January 02, 2021

2020年に読んだ本 〜和書編〜

先にも書いたが、今年はどうも華々しい長打が少なかった和書。
和書の場合、ちょっと出遅れると図書館の蔵書は長蛇の列で、なかなか借りられないのも原因なんだろうか?

ついでに2020年を概観してしまうと、やはりコロナ禍の話になる。

副業で二年越しに上手く伸ばしていた通訳案内士業が完全開店休業になったのが一つ。
一応三月に旅行業界系の視察旅行だけは一本できたけれど、今年はそれだけ。
2019年に順調に仕事に幅が広がってきて、三月には二十日近い地方も含めた長いツアーのデビュー戦が来ることになっていたのが、なんと二日前にキャンセルが来た。

しかしその準備で京都に何度か行ってきて、以来すっかり京都にハマってしまった。
なんといっても、この数年ですっかり高まった苔愛を満たすにはやはり世界最高の街なのだ。
コロナのおかげで新しい世界が広がった、とも言える。
いっそこのブログのテーマを京都と苔に路線変更してみるか…(笑)?

それはさておき、ガイドの仕事には正直オリンピックも含めて色々期するところのあった年なので、非常に残念ではあった。中東やらで、若い頃から何度となく仕事根こそぎは経験してきたので、最初はああまたか、てくらいのもんだったが、予想以上にしぶとく長い事態になりそうだ。事実は小説よりも奇なり。まったくなあ。
しかし旅行業というのは、非常に脆いがしぶとい業種なので、まあまたガツガツ稼げる時期も来るさ、と研修研鑽に励む日々。研修研鑽て、要は京都あたりで呑んだくれている、てことなんだが。
ま、それも勉強だよね♩

一方英語を教える方は、大学の授業の大半がオンラインに移行。自他ともに認めるIT原人のワタシには、冗談抜きで地獄のような春から初夏。ガチで発狂寸前だった。ヤダヤダと泣きながらデジタル最前線を無理やり突っ走らされているわけで、まあよく失敗したもんだ。ウチのタケゾウくんが、突然二本足歩行でスーツ着て会社経営を強いられて、トイレの粗相を繰り返すような状況だったよ。その辺がゴメンで済むのが非常時でもあって、いい勉強と言えばいい勉強にはなった。今でもイヤだが。ホント早く終わって欲しい。

そして我がベイスターズでは、我が最愛のアレックス・ラミレス監督が退任してしまった。
そろそろ来るな、と覚悟はしていたがこれはショック。
ついに我が3番ラミレスのユニフォームも引退だ。
今シーズンは何着てハマスタに行こう…?

じゃあ、梶谷のユニでも買うか…と思えば、ウッソーマサカのジャイアンツ移籍。日本プロ野球界で最も弁髪の似合いそうなリードオフマンが奪われてしまったのである。まあ仕方ない、弁髪の思い出はチョキンと断ち切って生きて行くよりないよねえ。怪しい髭ともおさらば。勝手にしろ。ぷんぷん。
ついでに井納の宇宙人発話も、もうハマスタで聴けなくなるか。ないとなると寂しい。
ジャイアンツのバカ〜!

というわけで(?)、今年の和書ベスト10。
小説、ノンフィクション、実用書を全部一緒くたでまとめる。


1.流浪の月

流浪の月
凪良 ゆう
東京創元社
2019-08-29



昨年一番胸に刺さった一冊。自由な両親に慈しまれ育った少女が、一転常識的で一般的な伯母夫婦の家庭での生活を強いられるが馴染めず、逃げ出すように縋った相手は公園で出会った大学生。世間の大騒ぎの中、淡々と穏やかに過ごした二人だが、彼は逮捕される。そして二十年後…少女拉致事件が背骨だが、実は胸を突くほど切ない恋物語。話は一転、二転して、一体どうなるのかと息を殺して話に没入した。生臭さはなく、二人の世界は透明な光に満ちて美しいが、取り巻く世間一般の人々はどこまでも愚鈍で醜い。姫野カオルコの『ツイラク』を読んだ時に近い衝撃だった。

2.米旅・麺旅のベトナム

米旅・麺旅のベトナム
木村 聡
弦書房
2019-08-23


ちょっとディープでマニアックなベトナム食紀行。フォーやボー、チキンライスといった日本でも一般的なベトナム料理からちょっと凝ったものまで、ベトナム食の奥にあるものを、味わい深い現地の風景とともに描き出す。写真も良い。作者のベトナム食に対する偏愛ぶりが行間からダダ漏れに流れてきて、これはまさにメシテロ。読んでいたら堪らないほどフォーやボーが食べたくなる。いつかは現地で、と言いつつ随分経ってしまったが、是非とも実現しよう、という気になった。

3.落花狼藉

落花狼藉
朝井 まかて
双葉社
2019-08-21


一人の女将の目を通じて見る吉原の歴史。花魁の話だと、薄倖な遊女の人生と悲哀にスポットが当たりがちなのだが、本書の場合はそうした要素も踏まえながら、もっと大きな歴史を紐解いていく。江戸の始まりに日本橋の外れに出来た売色の町の時代から始まり、奥浅草に移転し色街として大きく発展していくまでの六十年ほどを描く。一人の女性の人生を通じて、馴染んだ風景の奥にあるものが色々と見えてきて、時代小説として非常に面白く読んだ。

4.ぼくはイエローでホワイトでちょっとブルー

ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー
ブレイディみかこ
新潮社
2019-06-21



イギリスはブライトン在住の作者。彼女の息子が、そこそこいい小学校から地元の元底辺校に進学した日々を描く。今までなかった角度から描かれるイギリス社会の現実が淡々と描かれていく。元底辺だがそこから脱出するために学校の先生やスタッフたちが変えていったことや、自律的な思考を確立させる教育のあり方など、隅々まで実に興味深かった。スッキリ無駄がないスマートな文章だが捻りも効いていて、母である作者や息子の姿が生き生きと浮かぶ。海外在住日本人母のエッセイかと思ってうっかりスルーしていた迂闊。他の本も是非読もう!ということで読んだ『ワイルドサイドをほっつき歩け』も実に良かった。


5.砂子の中より青き草




正直にいえば『校正ガール』の作者が平安文学ものを…?という偏見がまずあって、手元にあってもしばらく開く気になれなかったのだが、いやはや恐れ入りました。枕草子を下敷きに、中宮定子と清少納言、そして取り巻く人々の息遣いが見事に伝わって来る。煌びやかな平安の宮中世界が濃密に描き出されていて、夢中で読んだ。250ページに満たないほどの話なのだが、じっくりと読んで堪能した一冊。一見こざっぱりした枕草子の世界に肉付けをすると、なんとこんな世界が生まれるのか。是非またこんな平安朝小説を書いて欲しい。

6.じんかん

じんかん
今村翔吾
講談社
2020-05-26



前回直木賞候補作品。前作『童の神』も面白かったが、本作はさらに話が緻密かつ濃厚に。応仁の乱から信長の時代に向かう戦国時代の社会背景や、さまざまな人間模様がみっちり描き込まれた濃い物語を堪能できた。松永弾正の人物造形が、実に高潔で立派で興味深いけど、ほんとにそうなの?とは思ったがまあヨシ(笑)

