の矛盾などに深く切り込みながら、あくまでも切ないすれ違う男と女の恋の行方を描く話。読み終わるのが惜しい物語だった。読んだのはほぼ一年前だが、むしろ時間がたつほど余韻が深まる。
まだまだ寡作な作家なのだが、いつかは是非ノーベル賞を取ってほしいと切に願っていたりする。来年はアフリカ枠が来る、とかいう下馬評もあるのだが・・・?

アメリカーナ
チママンダ・ンゴズィ・アディーチェ
河出書房新社
2016-10-25



2. 『その犬の歩むところ』 ボストン・テラン
台北の通関で立ったまま読みながら、あふれ出そうになる涙を必死にとどめる羽目に落ちた一冊。犬小説の金字塔。本年刊行のものとしては、これがベストとなった。

その犬の歩むところ (文春文庫)
ボストン テラン
文藝春秋
2017-06-08



3. 『守備の極意』 チャド・ハーバック

アメリカの大学野球を舞台にした、瑞々しい青春野球小説。この数年ほど枕元の積読山で塩漬けになっていたのだが、なんとなく読んだら素晴らしい話だった。もっと早く読め!と自分を蹴り飛ばしたい気持ち。きっとこんな宝がまだまだ埋まっているに違いないのだが。

守備の極意(上)
チャド ハーバック
早川書房
2013-11-22



4. 『幸せなひとりぼっち』 フレドリック・バックマン

昨年同名の映画が公開された一作。映画に行きたいからまず読もう、と言いながら、映画のほうは見逃してしまった。孤独で偏屈な老人と近所の移民たちが交流を深めていく話で、わりとよくある背景だとは思うけれど、なんだか泣ける良い話だった。

幸せなひとりぼっち (ハヤカワ文庫NV)
フレドリック バックマン
早川書房
2016-10-21



5. 『年月日』  閻連科

我が積読山の大きな地層を成している、中国のノーベル賞作家 閻連科の小品。この作家に関しては、あと二冊長大な小説が後に控えているのだが、まずは・・・と手を伸ばしたらこれが実によかった。村人が捨て去った、砂漠の果てにある村に取り残された老人と老犬の話。不思議な寓話的世界だが、とぼけた語り口が実によい。他のも早く読まなきゃなあ。

年月日
閻連科
白水社
2016-11-10



6. 『マプチェの女』 カリル・フェレ

翻訳ミステリー大賞の候補作に上がっていたので読んだのだが、この出会いには感謝。
アルゼンチンの暗い歴史を克明に描いて、中々辛い展開もあるのだが、滾るような熱い暗さに引きずり込まれながら読んだ。必ずしも楽しくはないが後味は悪くない話で非常に面白かった。




7. 『東の果て、夜へ』 ビル・ビバリー

人を殺しにカリフォルニアに向かう、黒人の少年の成長譚。ロード・ノベル的な展開が楽しい。新人作家の作品ということで、これは是非続編が読みたい。




8. 『ノーノー・ボーイ』 ジョン・オカダ

言わずと知れた移民文学の金字塔。2016年刊行の新訳ということで手に取るきっかけになった。戦後の日系アメリカ人の苦難や生活ぶりを克明に描いた作品。これももっと前に読んでおくべき小説だったなと反省。

ノーノー・ボーイ
ジョン オカダ
旬報社
2016-12-14



9. 『13・67』 陳浩基

読んだのは11月下旬で、このころ野球が終わって正気を取り戻したので感想がまとまっている。リンク参照。
香港の社会背景を戦後から現在まで追いながら、警察小説と本格推理も楽しめる二度美味しい作品。香港ノワール映画の匂いも漂う。とりあえず香港の情景がいろいろと楽しかった。

13・67
陳 浩基
文藝春秋
2017-09-30




10. 『アメリカン・ウォー』 オマル・エルアッカド

21世紀末ごろのアメリカが舞台の近未来SF。SFとは思えない現実的な重みが、読んでいて実に辛い。目が離せないまま最後まで一気に読んだ。書いたのはエジプト生まれの作家で、ちょっとしたディテールが面白かった。詳細はリンク参照。

アメリカン・ウォー(上) (新潮文庫)
オマル エル=アッカド
新潮社
2017-08-27





国産小説については、また別途!

今年もまだ面白そうな小説が出るので、楽しみにして待ちたい。



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December 31, 2017

ロンドンうろちょろ徘徊記 其の五 〜街を歩き、花を愛で、またパイを喰う~

ロンドンの街歩きは楽しい。

歩き出してまず、なんとなくほっとする。
道に車がいなければ、人々は当たり前のように信号を無視して道を渡るのだ。
海外に長く住んでから日本に戻って、どうも窮屈なのがこの信号事情だったなあ、と思いだす。

日本ではほぼ完ぺきに信号とは「守るべきもの」。ワタシの場合、それでも自己責任でちょいちょい信号無視をするのだが、たいがいちょっと驚かれたり、軽い非難の視線に見舞われたりする。いいじゃんか、信号は車を止めるためのもので、人を止めるためのものじゃないんだし、と内心反駁しながら渡るのだが、やはり無意識下で面倒臭さは付きまとう。

しかも子供やお年寄りが横にいる時は、つられて路上に出てくる可能性があるので、そっちも気にしなければいけない。くー、メンドクセエ、としばしば思う。慣れたけどね。十年以上かけて。

ロンドンではそれが無い。
しかも信号ではきちんと車が止まる。
そして誰かが道を渡ろうとしているのを運転者が見ると、原則まずはブレーキを踏む。

どうでもいいことのようだが、ヨーロッパ圏で圧倒的多数にあるのは「歩行者が道を渡るのを見た運転者がアクセルを踏む国」だと思う。止まって渡らせようとするのではなく、さっさと通り過ぎる、という反応だ。そこが感覚的にわかっていれば、とりあえず飛び出して轢かれることはないのだが、信号のないところではとにかく道が渡りにくい。

これはあくまでも極私的なスタンダードなのだが、国民性的な穏やかさはこの辺の反応に出るのではないかなあ、とずいぶん昔から思っている。端的に仕分けるとまずい状況も色々あるのだろうが、やはりブレーキを踏んで歩行者を先に行かせてやる、という反応が自然と出る国は、人が穏やかでマナーも良いような気がするのだ。

例えばごく短期的な観察だったが、香港ではアクセルを踏み、マカオではブレーキを踏む。ドイツなんてどこもかしこもアクセル。トルコやギリシャもほぼアクセル型だったなあ・・・。

30年前のカイロは「ブレーキを踏む国」だったのに、五年ほどして舞い戻ったら「アクセル踏み込み型」が多数派になっていて面喰ったことがある。危うく轢かれるところだった。一つの国も同じであり続けるわけではない。ちなみに日本でも、最近はたまにアクセルを踏む馬鹿を見かけるようになったのは嘆かわしい。

良し悪しの問題ではなく、こういうことに国民性がなんとなく見えて面白い。
だからどこに行っても、まず道を渡りながらこの辺を観察してしまう。


ロンドンの街には古い建物が立ち並ぶ。
クラシックな街並みだが、区画ごとに少しずつ雰囲気が違う。
そんなグラデーションを追っていくうちに、あっという間に二時間くらい歩き続けている。
散歩が非常に楽しい街だ。巨大な古都に独特の力を感じる。