7.日本の中のインド亜大陸食紀行

日本の中のインド亜大陸食紀行
小林 真樹
阿佐ヶ谷書院
2019-05-17



ある時期から急速に増えた日本国内のインド系在留者たち。そうした人々の日本での食文化やビジネス環境、そして生活実態を観察しレポートした本。インドの代表的な各州、パキスタン、ネパール、バングラデシュなどの地域別に、日本全国各地の状況をまとめている。作者はインド料理の食器を扱う商社を経営しているそうだ。雑多な情報が出てきて多少散漫な印象はあるものの、こうした話はなかなかまとまってこないので貴重な一作。昨年出た『食べ歩くインド』も上下巻でインド全土の食を網羅してスゴイ本。インド三部作、といって良いかも。

8.美味すぎる!世界グルメ巡礼

美味すぎる! 世界グルメ巡礼
サラーム海上
双葉社
2020-08-27



ほぼ十年近く前にエジプトの革命時にカイロに居合わせて、その毎日をレポートしていたのを読んで以来、応援しつつ著作を読んでいる作家さん。本来はエスニック音楽ライターで、日本初の中東料理研究家でもある。取材力と人間関係構成力に、驚くほど健啖な食い意地を以て、いつのまにか他の誰にも真似できない世界を構築した。本書では中東だけに収まらず、世界各地、ついにギリシャやポーランドまでを勢力圏(?)に。カラー写真は少ないが、そちらはご本人のウェブページを参照。むしろ空腹時に穏やかに読めてよかったかも…?(笑)

9.宗教改革者




知の巨人で宗教学の専門家が語る、ルターと日蓮に共通する部分とは?読んでいくと、確かに奇想天外な比較ではなく、どちらも基本的には原理主義者と言って良いほど各宗教の基本に忠実な知識人である。基本を真っ当に語り尽くすが故に、本質からズレていた者には強烈なアンチテーゼとなった。ルターはともかく、日蓮についてはかなり色々偏見が入っていたなと反省。立正安国論は是非読んでみよう。

10.魯肉飯のさえずり

魯肉飯のさえずり
温又柔
中央公論新社
2020-08-21


台湾で出会った日本人の男性と結婚して、日本に来た母。日本で生まれ育った娘は、どことなく生きづらさを抱えたまま、若くして結婚。夫は彼女の作る魯肉飯が口に合わない。子供の頃は違和感を覚えた八角の香りが、結婚してどこか不安定な娘の気持ちに何かを生んでいく。そんな母と娘の姿を、短編を重ねる形で描き出す。優しい穏やかな眼差しに満ちている。まずとりあえず、魯肉飯を食べたくなる。台湾にまた行きたいな、と思う。そんな話。他愛無い話に思えたのだが、時間が経つごとに温かなイメージを増した。

次点 下級国民A

下級国民A
赤松 利市
CCCメディアハウス
2020-02-29



遅ればせながら一昨年から読み始めた作家。とりあえず一番強烈だったのが一昨年読んだ『犬』で、呵責なきエロスと暴力が強烈だったが、また違う角度の一冊が読めた。バブル期には派手にやっていた男が、身を持ち崩して東北で土木作業員として生きていく。現場の理不尽、他の作業員との確執、殺伐とした日々。主人公は作家自身で、エッセイなのだそうだが、小説を読むのと同じ感触。だが、エッセイらしくなんだか行間から現実感が漂う。明るさはまったくないのだが、淡々として突き放した筆致がどこかしらユーモラス。泥臭い話なのにすんなりと読めた。挿入される昭和歌謡がいい味。面白かった。


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January 01, 2021

2020年に読んだ本 〜翻訳小説編〜

去年ついついサボってしまったので、今年こそは書いておこう!

去年はナンダカンダとトータルで216冊読んだ。
老化の波が押し寄せてきて、ついに夜ベッドでの読書には老眼鏡が必要になり、読書スピードはガタ落ち。
その割に数が多いのは、記録場所を読書メーターに変えたので、今までカウントしてなかった実用書系や上下巻が数に入るようになったから。

実用書は読書なのか?という議論が最近仲間内であったんだけど、ワタシにとっては定食についてくるお新香みたいなものだし、それはそれでよく出来たものは面白いので、ワタシにとっては等しく本。
だからカウントに入れている。
入れないと、図書館で借りて既読のものをうっかりまた借りたりしかねないし。

今年は翻訳小説は豊作だったと思う。
まあワタシの場合、例年このジャンルは打率が高いのではある。
基本的に大手3社くらいをマメに抑えておけば良いからわかりやすくてよろしい。
一方で相変わらず国産小説は苦戦。

何しろ、ざっくりよかった本をリストアップしていくと、翻訳小説は簡単に20冊くらい上げられるのに
国産はノンフィクションや実用書も併せてようやく10冊程度。
じゃあ読んでるバランスは、というと、むしろ国産系の方が多いのだ。

比率でざっくり見ると、翻訳もの50冊対国産小説60冊、と言ったところ。残りは漫画と実用書。
打率が悪すぎる。特に今年はダメだった。

翻訳小説ベスト10は以下の通り。
基準はどこまでも好き嫌い。
読後脳のシワのどこかにきっちり食い込んだ度合いで決めている。


1.アーモンド(ソン・ウォンビョン)
アーモンド
ソン・ウォンピョン
祥伝社
2019-07-12


この数年じわじわとハマっている韓国小説と映画。日本の小説や映画にはない振り切れたストーリー展開が面白い。アレキシサイミア、或いは失感情症の少年が主人公。脳の中に扁桃体というアーモンドくらいの部位があって、そこが未発達だと感情の動きが薄くなるそうだ。そんな少年が成長し、周囲の人々と交わりながら変わっていく話、というとベタだが、随所に入り込むエピソードが実に鮮烈。生々しい驚きの連続は韓国映画を見ているようだ。映画人の作者らしく映像的な描写。翻訳も素晴らしい。まるで韓国の汁物みたいな小説。赤々と強烈に辛そうだが、口にすると甘くかつ塩っぱく、複雑な旨味に多彩な具材を夢中で啜り込む。映画人の作者らしく、非常に映像的な話だった。何しろしばらく経ってから、あのシーンの出てきた映画ってなんだっけ…と自分の記憶をたぐったら、この本の脳内イメージだったと気付いて驚いたくらいの強烈さ。素晴らしい!

2.ザリガニの鳴くところ(ディーリア・オーエンズ)
ザリガニの鳴くところ
ディーリア・オーエンズ
早川書房
2020-03-05


貧困とDVの中で家族に捨てられ、悲惨な状況の中にあって、自然豊かなアメリカ南部の湿地帯で一人生き延びる少女。美しく成長し自然の中に生き、恋をし、捨てられ、苦しみながら成長していくが殺人事件の犯人にされ…。作者は著名な動物学者で、自然描写やそこに息づく生き物の描写が濃密で感動的。自分を捨てた母を待ちわびる少女の切なさや孤独感が胸を刺すが、大自然の中で生き延びる逞しさには惚れ惚れとする。殺人事件の謎、恋物語、そして家族愛。素晴らしい物語だ。500ページが苦にならず、一気に読み通した。読めてよかった!

3.パチンコ(ミン・ジンリー)
パチンコ 上 (文春e-book)
ミン・ジン・リー
文藝春秋
2020-07-30


久々に読み終わるのが寂しい一冊だった。終盤のストーリーを、あと300ページくらい書き込んでくれたら言うことなかったと思うが、十分面白かった。韓国出身でアメリカ育ちの作家の本。貧しい釜山の下宿屋の娘が男に騙され妊娠し、しかし驚くほど善良な牧師に救われて結婚し、夫について大阪へ。日本で在日コリアンとして苦悩していく中での様々な情景が、歴史的背景のうねりに絡んで紡ぎ出されていく。主人公の母からそのひ孫までの三代に渡る一家のドラマだが、登場人物が実に彩り豊かだ。愛も喜びも憎しみも苦しみも、そして信頼も裏切りも、人生の喜怒哀楽を全て満遍なく絡めとり、没入させてくれる作品だった。

4.壊れた世界の者たちよ(ドン・ウィンズロウ)
壊れた世界の者たちよ (ハーパーBOOKS)
ドン ウィンズロウ
ハーパーコリンズ・ジャパン
2020-07-17


ワタシにとって、ドン・ウィンズロウの小説は大好きなものとウンザリするものの両極。中編集と聞いてバランスが不安だったが全編面白く読めた。呵責なき血みどろの闘争を描く表題作。お気に入りは軽いコメディ系の『サンディエゴ動物園』。初老になったニール・ケアリーが脇役復活でしみじみ嬉しい『サンセット』。シリーズで出ていた時から口に合わなかった、ベンとチョンとOの話は案の定イマイチな口当たりだが、思いがけぬ登場人物が出てきて楽しくなった。充実のセレクション。ニール・ケアリーで一冊書いてくれないかなあ。

5.おちび(エドワード・ケアリー)
おちび
エドワード・ケアリー
東京創元社
2019-11-29


蝋人形館のマダム・タッソーの数奇な生涯の話、とだけ聞いたときには、特段興味をそそられなかったのだが、周囲に絶賛の声があまりに高いので読んでみた。淡々としているのに少しだけ生臭くて薄気味悪さも少々。そこにゴシック風味と人間味を併せ持つ話がフランス革命の様々な史実と見事にリンクして実に実に面白い。随所に挿入される作者自身の手になる挿絵も独特の味わいを増していて夢中で読んだ。

6.網内人(陳浩基)
網内人 (文春e-book)
陳 浩基
文藝春秋
2020-09-28


香港発ミステリー。500ページ越え、しかも2段組。長さにちょいと怯んだが、読み出したら一気に最後までよみふけらせてくれた。13・67の香港ノワール調、ディオゲネス協奏曲の多彩さから、今回はノンストップの活劇へ。引き出しの多い作家だなあ、と感心する。何より行間から立ち上る香港の市井の風景がたまらない。匂いも音も、人々の息遣いをも描き出してくれて楽しい。現代香港の若者の風俗やネット社会の闇も興味深く読んだ。続編が出るとのことて、楽しみに待とう。

7.スパイはいまも謀略の地に(ジョン・ルカレ)
スパイはいまも謀略の地に
ジョン ル カレ
早川書房
2020-07-16


若い頃、ジョン・ルカレが実はあまり好きでなかったのだが、最新作ということで久々に読んだら、その後間もなく亡くなって遺作になってしまった。大きな派手な事件があるわけでもなく、どちらかと言うと淡々とした老スパイの話なのだが、行間から滲んでくるロンドンの街の匂いや、なんとも言えず洒脱な語り口にすっかり魅了されてしまった。昔はこの味が分からなかったのだろうな。ご冥福を祈ります。

8.レイラの最後の10分38秒(エリア・シャファク)
レイラの最後の10分38秒
エリフ シャファク
早川書房
2020-09-03


トルコのベストセラー小説。イスタンブルの片隅で娼婦の死体がゴミ箱に捨てられる。その娼婦レイラが死んで意識を完全に失うまでの最後の10分38秒の回想。トルコ東部の田舎町に育ち、叔父から性的虐待を受けた挙句にその息子に嫁がされそうになり逃げ出し、でも騙されて娼婦に身を堕とし終に惨殺される…と言えば悲惨で救いようの無い人生だが暗さはなく、レイラの生活、恋、そして友情が、彼女の記憶に残るさまざまな匂いや味をモチーフに飄々と描かれる。序盤やや読み辛いが中盤からは一気に読んだ。様々な風景が活き活きと行間から立ち上ってきて、特にイスタンブルの街角の風景が胸に沁みた。個人的には住んでいたエリア近辺が、ちょうど当時と同じような時代でに出てくるので懐かしかった。とても好きな肌感覚の小説だ。

9.わたしの全てのわたしたち(サラ・クロッサン)
わたしの全てのわたしたち (ハーパーコリンズ・フィクション)
サラ クロッサン
ハーパーコリンズ・ジャパン
2020-06-10


腰から下がつながった、結合双生児の姉妹の物語。ひょんなことで一般の高校に行くことになり、そこで友人を作り、好きな男子ができて恋をしながらも、周囲と様々に食い違ったり、虐められたり…という日々を、非常に素直なトーンの叙事的な詩形スタイルで淡々と描く。正直言って、奇形の少女の物語というイメージでいて、読むべきかどうか少し迷ったのだが、そんな自分をいま恥じている。陰惨さを微塵も感じさせない、気負ったところのない語り口は叙情的で美しい。詩人の最果タヒさんによる翻訳も素晴らしい。特に終盤は胸に刺さった。

10.誓願(マーガレット・アットウッド)
誓願
マーガレット アトウッド
早川書房
2020-10-01


『侍女の物語』の続編。近未来に成立する、女性の権利を一切否定した国家ギレアデに関わる三人の女性の人生が錯綜し絡み合う。今ひとつ没入できなかった前作『侍女の物語』同様、特に序盤は読みづらくテンポに乗りにくく、一冊読み切るのに一週間もかかった。しかし前作で残された後味の悪さや釈然としない感覚が本作で回収されていくので、前作より遥かに面白く読めた。特に後半に入ってからは、一気に話に勢いが出て面白い。前作の話を今ひとつ思い出せなかったが、大きな支障なく読めた。読み返せばもっと面白かったかもしれない。前作よりも完成度が高いと思う。読んでよかった。

次点 ひとり旅立つ少年よ(ボストン・テラン)
ひとり旅立つ少年よ (文春文庫)
ボストン・テラン
文藝春秋
2019-08-06


昨年年頭、最初に読んだ一冊。しみじみ良い本を読んだ読後感に浸らせてくれた。詐欺師の父がニューヨークでの詐欺の失敗から殺されて、稼いだ金をそのまま持っている少年は追われる身に。いや、19世紀半ばくらいのアメリカって、こんなにも無法地帯だったのか?とおどろきながら、少年が一回り成長して、男の顔になっていく物語が胸に染みた。一年経つと、やや印象がぼやけてくるのではあるが、良い本だった。


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January 14, 2019

2018年に読んだ本 其の二 〜和書編〜

去年読んだ本のまとめ其の二で和書編。

日本の小説については、去年よりかなり気をつけて情報収集に努めているのだけれど、相変らず打率が低いような気がする。しかしまあ、今年は非常に楽しめる出会いもあったので、真面目に取り組んでヨカッタですね、と言ってよいのか。
何より好きな作家の大作快作が何冊も出たのは嬉しかった。