中世の街づくりに基づく街並みが多く残っているのだから、徒歩移動が生活の基本となっている時代の名残なのかもしれない。よくワカランが。
しかも治安が良いから、手回り品や懐中物にピリピリしなくてよいのも有難い。

歩き回っていて目につくのが、街路のごく当たり前な植栽など。
これが実に自然で美しいのだ。

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20170812 ロンドンの藤袴そこらのマンションの横にあるありふれた植栽が、実にしっとりとイイ感じ。
あちこちで思わず足を止めては眺めてしまう。
生命力の強い様々な野花が、ひっそりと豪華に咲き乱れている。

8月はこんな感じの藤袴をあちこちでよく見かけた。菊と樟脳を掛け合わせて淡くしたような芳香も同じ。関東では秋の花だが、ロンドンはやはりちょっと寒いところなのだな。

しばらくあちこちで見ているうちに、案外原則「植えたら植えっぱなし」ではあるらしい、とは思ったが、とりあえず、こうした植栽を作るときに、先にどうなるのかをプロジェクトしてから植えていく精神はあちこちに感じられる。よろしいんじゃないでしょうか。

正直日本で公共の場なんかの植栽を見ていると、なんだかよくわからないモヤモヤした気分になるのだが、ロンドンに来てその正体がスッキリと分かった。

日本にも確かに美しい植栽はあるのだが、たいてい季節ごとに植えては引っこ抜いて植え替え、の繰り返しなのだ。そうかなるほど、その虚しさに漫然と不満を感じていたんだな。
横浜公園のチューリップなど、その最たるもので、見るたびになんだかゲンナリする。

庭造りや自然との共生は、確かにイギリスに学ぶところがありそうだ。
ありふれた自然を上手く取り込んで共生する技、と言おうか。
哲学と言ってもよい。

実は、日本の田舎町に忽然とイングリッシュ・ガーデンと称する施設が現れたり、何かを勘違いしたような奥様方がザアマス的に熱く語ったりするのを聞くにつけ、なんとなく馬鹿にしていたワタシだったのだが。
侮っていたのを深くお詫びしたい気持ちである。スミマセンでした。平伏平伏。

街のいたるところに、様々な形の公園がある。
大きな木があって、花があって、芝生とベンチがある。
疲れたら一息入れられる場所が至るところにある。
ついでに喉が渇けばパブもある。
パブには安くて美味しいエールがある。

イイところじゃないか、ロンドン。
何故に今のいままで喰わず嫌いを通してしまったのだろう。
やれやれ、こんなことならもっと早く来てみればよかったよ。

では次にひとつ、大きな公園も見たいね、とRegent’s Parkへ。

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数年前に作られた人工の池だとか。
鳥がのどかに日向ぼっこしている。

20170812 鴨

人が寄ると一応避けて移動はするのだが、特に怯えることもない。
平然と昼寝を続ける強者も多数。

20170812鷺



鷺もそこいら辺をふらふらしている。
いいのかそれで、と思うほど
間近をボヤッと歩き回っている。









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そして素晴らしい薔薇園。
実によく丹精されていながら、なんだか自然な風情で群生しているのが不思議。
ダイナミックな広がりから、豪奢な香りが立ち上ってうっとりする。

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そしてなんとなく、夜もう一つパイを食べた。
シェパーズ・パイというもの。

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表面焼いてあるが、要はマッシュドポテトとグレービーで煮たひき肉の重ね焼き。素朴でウマイ。
本来は「羊飼いのパイ」だから、羊肉を使うものらしいが、この日の肉が何だったのかは記憶なし。
サラダと煮野菜をサイドに付けてもらった。

イギリスのメシって、皆が言うほど不味くないじゃん、などと思う。
あとで聞いたら、ユーロ導入からオリンピック開催にかけて、大幅に改善されたのだそうだ。
昔は本当にひどかったらしい。

20170811McGlyln's

寮の近所のパブ
で食べたのだが、ここのオヤジのしゃべる英語が衝撃的なほど理解不能。
いわゆるコクニーというものらしい。
「今日の料理」を二回聞きなおしたところで、唯一聞き取れたのがこれだ。
一日中歩き回って草臥れていたし、ま、ウマカッタからよかったのだ、と思う。
エールは安定の旨さ。
こんな古い時計はどこのパブにでもあるな。





ちなみに、万歩計の歩数は連日二万歩越え。
ううむ、このくらい歩いていれば、あのパイを毎日食べても大丈夫かなあ・・・などと思いながら寝た。


(つづく。だって、恋に堕ちた話をまだしていないもの・・・?)



帰国後ついウッカリ買っちまった本二冊(まだ積読山中)。








arima0831 at 01:20|PermalinkComments(0)このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック Share on Tumblr Clip to Evernote ロンドン 

November 04, 2017

ロンドンうろちょろ徘徊記 其の四 〜とりあえずパイを喰う〜

前夜の激しい雨が嘘のように、青空冴えるロンドン。
実際この後、しばらくは好天が続いて、雨のロンドンとか霧のロンドンとかって、いったいどこの話だよ、という感じになった。
ロンドンの住民に言わせると、この後の十日間くらいは、ロンドンらしからぬ
ステキなお天気だったそうだ。
あっそう。ワタシは傘が差せない時にいきなり土砂降られたけれどな・・・。

寮には三週間ほど滞在するので、とりあえず諸々の日用品の買い出しを兼ねて散歩に出た。
先ず目指すはスーパーマーケット、そしてロンドン的な百円ショップと食料品の調達ができる店を見つけなければイカン。

でもまあ、腹が減っては戦はできぬので、まずはイギリスらしきものを食べてみようと、近所のパブに。
ぶらぶら歩いて、まずはありふれた感じの大きな店に入ってみた。
その名もわかりやすく「London Pub」。

場所はラッセルスクエアの近くで、大英博物館も近い。

London20170810 パイ

Chicken & Wiltshire Ham Pie with Chips, Peas & Gravyというヤツ。
あとエールを1パイント。

このポテトはいらんな。クリスピーで美味しいけれど、毎日こんなものを食べていたらカロリー過剰で宇宙まで飛べてしまうぞ、とか言いながら、たっぷりついたグレービーソースが意外にいけて全部食べてしまった。
やばい。いやまあ、イイカ初回くらいは。

グリーンピースのソテーが一山ついていて、ポテトの向こう側に隠れている。冷凍ものだろうが、一応野菜が付いているのはイイネ、とこれもワシワシ食べる。
これが一人前£9.50。1ポンドが百円だったらよいのだが、実際は150円だから、まあ結構いい値段ではある。

パイの中には、ハムとチキンをホワイトソースで煮込んだシチュー。
サクサクとしたパイ皮を切り広げると、ふわっとイイ感じの湯気が上がる。
舌を火傷しそうになりながら、フッハフッハといただく。
意外性はないが、とりあえず間違いなくオイシイ♪

その他メニューはこちら。参考までに。

明るい窓際の席で、エールを飲みながらぼんやり外を眺めていると、もうこのままここで午後を過ごしてもいいんじゃないかなあ、と思えてくる。
こういう粘度の薄い黒っぽいビールは大好物だから、とってもシアワセだ。

何故かクリーミーな泡は否定して注ぐスタイル(?)のようだが。ビールの味わいは注ぐときの泡立ちが肝心、とドイツでも日本でも言っていると思うのに、エールの泡は見事に注いで即消えて特別気にもされていない。この後、エールはどこで飲んでも見事に泡はどうでもイイゼ!な感じだったので、そういうものらしい(でもドウシテ?誰か教えてください)。

パブにはこの後、あっちこっちでお世話になった。
こんな感じのわかりやすい食事が、安くはないがまあイイカと思えるくらいの値段で食べられる。
しかも多くが午後通し営業で、酒を飲もうが飲むまいが、机を長時間占拠しようが、とりあえずお構いなしで過ごせるのは有難い。一人ならば一人なりに、連れがいたらそれなりに、グループで盛り上がろう思えばそれもOKと、実にわかりやすく使いやすい。しかもビールが安い。

そういえば・・・とネットを覗くと、日本ではなんともう野球が終わっているではないか。時差があるから当然なのだが、なんだかミョーに感心する。
いや、実はそれは部屋を出る段階でわかっていたのではある。もうちょっとでニコニコ動画の中継配信にアクセスしそうになったのだが、心を鬼にして部屋を出たのだ。

ロンドン到着初日に日本のナイターを眺めて過ごすのも、まあある意味革新的で乙なのではないかなあ、とかナントカ悪魔の理屈をこねる身中のナニモノカに喝を入れて、キッパリ外出した自分を褒めてやりたい。是非褒めてください。
ダメ?

そんなこんなで、パブに根が生えかけた自分に気合を入れて立ち上がり、陽射し明るい街をさらに歩く。
週明けから通う大学の校舎の入口まで行ってみた。

2017London Curciformこの校舎はCruciformと呼ばれていて
上から俯瞰すると文字通り十字型の建物。
をを、なんとステキな校舎!と
思わずテンションが上がる。

でも実際のところ、こういうクラシックな建物って
中の構造がむやみに入り組んでいて
もうちょっとした迷路状。
校舎を抜けてどこかに行こうとすると確実に迷う。
慣れるまでは何度も学内で遭難しそうになった。
おかげで級友同士で仲良く連れ立ち
次の授業に向かうことになるので
学生同士の連帯は深まったのだが・・・



とりあえずここでは「きゃあステキ」とはしゃいで盛り上がるワタシ。
メデタイことだ。

20170811London書店20170811 London書店2


大学の本屋さんもついでに覗いたら、これがまた素晴らしい。
広々とした大型書店並みのスペース。クラシックな内装にゆったりとしたレイアウトで、随所に椅子なんかも置かれている。
圧迫感がなくて落ち着く。
イイナ、こういう店・・・♪

左側は旅行本コーナー。
大学周辺にワタシのようなオノボリも山ほどいるせいだか、旅行書が非常に充実していて、ロンドンのガイドブックなども色々。

ついでに地下に行ったら、ワンフロア分が中古書だった。
こっちはやや殺風景だが、それでも居並ぶ書籍の物量になんだか圧倒される。

確かにここは街のど真ん中で旅行者も多い場所だけに、学生だけがやってくる場所でもないのだろうが、大学の書店がこれだけの内容と品ぞろえを誇っているって、本当にステキなことだ。
そもそも多くの日本の書店によくあるように、長居をするとミョーに気持ちがササクレ立って来る感じがしない。

やばいやばい、こんなところにいると、午後中出てこられなくなってしまうぞ…
ということで、とりあえずざっと見るにとどめて店を出る。
その後この店には、授業の休み時間など、折りに触れ心を和ませてもらった。
横浜のワタシの身辺にも、こんなイイ感じの書店があったらいいのになあ…。

ロンドンの街を歩いていると、まず緑濃いことに驚かされる。
街中いたる所に大小さまざまな公園があって、巨大な木々の下には適宜ベンチがあるから、くたびれるとぼんやり座って一息入れてはまた歩く。
治安も良いので、手回り品の所在にピリピリする必要もほぼ無く、ただてくてくと歩き続けたら簡単に二時間くらい過ぎてしまう街だ。本当に散歩が楽しい。

そして街を歩いていると、至る所から聞こえてくる英語は、かつて馴染んだアラブ訛りにまみれているではないか。
寮の近所のキオスクは軒並みそういう人たちの経営だし、オックスフォード・サーカス辺りを歩いていたら、観光リキシャが昔懐かしいエジプト歌謡曲を大音量で流しながら、きこきこと走りすぎて行くし。わりと庶民的なデパートに入れば、前に並んでいる母子は明らかにエジプト人だし。
生活圏は生活圏なりに、観光地は観光地なりに、どこもかしこもアラブ系人種が本当に多い。

とりあえずヨーロッパの大都市に行って、ここまでアウェー感が薄い場所は初めてだよなあ、などとよくわからないことを思う。よくワカランが、なんだかミョーに懐かしい街、ロンドンなのではあった。


(つづく。できればなんとか、また忘れたころにでも…)




結局ナンダカンダとお世話になった。


Great Pubs of London
George Dailey
Prestel
2017-11-07


こんな新刊もあるらしい。ううう、欲しいなあ(ダメだってば)。

arima0831 at 01:53|PermalinkComments(0)このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック Share on Tumblr Clip to Evernote ロンドン 

October 23, 2017

ロンドンうろちょろ徘徊記 其の三 〜雨のロンドンにたどり着く〜

台北からようやくロンドン行きに乗った。
正直もう台北で残りの夏を過ごしていい!と思うくらい気に入ってはいたのだが、そうも言ってはいられない。

成田でとりあえず振られた席は最前列で、足元に荷物が収納できない。
四の五のゴネたら、バンコクまでは満席だから堪えてくれろ、そこから先は動かしてあげるよ、との由。
昨今のフライトは「ネットで席を事前予約」という小賢しい真似ができるのを、迂闊にもすっかり忘れていた。
この先も至る所で思い知るのだが、本当に情けなくなるほど「昔の人」なワタシ。やれやれ。これではイカン。

そしてバンコクで希望の窓際席に移動したところ、なんと手前の二席にはスーパー重量超過級の夫婦が、推定250キロ分ほどミッチミチに詰まっているではないか。あ〜あ、と内心タメイキをつくが、死に物狂いの笑顔で残念な感じを押し殺す。先方も十分申し訳なさそうにしているし、ワタシが座った端の一席が空いていそうなところに、かなり真剣な願をかけていた模様なのでもあるし。

こういう不運は安い席だとしばしば起きる。
この二人は臭くないからまだイイヨ。
過去最大の悲運は、某アフリカ系エアラインで、目に沁みて涙がにじむほどキョーレツな腋臭のガーナ人の横に席を振られたケース。あの18時間に比べればまだ耐えられる、と昔のことを思い出してみた。

我が取り柄は身の軽さである。
通路に出る時は二人を座らせたまま「はいゴメンネ〜」と、座席の手すりを足場に軽やかに跨ぎ渡っていけばよい。それだけのことだ。二人にはなんとなく感心されたのだが。いや、迷惑がっていたのかもしれないが、とりあえずそこのところは考えないでおく。そもそも通路に二人立たせると、いろいろ支障が起きそうなくらいの重量感だったのだし。