小説はまず置いておいて・・・
まずとりあえず、昨年読んだものの中で、断トツぶっちぎりで読み返しまくった一冊が・・・

『俺、つしま』



傑作猫漫画。
ワタシは自他ともに認める猫廃人だが、ここまで我が心を射抜いた猫漫画は今までなかった、と言い切ってもよい。
おそらくこれと双璧を成せるのは『くるねこ』くらい。
今年最大の収穫と言っても過言ではないよ。

腹巻して虫持ったブサブサな猫の表紙に惚れてジャケ買いした一冊だが、その後百回は読み返した。
あげく猫好きの友人へのギフトは全てこの本になった。
一応続巻に向けてネット連載も進んでいるようなので、首を長くして待っている。
この一冊のおかげで、今年後半の日々の幸せ度が一割がた上がったと言ってもよろしい。

それにしても、こんな作品がTwitter経由でふらふら出てくるあたり、日本の漫画界の可能性は、まことに底知れないなあ。


さてあとは、小説と実用書・ノンフィクションに分けて6冊ずつ。
数を読んでいる割には、十冊上がるほどではなくて、でも分けると5冊じゃ足りない。
中途半端な気もするが、まあヨカロ。

最初に貼ってあるリンクで『本が好き!』に上げた感想に飛びます。
購入時は書影から飛んでもらえると、ワタシのところにチャリンと投げ銭が来るからヨロシクネ♪


〜小説編〜

 『雪の階』 奥泉 光
読み終わって、うわあ面白かった!と、まず。
600ページ近い長編で、前半特に緩々とした展開なのだが、不思議な語り口に騙くらかされるように気持ちよく読み続けてしまった。泉鏡花と内田百間の世界観を交えた歴史ミステリー&エンタメ超大作、と言おうか…?

雪の階 (単行本)
奥泉 光
中央公論新社
2018-02-07



『ミライミライ』 古川 日出男
ハイパー歴史改変ラップ音楽神話ファンタジー? 北海道が戦後ソ連の支配下に入って、その後日本全体とともに印日連邦としてインドと連邦を組んだ世界。奇想天外だが、ミョーに現実的でもある改変にちょっと震えた。
クレージーに面白い傑作だった。

ミライミライ
古川 日出男
新潮社
2018-02-27



今年はこうしてみると、奥泉光と古川日出男が二人とも素晴らしい小説を出してくれた年だったのか。
なんと素晴らしい!
打率が低いのと嘆いている場合じゃなかったナ。ヨカッタナ。

 『宝島』 真藤 順丈
戦後の沖縄を舞台に紡がれる神話の如き物語。独特の粘度のある語り口で、決して読みやすい話ではなく、思いがけず読み進めるのに時間がかかったがやめられなかった。複雑で濃いが可笑しさもある。素晴らしい物語だ。
真藤順丈は前作の『夜の淵をひと廻り』から気になっていた作家だが、ここにきて見事に大化け!
これは大きな賞を取りそうな一冊でもある。次作はどこに行くのだろう。本当に楽しみ!

宝島
真藤 順丈
講談社
2018-06-21



 『弧狼の血』 柚木裕子
骨太な警察小説で、相当に凄惨なシーンも出ては来るが無駄な粘度を感じない。女性作家だからこそ男性作家のハードボイルドによくある無駄な感傷や性的ファンタジーが排されて、濃厚な人間ドラマをキッチリ読ませる快挙。一気読みした。
映画の公開をきっかけに手に取ったのだが、映画の方もきっちりドロドロと生々しく血まみれで、原作にはないような切り口が別の作品として面白い。二度美味しい感じで、楽しませてもらった。
ちなみに今年出た続篇はどうもイマイチ。主人公の大上の存在感が、それほど強かったということだろうか。

孤狼の血 (角川文庫)
柚月裕子
KADOKAWA
2017-08-25



『ギケイキ 2』 町田 康
ギケイキ、つまり義経記。源義経の戦記物。町田康の独特の狂った繰り言のような語り口が、血生臭いはずの戦国軍記ものの世界にしっくりきて面白不思議な味わい。続篇までまたしばらく待つのかなあ。早く読みたい。



Α『ニードルス』 花村 萬月
70年代ロック小説。バンド結成、高校中退からメジャーデビューに至る青少年らの話。セックス&バイオレンスとドラッグに音楽。普段は読むと胃に凭れる独特の粘っこい文体がいい具合にテンポとうねりを生んでいた。



なんか今年読んだ小説って、ミョーにロック系と言えなくもない。
年末に映画『ボヘミアン・ラプソディー』を観て、どっぷり感動して以来クイーンを聞き続けていたりもする。
なんだコレ?
そういう流れが来てるのか?


〜ノンフィクション&実用書編〜

ナンダカンダと年に50〜60冊くらいは、小説でない本も読む。
小説の空想世界にばかりどっぷり嵌っていると、なんだかどうも疲れてきて、ちょっとサッパリしたくなるのだ。
この手の実用書は行間を読まずに事実だけ追えばいいから、読んでいるうちにいい具合に頭の中が中和されてくる感じが良い。

  愼罎離▲献納豆』 高野 秀行
納豆的なものを巡って、アジア一円に足を延ばしたルポルタージュ。ユルユルと馬鹿げているようで、非常に真摯な取材が楽しい。二年くらい積読山に沈めてしまって、本当にスマナカッタ!としみじみ反省したオモシロ本。次は何をやるのだろうか。この人からもちょっと目が離せない。



 『サハラ砂漠 塩の道を行く』 片平 孝
マリ共和国北部の伝説の町トンブクトゥから北に750キロに位置するタウデニ岩塩鉱山までの塩の交易ルートを、中世そのままのラクダのキャラバン(アザライ)で42日間かけて往復した旅行記。非常に貴重な記録だ。こういうクレージーな人がいるから世の中は面白い。



 『新・生産性立国論』 デービッド・アトキンソン
安定の面白さと緻密さで日本社会の矛盾をバッサリ切ってくれるアトキンソン。日本人は労働者としての質は世界屈指なのに、一人当たりGDP(つまり生産性)はスペインやギリシャ並みで、先進国中では最低。来たる人口減の危機に立ち向かうために、如何に生産性を上げていくか、という提言いろいろ。情緒的でない女性の社会進出促進論など、実にいいことを言ってくれるので新刊を読むのが楽しみな人だ。



 『空に向かってかっ飛ばせ』 筒香 嘉智
日本を代表する大打者、横浜DeNAベイスターズの筒香嘉智の本。勝利至上主義、スパルタ指導の害、野球をシンプルに楽しむことの大切さ。 日本の少年野球人口の減少は、本当は少子化だけが問題なのではなく、指導者層や保護者にありがちな歪みが、野球本来の楽しさを損なっているためではないか? これから変わっていくべき日本の野球の姿を、筒香は熱を持って、しかしシンプルに語る。現在の日本の少年スポーツの在り方に一石を投じる本として、単にファン向けの本に留めたくない一冊だった。
来年こそは優勝しよう!