到着。ロンドンの入管の係官と暫し雑談。
冗談抜きで、本当に暫し雑談。

「混んでますねえ。夏休みだから?」
「いやいやいや、これは俺にしたらガラ空き。先週とかな、あの後ろのホール満杯に人が立ってたんだぞ。君は運がいい」
「へへー。そりゃあ驚いた」
「で、渡航の目的は?」
「短期留学です。UCLで集中講座があって、そこに参加します」
「ほほう、何を勉強するの?」

このくらいまでは普通の入管業務のフレンドリー版と言えるが・・・

「日本では何の仕事を?はあ、先生なんだ。学生って何歳くらい?何人くらい教えてるの?ふうん、出来はいいの?ダメか、そうか、アハハハハ。一か月かあ、けっこう長いねえ。ロンドンは初めて?ああ、古い方のパスポートに載っているわけね。ふうん。寮に住むんだ。住みやすいところだとイイネ。ああ、セントパンクラスならば場所は便利だなあ。それにしても英語ウマイねえ、どこで覚えたの?海外長いの?」

こんな調子で本当に楽し気にしゃべくりまくる係官。

ちなみにこれがイタリアだと夕食の予定まで聞かれたりすることもあるらしいが、ワタシ個人の資質の問題か、お国柄の違いか、そういう話は一切なく

「ロンドン、楽しんでね!」

と明るく優しく送り出してくれた。
つっけんどんな尋問調よりは楽しくてよろしいが、本当にこれでいいのか?!
こわごわ後ろを振り返ったら、相変わらずの長蛇の列だったり。
イギリス、とりあえず効率至上の国ではなさそう・・・と思いつつ地下鉄で街に向かう。

夜の九時を過ぎていたが、ロンドンの夏の日は長い。ようやく薄闇が外に滲み始める時分。
霧雨煙るロンドン郊外は緑濃い。ああ、ここはヨーロッパだなあ、と静かに暮れゆく外を眺めつつちょっとぼんやりする。

で、最寄りのキングスクロス駅に着いたら、風情ある霧雨は無情の土砂降りに。
今回はワタシにしては大変賢く、折りたたみ傘をスーツケースのポケットに入れて、すぐ出せるようにはしてあったのだが、盲点だったのは「荷物で両手がふさがれる」という事態であった。嗚呼残念無念。

手は二本しかないので、やむを得ず濡れながら荷物を引きずって歩く。
しかも道に迷った。駅のすぐ近くなのは間違いないのだが、夜でもあって方向がさっぱりわからない。
なんてこった。

四の五の言わずに、どんな近距離でもタクシーに飛び乗ればよかったのだ。
馬鹿バカばか、と己を呪うも空し。

で、ずぶ濡れでどうにか辿りついたら「到着予定も予約も申し送られていない」とやらで、夜番の警備担当者はどこぞかに電話をかけ、誰かがどこかからやってきて「ちょっと待ってね」とどこかに走っていって・・・と更に小一時間。

笑う気力もなく玄関でヘタっていたら、ようやく部屋の鍵がもらえた。
やれやれ。
嗚呼やれやれ。


2017 London JD Room 2017London JohnDodgesonkitchen>


部屋は誠に簡素なものだが、キッチンは広々して清潔だ。

シャワーのお湯も途中で止まることはないそうで(ここはまずフロントで確かめた)、水圧は顔に刺さって痛いほど。
ちょっとショボいが、まあヨカロ、ということで、適宜巣作りに励んでから寝た。

2017London JohnDodgesonoutside

翌朝起きて外を見たら
セントパンクラス駅の豪勢なファサードが
すぐ目と鼻の先に見えていた。

これはキングスクロス駅の隣の建物で
歩けばほんの数分なのだけれど
たったこれだけの距離を
篠突く雨の中で三十分余りも徘徊したのだよ。
ゴクローなことだ。

まあ、風邪をひかなかったから良しとして、とりあえず街に出てみることにした。



(つづく。たぶんまた忘れたころに・・・)


ちなみに寮はコレ↓

John Dodgeson House

夏の間は一泊単位でも泊まれて、普通に予約すると一泊55ポンドほど。
これでもこの辺りの安宿価格的にはかなり安いそうな。
ステキとは言い難いが、ロケーション抜群で設備的にも過不足ないので、案外居心地は悪くなかった。
それにしてもロンドンのホテルは高い!




適宜ゆるく笑いつつ、なんとなく参考に読んだイギリス文化ネタ。とりあえず楽しく読めます。


プラスニコ 折りたたみ傘 手開き 先染め タータン チェック レッド 全3色 8本骨 65cm EE-02987
プラスニコ 折りたたみ傘 手開き 先染め タータン チェック レッド 全3色 8本骨 65cm EE-02987
こんな感じの赤いタータンチェックの折り畳み傘を現地で買ったが、イマイチ恥かしくてロンドンでは差せませんでしたとさ(笑)。


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September 25, 2017

ロンドンうろちょろ徘徊記 其の二 〜到着するまでにウマイもんを喰って・・・〜~

ああだこうだ言いながら、ずるずるとロンドンに向かう。

先ずはこんなホテルに・・・。

台北ホテル1


ナニコレ?
ロンドンなのに何故・・・?

いや、ナンダカンダと、台北経由なんですよな。
実はこの数年、これもまた行くぞ行くぞ!と言い続けていたのが台湾だったりしたのだけれど、ロンドン行きの航空券を買おうとしたら、な~んと最安値がエバー航空なる台湾の航空会社だったわけで。

をを、なんとこれは!と、一石二鳥を狙ったワタシである。

で、とりあえずこれが案外立派なホテルだが・・・

台北ホテル2


おわかりいただけるだろうか。
このホテル周辺には、まったく何もない、ということを。
茫漠とした野原のド真ん中に一軒ドーンと建っているのだ。
この写真は最寄りの地下鉄駅から撮ったんだけれど、徒歩五分とは言えけっこう怖いくらいの往復ではあった。

ホテルのフロントに聞いたら「ここをまっすぐ行ってね~!」と明るく送り出してくれたところを見ると、危険はないらしいが。要するにここは治安が良いのだな、と勝手に納得して前進した。
人間は大丈夫でも、意外に野犬がいたりするからなあ・・・とは思ったがいなかった。でもやっぱりちょびっと怖かったです。

翌朝は早朝発だったので、とりあえず空港近くでテキトーに取った宿で、たかだか一泊六千円位なのに、やけに御立派な部屋ではあった。桃園空港まではタクシーで500円位。近くて便利ではある。ローカルなチェーン系で、台北市内に複数展開しているみたい。

シティスイーツ桃園ゲートウェイ(城市商旅航空館)(CITY SUITES GATEWAY HOTEL) 

ちなみに部屋はこんな感じ。
台北のホテルの部屋



台北の空港はゲンナリするほど混んでおり、通関待ちがおよそ一時間強。
この間ずらっと並んで立って待つので、けっこうウンザリするが、文庫本を読み続けて凌ぐ。
中々胸に刺さる話だったので、通関待ちの列で号泣しそうになった。
ここで怪しまれて入国拒否なんぞされたらたまらんので、涙腺に気合で圧をかけ蓋をする。
スゲー顔になっていたはずだが、なんとか入国はできた。やれやれ。

その犬の歩むところ (文春文庫)
ボストン テラン
文藝春秋
2017-06-08
 

(ちなみにこれは犬ものの傑作。本年度極私的第一位になる、かも?!)