『わが日常茶飯』 中原 蒼二
我が地元横浜で頑張る星羊社の出した力作。骨太な食エッセイとシンプルだが滋味深そうな料理の数々。装丁も写真もふんわりいい味を出している。たまに眺めては作り、で楽しく過ごさせてくれた一冊。



Α 悒吋襯 再生の思想』 鶴岡 真弓
古代ケルトの四季を追う形で、ハロウィンの背後にあるケルト文化を解き明かした快著。おかげで目から鱗がボロボロ落ちた。




今年の変化をもう一つ。
地元の横浜の図書館だけでは、どうもいま一つ新刊の調達が追い付かないので困っていたのだが、最近の職場の関係で、まず八王子、そして品川の図書館と縁が出来たのは有難かった。
特に品川は素晴らしい。夏前に近辺で仕事をした関係で、偶然立ち寄る機会があったのは幸いだった。
何しろここの図書館は、新刊の入荷が早くて、回ってくるペースも早い。しかも誰でも使える。
地域の図書館でここまで差があることに、いままであまり気付いていなかった迂闊よ・・・!
ただ、おかげで返却期限に振り回されていたりもするので、今年はほどほどにしようかなと思ってもいるのだが。


今年も楽しく本が読めますように♪



arima0831 at 02:58|PermalinkComments(0)このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック 好きな本 

January 05, 2019

2018年に読んだ本 〜翻訳小説編〜

2018年もナンダカンダと、併せて200冊ほどの本を読んだ。

最近加齢の影響もあって、読んだ本を片っ端から忘れてしまうので、とりあえず読んだら読書サイトにログしておく習慣になってはや5〜6年たつ。

以前は『本が好き!』を使っていたのだが、コメントが無いと一括した管理が面倒なので、この4月ごろから『読書メーター』に乗り換えた。各月の記録を一覧で見られて便利だし、新刊のデータはこっちの方が多い。
ただ、コメントは250字までなので、長い感想を書いておきたいときは『本が好き』の方に行く。
そんな使い分けでなんとなく居心地よく納まった感じがする。
今年は特に以前はほぼ記録していなかった、漫画やら実用書・専門書の類やらの雑多なものも一応数に入れているので、数だけだと230冊くらいになっている。

なんでそんなに読むのか、とよく聞かれる。
確かに質より量を追うパターンなのは間違いなくて、我ながらもっと考えて丁寧に読んでもいいような気がしてくることもあるのだが、世の中には面白い本がまだまだたくさんあるのだ。やはり量を読めば面白い本に出合える確率も上がるので、止められない。

それに周囲にいる読書好きを見ていると、量をこなすには年齢的な限界があるらしい、と最近とみに感じるのでもある。知力もそうだが、視力の問題が早晩出現しそうなので、当面は量をこなす方針で行こうと強く思う。
読んで気に入った本をじっくり嘆賞するのは、あれこれガタが来てからでもできそうだ。
幸いまだ眼鏡無しで文庫が読めるのは、何よりも有難いこと。
この状況がいつまで続くかわからないので、出来るうちに数はこなしておこうと思う。

内訳をざっくり見ると、和書90冊、翻訳書70冊、漫画など50冊という感じ。
例年と大差ないと思うが去年より少し時間に余裕があるせいか、読めた作品数は増えたかもしれない。

和書に関しては、面白そうな本をもうちょっと積極的に探すシステムを考えよう、とそれが課題になっていたのだが、やはり翻訳書ほどうまくいかない。翻訳書の場合、読んだ数に対して★5が20冊余あるのだが、和書になると十冊程度。去年も思ったけれど、翻訳書の場合は翻訳段階でかなりフィルターがかかるので打率が高い、というのはあるのだと思うのだが・・・。

さてそれで、まずは翻訳書のほう。
感想が記録してあるものはタイトルからURLに飛べるようになっている。
下の書影からだとアマゾンに飛ぶ。
こちらから買うと、ワタシに投げ銭が来ます。
評価基準は例年と変わらず、純然たる好き嫌い。それだけ。


1位 シェイプ・オブ・ウォーター
映画を先に観て、その後たまたま本屋で見つけた本。単なるノベライズだと思っていたら、小説なりの細密な世界観が構築されていた。映画も非常に良かったのだが、小説の方も傑出して面白いというのは珍しい。どうも単なるノベライズということで世間的には流されてしまった様子。しかも700頁と分厚いせいでイマイチ売れなかったような気がする。良い本なのになあ。
シェイプ・オブ・ウォーター (竹書房文庫)
ギレルモ・デル・トロ
竹書房
2018-02-28



2位 IQ 
クールで知的な黒人探偵が、LAを舞台に事件を解決していく新シリーズ。今年は他にも続きが楽しみになるようなし新シリーズがいくつか出てきて嬉しい限り。あまりに気に入ったので、続巻の原作を洋書で買ってしまった(結局まだ積読山に沈んでいるが)。

IQ (ハヤカワ・ミステリ文庫)
ジョー イデ
早川書房
2018-06-19



3位 奥のほそ道
小説として、文学としての深みにかけては今年一番の名作だったと思う。テーマは人間の根源的な悲しさだったのだろうか、と読み終えて思った。登場人物がそれぞれ抱える愛と苦しみ、そして悲しみに圧倒された。
奥のほそ道
リチャード・フラナガン
白水社
2018-05-26




4位 自転車泥棒
中国や台湾の小説が最近少しずつ増えてきた。同じアジアでも、やはり独特なダイナミズムがあって面白い。本書に関しては、最近早逝された天野健太郎氏の翻訳が秀逸。まだまだ若い方で、これから多様な中国文学との出会いを作ってくれると期待していたので改めて切ない。レトロな風景写真を見るような物語が美しく胸にしみた。
自転車泥棒
呉明益
文藝春秋
2018-11-07




5位 帰れない山
イタリアの山岳小説。私にしては珍しい分野なのだが、山の清冽な空気が行間から立ち上がるような描写に心を洗われた。

帰れない山 (新潮クレスト・ブックス)
パオロ コニェッティ
新潮社
2018-10-31



6位 真夜中の太陽
本来苦手な北欧小説。外側はやたらとスッキリ小綺麗なわりに、内に踏み込むとガサツで大雑把な感じがどうも口に合わない。それでもなんだかんだと手に取ってしまうのだが、この話に関しては変に取り澄ましたところがなくて、素朴な感じが良い。食わず嫌いでパスしないでよかった。

真夜中の太陽 (ハヤカワ・ミステリ)
ジョー ネスボ
早川書房
2018-08-07



7位 用心棒
元陸軍特殊部隊でハーバード中退、愛読書はドストエフスキーの凄腕イケメン用心棒ジョーが主人公。ひねりの効いた会話。ちょっと笑える演出。多彩で面白い登場人物達。追いつ追われつのアクションも映像的で楽しい。細部ツッコミ始めるとキリがないほど粗のある話でもあるのだが、今後続くシリーズらしくて楽しみ。
今年はたまたま他にも『インターンズ・ハンドブック』や『帰郷戦線』といった、この手の凄腕主人公モノが何作か出てきて楽しかった。正直『用心棒』と『インターンズ・ハンドブック』は読んだ時期が近くて、ビミョーに世界観が脳内で入り混じっているような気はするのだが・・・。

用心棒 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)
デイヴィッド ゴードン
早川書房
2018-10-04




8位 アルテミス
『火星の人』で一世を風靡した、アンディ・ウィアーの第二作。月面移住者のコロニーを舞台にしたSF。前作の凄まじいまでにマニアックな背景描写を思うと、確かに本作は軽い作品に思えるが、それはそれで楽しくてヨイ♪ サウジアラビア生まれ、月面都市アルテミス育ちの主人公、ジャズことジャスミンが非常に魅力的。信心深いムスリムのお父さんや、ロシア生まれのオタク科学者、ジャズの恋人を寝取ったゲイの友人など、楽しいキャラクターがミョーな国際的世界観とともに脇を固めて、SFというよりはコミック・アクション小説のノリ。続篇を是非出してほしい!