さて、通関の思わぬ待ち時間のせいで、ホテル着は夜もいい加減遅かったのだが、とにかく町の匂いだけでも嗅いでいきたい。
フロントに市内中心部にはどうやって行けばいいの、と尋ねると、なんと地下鉄で一時間かかるヨ、とのお返事である。
えーー!一時間!!
成田並みだろうがそれは!!!

聞けば最近できたばかりの空港だ、との由。
あ、そうなんだ・・・。

しかしまあ、ホテルにいてもしょうがない(正しい判断だったことが歩き出してすぐにわかった)。麺粥の一杯なりとも、口にできることを期待して、誰もいない駅から地下鉄に乗る。

ガラ空きの地下鉄で一時間、ようやく落ち着いてガイドブックなどをじっくり読んでみた。
ホテルで貰った地図や情報も突き合わせて、そうかなるほど「夜市」なるものに行ってみようかな、と思い立つ。夜市というくらいだから、十時くらいまでに行けばなんとか端っこは覗けるはず。
地図をざっくり目測すると、台北駅から20分くらい歩けば、寧夏夜市なるところに行けそうだ。
駅から徒歩圏内、ていうのがよろしい感じ。

で、台北の駅に着いて、とりあえず歩き出すが、駅からどっちに向って歩けばいいのかさっぱりわからない。
駅員さんに聞いてみたら
「えええ、歩いていく?!歩けないよムリムリムリ、一時間くらいはかかる」と。

いやいや、地図によるとそういうことはなさそうだが、まあ最悪行きつけなくてもイイヤ。途中の街を眺めればよかろう・・・とハイハイ生返事で方角だけ何とか聞き出し歩き始める。
ところで台北の地下鉄駅の駅員さんたちは英語が上手い。感心した。日本じゃこうは行かないと思う。

あと、徒歩20分程度の場所に行こうとして道を聞いたら「ムリムリ!一時間かかる!」ていうのは、実はこの後さらに数回あった。一般台北市民は、どうもあんまり歩かない人たちみたい。
いやまあ例えば横浜で言えば、桜木町の駅前で中華街までの道を聞かれた場合、というのをイメージすると、確かに常識的には「タクシーで行けば」「バスはそこから・・・」「地下鉄は・・・」などなどという反応が正しいのかもしれないが・・・

歩けよみんな!徒歩移動は人類の基本だぞっ!!

台北の駅から大きな通り沿いは、夜だけに人気はそう多くないものの、ところどころイイ匂いの路面店が営業中。なるほど、夜は遅い街らしい。そのままスタスタと入って座りたい衝動に駆られるが「まず夜市!」と己を押しとどめつつ、指をくわえて歩く。くうん、ヤダなんかすっごいオイシソウなものが、ホラそこにもあそこにも…。

機内食をかなりセーブしたので、実はけっこう空腹なのだ。もう夜市はいいから、ここで何か食べていこうヨ、と食煩悩が囁き続けるなか「ここで妥協すると後でもっとウマイもんが出てきたときに後悔するぞっ!」と毅然と頭をもたげる我が理性@どっちにせよ食欲ベース。

しかし空腹は募る。ちらほら見える路面店の灯りにどうも抗いきれなくなってきた頃、忽然と辺りの明度が上がり、夜市に到着。

寧夏夜市ををを、これはステキだぞ!
営業終了の気配など微塵もなく、人でごった返しながらウマソーなものがあらゆるところで湯気を立てている。

後で聞いた話だが、夜市は市内外に数多あれど、食いもんにかけては圧倒的に寧夏夜市なのだそうだ。
何故かこういう勘だけはミョーに当たる。
自分で自分の嗅覚を褒めてやりたい。
いやまあ、要するに事前にちゃんと情報収集すればイイってだけの話なのだが。
でもワタシの場合、土地勘もないままガイドブックの類を眺めていても何一つ頭に入ってこないのだ。こういう情報を整理する能力に欠陥がある上、素直じゃないのがイカンのかなあ。悲しいことだ。

ま、いいってことヨ、と一回りして、ガッツリ胃と心に刺さったのは

寧夏看板


きゃー、ガチョウ肉!きゃー!!
特にこの一番左の「綜合下水」なるものに激しく心惹かれる。

しかしまあ、まずはオーソドックスに

鵞鶏麺


鵞鳥麺を食べてみた。
スープは薄味だがコク深い。
何より大好きな中華系スープの味わい。
肉は意外と癖がない。

ウウウウウウウ、とか不気味なうなり声を上げながら、ふと我に返ったら骨をしゃぶっていた。

さあ次!
もうちょっと胃がスッキリするものを食べておいてもよろしかろう・・・

苦瓜湯 


・・・ということで白苦瓜のスープ。こっちは排骨入りで、やっぱり一瞬の後に我に返ると、骨をズルズルしゃぶっている自分がいた。

青茶だの西瓜ジュースだのを片手に、湿度が垂れ込めるような夜気を楽しむ。
いやまあ、要するにかなり蒸し暑い上、そんな中で大汗をかきながら暑いスープを啜っているわけなんだけど、これはこれで実に楽しい。

ここで再び我に返ると、終電の時刻が迫っていたので慌てて帰路に就く。

実は帰りは二泊する算段になっているのだ。
今からもう楽しみでたまらないよう!
(ロンドンに行くために来たんじゃなかったのか??)

・・・と、祝盃上げる初日の夜だった。

台湾ビール



つづく。たぶん。
いや、少なくともロンドンに着くところくらいまでは・・・。



私的台湾食記帖
内田真美
アノニマ・スタジオ
2016-03-30


台湾行きたい!と強烈に思わせてくれたのが、しばらく前に手にしたこの一冊。
とにかくひたすら美味しそうなシズル感あふれててオススメ♪

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September 15, 2017

ロンドンうろちょろ徘徊記 其の一 〜準備編(?)~

八月、ロンドンに行ってきた。

ワタシにしてはかなり計画的に、まずは「行くぞ行くぞ行くんだぞ」と、周囲一帯に大声で宣言するところから始めたのが、たしか春先くらいのこと。
そうでもしないと面倒くさくなって「やっぱりヤメタ」になるのが目に見えているからだ。

最近は本当にフットワークが重くなった。
実は元々無精でぐうたらで計画性ゼロなので、休みに都内に行くのも遠征気分なワタシ。
「仕事」という強制力がかかると、ゼンマイ式玩具のごとくカタカタ起動して無理やり出ては行くのだが、そうでもなければ家の近辺でグダグダと過ごしてしまう。
別にこれは今に始まったことではなくて、若いころから自宅周辺でグダグダするのが好きなのではある。
たまに強烈な食煩悩に駆られてどこぞかに突撃していくこともあるけれど、横浜の場合ありがたくも大半が自宅から徒歩圏内で片付く。片付かないのはざっと考えて、たぶん鰻くらいのものだと思う。
とりあえず食環境には恵まれた街なのだ、横浜は。