アルテミス 上 (ハヤカワ文庫SF)
アンディ ウィアー
早川書房
2018-01-31



9位 ローズ・アンダー・ファイア 
ナチの収容所に送られた女性たちの物語。辛い話の随所に見える、素晴らしいユーモアのセンスと生きることへの強い意志、そして飽くなき言霊への渇望が胸を打った。

ローズ・アンダーファイア (創元推理文庫)
エリザベス・ウェイン
東京創元社
2018-08-30



10位 泥棒はスプーンを数える
泥棒バーニー再び!三十年以上前に楽しく読んでいたシリーズが、未だに継続しているのだから、もうそれだけで嬉しい。相変わらずオチのない会話が軽妙に続いて行く、それだけの話と言ってもよいのだが、十一年ぶりだからそれもまたよし。いつの間にかバーニー達の年齢を自分が越えてしまっていて、なんだかちょっとしみじみ来るものがあったのだが。

泥棒はスプーンを数える (集英社文庫)
ローレンス・ブロック
集英社
2018-09-20





arima0831 at 00:54|PermalinkComments(0)このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック 好きな本 

September 22, 2018

加賀繁投手のこと

加賀繁が昨夜引退した。

思えば9年前のルーキーイヤーに、初回から大炎上した三浦番長の後、第2先発で登場したのが始まりだった。
ワタシはその日、たまたまハマスタに居合わせた、というだけなのだが、何故かあの日の加賀の姿が忘れられない。

あの年の番長が不調だったこともあって、加賀の第2先発パターンはその後も何度かあった。先発してれば勝ちゲームだったのに、くらいの新人離れしたまとまりを見せていたと思う。

だから早々に先発に回ったが、そうなると今度は勝てない。
彼のせいではなくて、とにかく可哀想なくらい打線がいちいちシケる。
巡りあわせが悪いタイプらしい。
何しろこのデビューイヤー、防御率は3.66なのに3勝12敗なのだ。
このナンダコリャ感は加賀ならではかもしれない。

それでも健気に淡々と投げる投手だった。
ついに勝った最初のお立ち台では、完全に棒を飲んだような状態で噛みまくっていたっけ。

そして今日。
試合後に引退セレモニーがあった。
滑舌の悪さは相変わらずだが、きっと必死に覚えてきたのだろう、訥々と様々な人たちへの感謝の言葉を述べていた。

これでもずいぶん話が上手になったのだよねえ・・・
いや、でもあんまり変わってないか・・・
などと思いながらテレビを見ていたら、なんだか胸が痛くなってきた。

セレモニー後、宮崎が顔をグシャグシャにして泣きじゃくっていた。
今永もガン泣きしていた。

泣くなバカモン、オマエラが引退するんじゃないだろうが、と言いながら、テレビの前でワタシも泣いた。
ふと隣を見たら、オットも泣いていた。

誰が辞めても寂しいけれど、加賀の引退は本当にしみじみと切ない。
派手な活躍もそれほどはなく、不遇な部分も多い選手だったと思う。
それでも朴然とサイドスローで球を投げ込み続ける姿は、どこか禅僧のようで、色々な人の気持ちに食い込んできたのだと思う。

ともあれ、明日はハマスタ最終戦。
気を取り直して応援してこよう!

そしてひっそりと、加賀繁投手の今後の人生に、幸多きことを祈る。

ありがとう。
そして、おつかれさま。




arima0831 at 02:22|PermalinkComments(0)このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック ハマスタ | ベイスターズ

June 27, 2018

鎌倉うろうろ研修 其の三 〜極上中華麺を求めて海に向かう(?)〜

ディスカバー鎌倉!というワケで(?)、次に向かうは幕府跡。
町を知るにはまずそこから。
古都の空気を感じながら往時に思いを馳せよう・・・

と思ったが、実にまったくもって何もない。
住宅地の一角に碑が一つ立っているだけ。

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しかしまあ、
鶴岡八幡宮辺りが中心地だったのだな
というのはわかる。
穏やかなひっそりした住宅地に、
ポツポツ観光客が歩いている。









鎌倉幕府跡

碑文を苦労しつつよんでいたら、碑の後ろの小学校の生徒らが、しっかり書き起こしたものに訳までつけてくれており、ダメな大人(しかも一応ガイド)は項垂れるのだった。

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碑のちょっと先に源頼朝の墓がある。
山の中腹に向かう急な階段を上って行く。
鶴岡八幡辺りの人波が嘘のように閑散としている。

山中にあるものは、江戸時代に再建されたもの、との由。


鎌倉幕府跡から海の方に向かう。まず目指すは大町あたり。
途中、日蓮宗の寺が続く。


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この界隈はかつて
日蓮が日々辻説法に立っていた
由緒ある地なのだそうだ。
三十代から五十代にかけての二十年ほど
鎌倉を拠点にしていた由。

ふうむ、ワタシにとっての横浜かなあ
などと罰当たりなことを思う。





へえへえ何かにつけて感心しながら歩いて行くと、その隙間にひっそりと妙な空気感の神社が現れた。

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蛭子神社をエビスと読めば、
なんだか目出度い感じなのだが、
ヒルコと読むパターンもあった。
イザナギとイザナミが最初に作っ子だが
女から声を掛けてまぐわったせいで
奇形で生まれて海に流された子を
蛭子と呼んでいて、
後で調べたら確かに
後者を祀ったものだった。






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ここの神社の空気は清浄さよりは不思議な停滞と淀み。

何しろ本殿の陰に軽自動車がひっそりと駐車されているわ、あっちこっち破損しても修繕されていないようだわ、御神木の大銀杏の注連縄はなんだか草臥れているわ…。

なんだか不思議な場所だ。
うううむ、と首を傾げつつ、なんとなくソソクサと立ち去った。

さらに海へ向かう。
かつての鎌倉は海の都でもあったはず。
海からの俯瞰は欠かせまい、と強く思って海に向かう。

まず目指すは大町。海に向かう道は、ほんわりと長閑な田舎の空気なのだが、古寂びたいい風情の商店があったと思えば、落ち着いた雰囲気の良さそうなカフェやらバーやらが点在している。
穏やかな街並みにほっとしながら、さらに歩くと…

するとアラ不思議、行く手には邦栄堂製麺が!
先日星羊社の社長夫妻から頂いた中華麺の製造をしている店舗。
コレがなんとも美味しい麺だったもので、一度お店にも行ってみたいなあ、と思っていたのである。
おおおお、なんという偶然…

…な、わけはなくて、もちろん海へのルートを大幅に歪曲し迂回させてわざわざ来ているのである。
一応同行者の意向も恐る恐る聞いてみたら
「ワタシもそこ、行きたいの〜!」
と言ってくれたのをいいことに、マヂぱねぇ炎天下と化した昼下がり、日陰もろくにない道路を二人延々歩いてきた。
え、何分くらい?
ううん、ワスレタ〜。さ、30分くらいくらいかなあ…?

IMG_0633まったくもってゴクローなことだ。
お店の人も
その辺を感じ取ってくれたのか、
うどん麺をひと玉サービスしてくれた。
ちなみにさっそく
買ってきた餃子の皮を水餃子にしたら
皮がしっかりヨレないのに
口当たりは柔らかくて、
ヲットと二人一瞬で
30個ほど貪り食ってしまった。
粉の質が良いのだと思う。

水餃子の皮は売切れで
予約をしておかなかったのが
悔やまれる・・・。


そう、殊勝気に鎌倉研修などと言ってはいたが、実はそもそもここの麺ありき。
「なんか鎌倉に行く用が・・・あるよねえ当然。研修だねえ」という、常に変わらぬ食欲ファーストな動きだったわけだ。

水餃子
ちなみに普通の餃子の皮を水餃子にしたのだが、
つるんチュルンとした口当たりで何ともウマイ。
ごくごくシンプルに、豚挽き肉に
キャベツとセロリと長ねぎのみじん切りに、
軽く塩、酒、そして醤油少々。
馴染むまで練ったら包んで茹でるだけ。
皮が美味しいのでエンドレスに食べられてしまう。

こういう皮が簡単に買えるところに住んでいる人が本当に羨ましい。
ちなみに写真は大きい皮のほうだけど、
小さい皮の方が口当たりは良い感じ。
焼くなら大が良いのだろうナ。



IMG_0635邦栄堂製麺から
今度こそ海に向かう。

途中、実に良い感じの
カフェやらバーやらが
散在するのを横目に
材木座海岸を目指していくと、
だんだん空が高くなって、
突然ポカンと海になった。

けっこうな炎天下を歩き回っているし
昼は禁欲的にお茶だけで済ませたので
かなりビールが飲みたい。
さすがにもう飲んでよかろう!
とウッスラ思いつつ歩く。


IMG_0638

わーいわーい!海だあ!
・・・と波打際で潮風に吹かれてみる。
なんとも気持ち良い。
多分あと二週間もすると海水浴客でごった返しそうだけれど、今日はサーファーたちと近所の人たちくらい。

ではでは海沿いで冷たいモノを…と思ったが、海に至る手前はいろいろ見かけたおっとりいい感じの場所が、海沿いに来た途端に俗化。ついでに車もゾロゾロ。

なんかイマイチな感じなので、じゃあ海から大路を上ってみるか、とさらにてくてく歩く。

IMG_0640IMG_0641

一の鳥居から確かにまっすぐに鶴岡八幡宮に向かって行くんだなあ、と至極当たり前のことに感心しながら冷たいモノをさがした結果、こじんまりしたコーヒー屋さんでひと休み。
ビールがなかったのは誤算だったが、なかなか良いお店だったのでよしとした。
代りにバーボンなど飲む。
この店には何故かビールはないのに焼酎とバーボンはあった。

SJO COFFEE

気付けば日はとうに暮れて、ライトアップされた段葛が綺麗だった。

IMG_E0642IMG_E0643

鎌倉は夜の散策も楽しそうだ。
昼間はゴッチャゴチャな小町辺りも、ほどよく灯りが落ちて人が消え、良い感じに落ち着いている。

当たり前だが、やはり奥が深い街なのだな、としみじみ思った。。
鎌倉には何度も来ているのだが、街の魅力を感じたことがあまりなくて、なんだか平板な印象だったのだが、なんのとこはない、平板な見方しかしていなかった自分の問題だったのだよね。

ちょっと面白くなってきたので、何度か通いたいと思う。
麺は冷凍できるから、なくなった頃にまた…。

ありがとう邦栄堂。
おかげで良い研修ができた。

そんなこんなで楽しく一日が過ぎて、帰宅後に鏡を見たら、ギョッとするほど日に焼けておりましたとさ。
この季節、油断は禁物だったなあ…。

万歩計


それにしてもよく歩いた一日ではありました。
















主要な寺社が歴史の古い順に並べてあって、非常に参考になった一冊。



星羊社の新刊!鎌倉は小町の『ヒグラシ文庫』という立ち飲み屋さんのレシピ集。邦栄堂製麺も出てます♪ 次回は是非行ってみたいです。

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June 24, 2018

鎌倉うろうろ研修 其の二 〜神の御遣い鳩サブレー!そして極上刺身定食〜

明月院から鶴岡八幡までぶらぶら歩く。

以前一人で歩いた時は結構遠いなと思ったのだが、二人で喋ってるとあっという間。こんなルートも人出が多い。
ハイシーズンですねえ。

鶴岡八幡に入ったら、鳩の形の絵馬があった。
「なにこれ、鳩サブレープレゼンツ、的な?」
「神社の絵馬にもスポンサーってつくのか知らん」
「ハマスタではよく聞くけどなあ」

・・・などなどとアホなことを言いまくってたが・・・

IMG_0603



本殿裏手の宝物殿でようやく
「八幡様のお遣いだった」
と学習して赤面する。
そっか、鳩サブレーって、
ちゃんと由来があったんだ…。
へー!とただ驚いていたが、
けっこう社会常識的な話だった模様。
ハハハハ。






IMG_0604

それなりに面白く眺めた宝物殿なのだが、
この説明には二人で額を寄せて
解釈に苦しんでしまった。
どうせ説明をつけるなら、
優しい日本語とまでは言わんが、
もっとわかりやすくすべきでしょう。

「他見なく掲仰もしなかった」とか、
何語だよ?!






IMG_0612


蓮池の蓮の葉は見事に大きい。


IMG_0613


しかし、この見事に広がる葉を賽銭箱にしているのは如何なもんでしょう・・・?

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お池のスッポンに指を食われておしまい!
・・・て気がするが。

実害はあるのかね?










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花もぽつりぽつりと咲いていた。
行ったときは既に
昼を回ったころだったから、
朝早ければ
もっと咲いているのかもしれない。
見ごろはこれからだろうが。

すぐに夏がやって来る。







IMG_0609
白旗神社から
由比若宮遥拝所を回り
鎌倉国宝館へ。
十二神将像が面白い。

「白旗を上げると負け、てナンデ?」
「ナンデだろ〜?」
(・・・負けるのは西欧の話だった・・・)

今回は無理だったが
次回は由比若宮のほうにも
足を延ばしたいナ。





歩き回るうちに日差しが強くなって行く。
朝は肌寒いくらいだったので、うっかりサングラスも帽子も無しで歩き回っているのだ。暑いぞアツイ・・・!

それはともかく、オナカスイタ・・・と思えばすでに2時を過ぎている。
ヤバイ、このままだとランチ難民化する・・・!ということで、まったく行き当たりばったりに入った『和処 大むら』
八幡裏の横浜国大附属小学校辺りにある。

IMG_0616


この刺身定食が1500円は素晴らしい!
なんとコレで一人前!

皮がふんわり香ばしくて、身はしっとりした味わいのイサキの叩き、程よい酸味の小肌、材木海岸朝獲れの生しらす、味噌たっぷりの甘えびに・・・と、どれも美味しい♪
感動しつつひと時のお刺身三昧を楽しんだ。

夜は飲み屋だけど、定食もあるとやら。今度は飲みに来たいなあ。

この並びにはタイ料理やらイイ感じのダイニングバーやら、良さそうな店が他にもいくつか。大路の周辺のゴタゴタ感は薄いので、昼時はこの辺を狙うのも良いかもしれない。

思いがけずステキなランチにありつけて、元気百倍歩き出す二人。
まだまだ歩くぞ!