それをいいことに、最近は仕事以外はまったくもって内弁慶な生活となっていた。
ワタシの場合、海外に十年ばかり住んでいたころの諸々をネタにして、流れ流れてどうにかこうにか食ってきたわけだけれど、ハッと気づけばもうそんなの、ざっくり二十年近く前の話になっているではないか。
これには我ながら驚いた。

なにぃ、二十年だと??!!
いや、まだそこまでは・・・イヤイヤしかし、帰国したのが前世紀の終わりごろなんだから、オリンピックで20周年ですわいよ。ひええええ。

中年期を驀進して老年に向っている、そのこと自体は軽いタメイキとともに達観してしまえる。
フツーだろそれ、と思う。
シミシワ白髪がナンボのもんじゃ、と開き直りつつ、脂肪の蓄積にはちょびっと注意している位なもんだ。

しかしふと気が付いたら、海外がどうにも遠いものとなっていて、そこは我ながらちょっと愕然とした。
なにしろ2007年にパスポートを更新して以来、日本の外に出たのは香港マカオ一回と、あとはプーケット&バンコクに行っただけ。それだけ。
元々は観光業関係者だったので、そういう話もたまにメシの種にしている身としては、これはイカンよね・・・と切れかけたパスポートを眺めながら猛省していたわけだ。

もう一つある。
ワタシはなんだかんだと結局のところ、英語をメシの種にしているのだが、実は現実の英語圏とはびっくりするほど縁が薄いのだ。

ロンドンには17歳の時、ケニヤに向かう飛行機が降りた時に半日寄った。それからエジプトにいた当時、仕事の日本出張がロンドン経由でついでに二泊したこともある(中一日で大英博物館の古代エジプト館を覗いた他は、パブを三軒はしごして終わった)。イギリスはそれだけ。
アメリカなんて、小学生の時に親に連れられてLAの親戚の家に遊びに行っただけ、ときた。
ええと、南アフリカも英語圏にカウントしてよければ、結婚してから十日くらい遊びに行ったな。
でも本当に以上そこまで。

かつて一番長く住んでいたエジプトという国が、とにかく食事情も酒事情もイマイチな場所だったので、休みにどこか行こうとなると、毎度ついつい食煩悩に目が眩んでいたのがそもそもイカン。そういうワタシが、メシの不味さをもって世界に名を馳せているイギリスに、わざわざ貴重な休みを使って出かけていくはずはない。だからほぼマトモに行こうとすら思わぬうちに、アレレと十年経って日本に戻ってきてしまった。

第一そもそも本来英語なんて、通じて仕事が成立すればそれでいいぞ、と思っていたし、幸か不幸かナンダカンダとそれで仕事になっていたもんだから、わざわざ自己研鑽の為に英語圏に出直そうなどという殊勝な心掛けもないまま中年期に突入。

そしてそんな中、ある時ちょっとした行きがかりで「英語を教える」という岸に流れ着いてしまった。その辺を辛うじて溺れない程度にヘロヘロ泳ぎ回って十年近くが経過。中年過ぎると本当に、十年なんてあっという間だ。

で、教壇の向こう側に押し流されたころ、英語の発音を説明しながら我ながら驚いた。ワタシは英語の発音のメカニズムをまったくわかっていなかったのだ。まあ、まともに学んだこともないのだから、わかってもいるはずもないのは自明だが、案外こういうことは追い詰められてみないとわからない。

さて、自分の発音だけならば、笑われていればネタで済むけれど、人に教えるとなるとそうもいかない。そこだけパスして次、というのも無理がある。ヤレヤレ困った、と自分なりに四苦八苦して泥縄式に遣り繰りしては来たが、こればかりはどこかでブートキャンプ式にガツガツ叩き込んでもらわないとイカンね、と思うに至って数年。

ある時、英語音声学を主戦場とする親切な同僚に、コッソリその辺を打ち明けたところ「あ、ありますよ、そういうコース。ロンドンで夏休みにやってます」と。

ではそれに参加しましょう、そうしましょう。
とか何とか言いながら、あっさりと数年が経過。
マズイ、このままではまた繰り延べを繰り返して無駄に齢を重ねるだけだ。

だからまずは、年が明けて春の気配も高まる中で「行くぞ」と周囲に大声で宣言したわけだ。
そしてコースの受付が春先に始まった段階で、申し込み書提出を強行。
ついでにさっさと授業料も払って、一緒に滞在先の寮の申し込みまでやっつけて、早いに越したことはないというから航空券も押さえてしまった。

さあもう後戻りはできないぞ、というところで、念には念を入れて
「ワタシ、夏休みにロンドン行くんだ♪」と語りまくった。
酔っていようがいなかろうが。

そんなこんなでせっかく強行した久々の海外生活。
勿体ないから一応まとめておこうと思う。



つづく。たぶん。





先ずこれは買っていった。
で、そこそこお世話になった。




これも一応買っていったが、肝心の旅行先がまともに決められていなかったので、結局イマイチ役に立たず終わった(悪いのはワタシです)。
ま、参考資料としてはよろしいのかなと思います。

arima0831 at 02:37|PermalinkComments(0)このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック Share on Tumblr Clip to Evernote ロンドン 

January 03, 2017

2016年の本 其の二 ∼国産小説編〜

何となく翻訳小説と国産小説、というジャンル分けにしているのだけれど、果たして自分はどういうバランスで読んでいるのだろう、とちょっと気になって、ゴクローにも数えてみた。

翻訳小説はなんと45冊くらいだった、という驚きの結果。
意外に少ない。しかしまあ、バランスという意味では全体の四分の一だから、そんなものなのかもしれない。

翻訳と国産、どちらを十冊選ぶのが心躍るかと言えば、実はやっぱり翻訳小説になるのは何故だろう。日本で出版される段階でかなり厳密なフィルターがかかっているから、アタリ率が高いのは間違いないのだが。
特に今年はその傾向が強い。

そもそも海外の風物などが好きでたまらないから、大学は語学系だったわけだし、挙句に海外で十年もほっつき歩いて、その細々した備蓄で今もどうにか食っているわけだし。まあそりゃあそうなるのも無理はないのか。はあ、なるほど、と勝手に納得してみる。

しかし翻訳ものが二作続くと「もういいや」となってくるあたり、ワタシもやっぱり日本人。
最近は好きだといったら好きだ!と叫びまくれるほど好きな作家がいないのが寂しい。

今年は一年振り返ってみても、心躍り胸膨らむ感じが、国産分野ではどうも薄かった感あり。
しかも小説と言いながら、半分ほどはノンフィクションなど実用書だ。
まあ、面白けりゃあなんでもよろしい、ということなんだが。
2017年は国産系での出会いに期待しよう。


1.ブラック・ライダー & 罪の終わり
2.暗幕のゲルニカ
3.ギケイキ
4.空気のつくり方
5.菌世界紀行
6.私的台湾食記帖
7.大統領の演説
8.流
9.竜と流木
10.室町無頼


そう、出会いと言えば、今年は東山彰良というデカイのがあった。
出会いは直木賞。ありがとう、直木賞。ケッとか言わずに今後は真面目にチェックするよ直木賞。
この人の本ときたらどれを読んでも面白いもんで、ワクワク順にすると十冊のうち半分くらいが東山彰良に占拠されてしまうのだが、一応続編もセットで一位『ブラック・ライダー』。翻訳小説のランキングに突っ込んだとしても、これは圧倒的に今年の一位だった。海外で翻訳出版したら、世界に並み居るポストアポカリプス小説群は裸足で逃げ出すに違いない。是非世界進出して、村上春樹を越えてほしい!
プラス、やっぱり初めて読んだ『流』はやはり楽しかった。こちらの私小説的な味わいも好きだ。結局突拍子もないところに話は飛んでいくのだが。



流
東山 彰良
講談社
2015-05-13



二位『暗幕のゲルニカ』。原田マハが実はそれほど好きではないのだが、美術作品を背景に据えた謎解きも含めてワクワクしながら読んだ。どことなく端正すぎるところは相変わらず原田マハなのだが。今年は『異邦人(いりびと)』なんつードロドロのメロドラマも書いているから、ちょっとは変化するのかなあ、と期待。
暗幕のゲルニカ
原田 マハ
新潮社
2016-03-28



異邦人(いりびと)
原田 マハ
PHP研究所
2015-02-25



三位『ギケイキ』。なんのこっちゃ、と思えば『義経記』、つまり源義経の話。狂った繰り言のような町田康節は本来苦手なのだけれど、何故かこの背景にはしっくりと溶け込む。まだまだ続きがあるらしいんだけど、いつ出るのだろう?
ギケイキ:千年の流転
町田 康
河出書房新社
2016-05-12



四位『空気のつくり方』。著者は横浜DeNAベイスターズ元球団社長の池田純。この本について周囲に語ると、ファン以外のリアクションがあまりに冷たいのだが、実録マーケティング小説的に非常に面白い話。SWOT分析なんて言葉、久しぶりに聞いて懐かしかった。球団史上初クライマックスシリーズ進出に華を添える快著。
空気のつくり方
池田 純
幻冬舎
2016-08-30



五位『菌世界紀行』。なんでこういう理系の本が視界に入ってきたのかなあ、とつぶやいてみたら、知人でもある田中真知さんの名著『たまたまザイール、またコンゴ』(昨年刊行)を押しのけて、第一回斉藤茂太賞とやらに輝いた作品なんだ・・・と、田中真知さん御本人に指摘されて気付いた。ハハハ。身贔屓でも何でもなく、話の密度、濃度、背景にある諸々をひっくるめ、ワタシに取っては真知さんの本のほうがはるかに面白いし、本の密度としてもはるかに濃いとは思うのだが。でも自堕落な酒飲み話が北大同窓系の琴線に響く。極寒地の菌類などの話もついでに面白い。



六位『私的台湾食記帖』。今年一番胃の腑と食欲中枢を刺激しまくった一冊。シズル感溢れる台湾のストリートフードがステキ。台湾、行かなくちゃな。できたら今年早々にでも是非。
私的台湾食記帖
内田真美
アノニマ・スタジオ
2016-03-30



七位『大統領の演説』。著者パトリック・ハーラン。テレビでよく見かける「パックン」の御著作。歴代大統領の名演説&ダメ演説を取り上げて解説しながら、現代アメリカ史にも切り込む。スピーチ教本的にも、歴史事象解説的にも、コンパクトながら実にうまいことまとまっていて、非常に良い本だった。いやはや、勉強になりました。今年は仕事のネタにも流用させてもらいます♪
それにしても、名演説を次々繰り出すオバマ大統領という「便利な英語の名文製造家」がいなくなって、ワタシの仕事的にはちょいと痛手・・・(代わりにアレじゃなあ)。
大統領の演説 (角川新書)
パトリック・ハーラン
KADOKAWA/角川書店
2016-07-11



九位は安定の篠田節子。怖い怖い!本当に怖い!相変わらずの不気味なリアリティーで迫る、生物環境パニック小説。
竜と流木
篠田 節子
講談社
2016-05-25



十位は垣根涼介。応仁の乱のちょっと前あたり、という、おっそろしくシブく且つ暗い穴を抉って描き出される青春群像で乱世の武芸者修行ストーリー。楽しく読めた。
室町無頼
垣根 涼介
新潮社
2016-08-22




ま、そんなようなこんなような感じで、今年もずるずる本を読みたいと思います。
面白い本があったら、皆さん是非教えてください。
やはり老年化への対抗策は、仲間を作ってチームとして打率を上げていくことですな、と思っている今日この頃だったり。いろいろな意味で。

arima0831 at 00:14|PermalinkComments(0)TrackBack(0)このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック Share on Tumblr Clip to Evernote 好きな本 | 本の紹介

January 02, 2017

2016年の本〜翻訳小説編~

2016年が終わって、年末に読みかけていた一冊をやっと先ほど読了。
最後の一冊は、珍しく少しずつ一週間ほどかけて読んだ『すべての見えない光』。これが何とも素晴らしい本だったのだが、その話はまた改めて。

去年は結局まとめそこなったが、一年が終わって前の年に何を読んだか振り返る作業は楽しい。
本が好きだ嫌いだという以前に、活字がないと生きていけない中毒者なので、とりあえず量だけはこなしていて、2016年の分をざっくりカウントしてみたら184冊だった。

冊数で読書量を云々するなど、アホらしいことだとは思う。
ワタシの場合、二段組み全6巻1800頁であろうが、写真集50頁であろうが「一冊は一冊」なのだし。
だから数はあくまでも個人的な目安に過ぎない。
忙しいと半分寝ていても話が頭に入るようなオモシロ小説やら、スカスカと事実だけを追いかけられる実用書が増えるし、どっとヒマになると密度の高い、いわゆる「良い本」に腰を据えてとりかかれる。どっちにしろ楽しい。楽しくない本も確かにあるが、そういう本は壁に向かってぶん投げて「ばっきゃろー!」と叫べば少しはスッキリするので、基本読書に無駄はない、ハズだ(ウソウソ、やってません。イメージの割りに?暴力性はないのよ。猫がびっくりするし)。

まあ最近は悲しいことに「加齢」という思いがけぬハードルに足元をすくわれている。老眼というヤツ。ワタシは元から特に視力が良くはないので、周囲の友人に比べればまだ進行が遅い方らしくはあって、まだ読書に老眼鏡は必要ないのだが、それでもスピードはあからさまに落ちた。さらに、視力だけではなく知力のほうも鈍っていると思しい。やれやれ。
だから最近は、手当たり次第に手を付けずに、少しは考えてから選ぶことにしている。時間は有限なのだ。止むを得ない。タメイキとともにここを認識するところから、老いは始まるのだろう。始まったばかりだが。そしてどこまで進行するのかもワカランが。

なににつけても節操がないのは食生活と同じ。一つのジャンルに偏って読み続けることはできず、軽いものを読み飛ばした後は、しみじみと端整な小説を愛でたくなるし、時間をかけて観念的なものを読めば、怒涛のようなストーリーに没入したくなる。国産の小説を読めば、翻訳もの成分が欠乏するし、ウソかマコトかわからぬ世界に没入すると、実用書ビジネス書の類で頭をリセットしたくなる。だから概ね「小説(国産)→小説(翻訳)→ノンフィクション」のループで回っているような気がする。自分でそう決めなくても、何となくそうなる。

この何年かは嬉しいことに、職場に図書館が付設されているので、「新刊を読みまくる」という贅沢がかなり許されるようになった。ついでに「近所の図書館」という結構な施設の使い方もマスターしつつあってありがたい。でもその結果「返却期限で読む順番が定められる」という理不尽がしばしば起きる。イヤだけどしょうがない。便と不便は裏表なんだし。

要するに新刊にこだわらなければ良いのではないか、という当たり前の真実に、最近ようやく気付きつつはあるのだけれど、世に溢れている情報は新刊が主体であって、情報に触れれば中身に興味が湧くのは、根がミーハーだから致し方ない。やっぱり新しいものは楽しいのだ、と思うあたりは、ワタシも一応バブルっ子なのかねえ。どこかでこのループから解脱したい、と最近思い始めないでもないのだが、それはまだ先の話になりそうで・・・

ということで、今年読んだ本のベスト10を。
まずは翻訳小説。
この数年読書記録用に愛用している『本が好き!』というサイトに感想を上げたものは、一応URL付き。

1.ザ・カルテル
2.蒲公英王朝記 & 蒲公英王朝記2
3.幸せの残像
4.エンジェル・メイカー
5.見えないすべての光
6.奇妙な孤島の物語
7.べつの言葉で
8.火星の人
9.さよなら、シリアルキラー & 殺人者の王 & Blood of My Blood
10.ジョイランド

1位『ザ・カルテル』はかの傑作『犬の力』の続編。ワタシはむしろこちらのほうが面白かった。圧倒的なリーダビリティーで寝ず食わず読み耽ることができる一作。年に一作くらいはこんなものが読みたい。ついでに『ストリート・キッズ』の続編も書いてほしかったり。
ザ・カルテル (上) (角川文庫)
ドン・ウィンズロウ
KADOKAWA/角川書店
2016-04-23



2位『蒲公英王朝記』はまだ話の中盤。2015年に出た短編集『紙の動物園』の美しい余韻も冷めやらぬ中、第一部が二巻分冊で出た。SF歴史大河武侠ファンタジーで、トルキーン的背景とジブリ的風景が味わえる。このシリーズはもっと売れろ!そして早く続編を!



3位『幸せの残像』パーレビ朝末期から半世紀に及ぶ、イランの女性の半生を描く。あまりにクソ忙しい時に読んだので、未だに感想がまとめられていないのだが、読んでいる間中幸せだった。結末に共感できるかどうかは別として。社会背景も面白いのだが、一般的な先進諸国では考えられぬような社会的拘束の多い中だからこそ、純粋な瑞々しさが切なく昇華。ラストは泣いた。



4位『エンジェル・メイカー』一年前に読んだ本だが、永遠のトンデモ本として脳内に刻み込まれた傑作。三文オペラ@SFファンタジー風味。



5位『すべての見えない光』2015年4月の刊行以来、ニューヨークのベストセラーランキングを爆走中。『シェル・コレクター』など短篇の名手アンソニー・ドーアの初長編。スケッチ風に切り出される戦禍の少年少女の人生が瑞々しく美しい。こういう本がバカ売れするなら、アメリカ人もアホばっかりじゃないんだな、と思えて安心したり。



6位『奇妙な孤島の物語』夏の海辺でじんわりと読んだ。世界中の絶海の孤島が50か所、地図とスケッチ風の短文で紹介されていく本、なんていうと味も素っ気もないが。本の装丁からレイアウトから、すべてに癒された一冊。日本語版が、いい仕事です!



7位『べつの言葉で』ジュンパ・ラヒリがイタリア語で書いたエッセイと短編。原語で読めないのが何とも悔しい。あの夏の日、いつかは必ず・・・と思ったきり、イタリア語の勉強はまだ始めてもおりませんが。



8位『火星の人』究極のSFヲタクがブログ展開していた話が出版化されたとやら。映画『オデッセイ』のほうも背景にダサい80年代ディスコ曲をバリバリ取り込んで、違った味わいの楽しさだった。小説と映画で二度美味しいってのは珍しい。是非映画とセットで。



9位『さよなら、シリアルキラー三部作』叙情的な青春小説から、一期に暗黒アクションスリラーへと変転!続巻が待ちきれず第三部は原書で読んだけど、もう翻訳が出てます。
さよなら、シリアルキラー (創元推理文庫)
バリー・ライガ
東京創元社
2015-05-11



10位『ジョイランド』スティーブン・キングの新作ということで、かなり期待していた『ドクター・メルセデス』がどうもイマイチ口に合わず。むしろこっちの方が好きだった。最初読んだときより、読んだときのことを思い出す方がじわじわ来る。
ジョイランド (文春文庫)
スティーヴン キング
文藝春秋
2016-07-08



昨年分の読み残しもまだ何冊か積んであるので、当分は楽しく暮らせそう。
とりあえずあらゆる国内ランキングを爆走中の『熊と踊れ』と、待望のツィママンダ・ンゴツィ・アディーチェの長編第二作『アメリカーナ』は早く読みたいが、返却期限縛りであと一週間は無理、というジレンマに苦しむお正月だったり。

2017年も面白い本とたくさん出会えますように。

熊と踊れ(上)(ハヤカワ・ミステリ文庫)
アンデシュ・ルースルンド
早川書房
2016-09-08



アメリカーナ
チママンダ・ンゴズィ・アディーチェ
河出書房新社
2016-10-25



arima0831 at 14:15|PermalinkComments(0)TrackBack(0)このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック Share on Tumblr Clip to Evernote 好きな本 | 本の紹介

August 30, 2015

2014年に読んだ本

最近はこちらに読んだ本の記録を残すことにしていて、あとはツイッターでつぶやくのみとなった日々。
元々は備忘録として始めたので、結局のところそういう形が一番良いのかな、と思っていたり。

しかしこのサイトだと、プロファイルにあげた記事を残しておけないので、一応こちらに移動させておきます。
今年初めにUPしたもの。

_______________________________

2014年の各ジャンルベスト5
一年間で読んだ本を初めて振り返ってみました。
『アラビアの夜の種族』で明け、『とらわれて夏』で終わった一年でした。

1)翻訳小説編
。隠院殖横押殖僑
△發ηはとれない
0Δ領側は闇
い箸蕕錣譴堂
ゥ凜.ぅリン職人の探求と推理

2)国産小説編
.▲薀咼△量襪亮鐶
冬虫夏草
E敘の花
ね戮詛
ス喊
イ里椶Δ両

3)ノンフィクション編
〔畋疾彦はなぜ力道山を殺さなかったのか
⊂澤征爾さんと、音楽について話をする
9痛探検家
い泙襪瓦肇ぅ鵐匹蔽砲鳩觝Г靴燭
ス諜鐡豸羆颪料靆敖
グ貎清気塙餡

こうして並べてみると、やっぱり自分はエスニックな臭いのするものが好きなのだなあ、と改めて思います。



arima0831 at 01:59|PermalinkComments(0)TrackBack(0)このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック Share on Tumblr Clip to Evernote 好きな本