(つづく)






最近よく眺めている本。
鎌倉は当時の再現図が鳥瞰の折り返し見開きになっていて、非常にわかりやすいです。

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June 22, 2018

鎌倉うろうろ研修 其の一 〜「混んでる時はどうなってるのか研修」でまずは明月院へ〜

この春から生業の一部に通訳案内士が加わった。
海外から来る観光客を連れて歩くアレだ。
資格だけは一応取得したものの稼働していなかったが、ようやく動きまわる余裕ができたところで春先に有難くも仕事につながった。

それはいいんだけれど、なにしろ何もわかっていないので、ちまちまと泥縄式ににわか勉強中である。
正直「え〜こんなことも知らないの?!」の連続で、いつかは少しはマシになると信じたい・・・。

さて、今回は同じような身の上の友人と鎌倉へ。
なんといっても「いざ鎌倉」なんだし(?)。

しかも今回は鎌倉にて、とある重要品目の仕入れも兼ねている。

kamakura20180619
北鎌倉駅に到着するも
ホームは既にグッシャ混み。

さすがは紫陽花のピークシーズン。
聞いてはいたがさすが混んでいる。
何しろ小さな駅で出口は一カ所。
ゆるゆる動いて出るまでに十分近くかかった。
ふう。

まあ、わざわざ日曜日に来たのも
「混んでるときはどうなってるのか研修」
も兼ねているからなので
そうかなるほど・・・て感じで列にぼんやり並ぶ。


まずは明月院へ。
寺の近くの小道に並んでさらに待つ。
入場待ちは15分くらいだったろうか。
中もみっしり人に溢れている。

IMG_0572  IMG_0571

紫陽花は確かに美しい。これだけ咲いてると壮観だ。
でも人ごみもすごい。
自分だけならそこを考えただけでパスするが、まあ来ちゃったもんはしょうがないから目の保養に相務める。

人の多さに目をつぶれば、山の空気は爽やかで清々しい。
竹と紫陽花なんていう取り合わせもステキではある。

IMG_0573

この日の混雑ぶりを考えると、
とりあえずこんなのは
奇跡のショットと言えるか。

しかし紫陽花って、
けっこうどこにでも咲いているだけに
本当にここまでして見なきゃいけないもんか?
とは思う。








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かの有名な円窓など、ほぼ近寄れもしない。
本堂正面はびっしり人だかり。

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そんな中、まさにその本堂正面の群衆と向き合う格好で、微動たりともせず眠っている猫の不動心よ!
さすが徳の高いお寺の猫は…ていうことなんだろうか?

ちょりちょり頭を撫でてやっても、目蓋すら開かず無心無想の風情。
スゴイなオマエ・・・。


本堂の裏にもお庭があって、菖蒲の咲く六月のみということで公開されていた。

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花自体はほぼ終わっているので、この辺りは人も少なくなってくる。
お庭をのんびり見ながら一息付けたので、この日に限っては穴場だったかな。


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少しだけ咲き残りの菖蒲がみられた。


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でも、反対側から本堂の円窓に群がる人々を見ている方が面白かったかな・・・。


(つづく)


PS:
ロンドンが中途でぶっちぎれているけど、そのうちにまた。




けっこうお役立ちだった鎌倉特集。



ネタ本に♪

arima0831 at 14:50|PermalinkComments(0)このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック 鎌倉 | その他神奈川県

February 12, 2018

2017年に読んだ本 〜国産小説編~

もう二月。バレンタインデーも目前。

いい加減書いておかないと、去年の話なんて考えられなくなる。
もう考えたくないから流した年もあったんだけど、そうすると本当に「あの年ナニ読んだっけ」の記録が無くなって案外不自由だと最近思うので、とりあえず書いとこう。

そもそも何故か毎年熱が入るのは翻訳小説の方だ。
国産ものに関しても数はそれなりに読んでいるはずなのに、なんだかとにかく打率が低い。
今年は特にその傾向が強かった。

今年に限っては、ベイスターズで言えば乙坂智みたいな感じ。悪くないけど、ここで一発!がなかなか出ない。いや実は最初下園と書こうとしたが(好きだからな)、それだともう引退だし、じゃあ石川 雄洋、とも思ったが、二軍に塩漬けだった今期を考えるとそこまでではなかろうと思えるし、すると「あと一発の怖さがコンスタントに欲しい」という願いを込めて、やっぱ乙坂でしょう…つーかなんつーか。

本来舶来ものが好きだから今の仕事なんだ、というのは間違いないし、そもそも翻訳小説に関しては、よく考えてみりゃあ「死んだ父親がマニアだった」という因子が大きい。そこに最近イマサラ気が付いた。特にアクション冒険小説系。
ワタシが高校生だったころから、たまにホイと自分の読んだジャック・ヒギンズやギャビン・ライアルなんかをくれたりしてはいたのだが、地方大学に行って東京を離れてからは、段ボール一杯のアクション冒険スパイ小説の類が、定期的に突然送り付けられてくるようになった。
当時すでに活字中毒だったから、本と名が付けばなんでも読んでいたワタシ。輝くようなハードカバーの新刊小説など、恐れ多くて本屋でそっと表紙を撫でるのが関の山だった身には、なんとも有難いことではあった。基本突然突発型御厚意(?)ではあったにせよ。

もうひとつ分析すると、翻訳小説は版元を絞り込みやすいし、インターネットでいいサイトもあったりするので、新しいものに網を張りやすいのだ。別に新しい本を常に追いかけるのが好きなわけではないんだけれど、新しいものをこまめに読んでおく方が、情報収集が簡単で高打率が期待できるから、いつの間にか自然とそうなった。視力と体力に恵まれていた若いころは気にも留めなかったが、ここに「寿命」というタームまで視野に入ってくると、無駄は極力省きたい、と強力に思うようになってくるので、最近は案外真剣である。五十代の半ばに来て、とりあえず老眼鏡なしで文庫本がまだ読めているのは有難いことだが、これがいつまで続くのかは神のみぞ知る、なのだし。

で、新刊情報を図書館の新着情報とあわせて常時ちょこまか洗う習慣をつけたら、コスパと打率を共存させて、自宅のまことに限られた図書スペースも圧迫されないで済むようになった。よしよし。閑人め、と笑いたいものは笑うがよろしい。
だから翻訳小説に関しては、取りこぼし無しとは言わぬまでも、そこそこイイ感じで拾えているのだろう。

一方で国産小説に関しては、その辺を今ひとつ自分の中でシステム化できていないんだろうな、と最近思う。
だから今年の目標は、国産系に効率の良い網を張るメソードを確立すること、としようかな。
ラミレス監督だって言っているではないか、データの読み込みが先ずは全ての基本だと!

で、以下が2017年のリスト。
とりあえず、小説とは書いたが実用書・新書・ノンフィクションの類もすべて含めた国産もの、ということで十位まで。感想が別サイトにあるものは書籍名のURL参照。
あ、買いたい人は書影からドウゾ。するとワタシに投げ銭が来ます(笑)。


1.『スウィングしなけりゃ意味がない』 佐藤亜紀 (KADOKAWA) 2017
ナチス政権下の不良青年らとジャズと青春の物語。通り一遍の戦禍とナチスの話にならないのがいい。楽しくもほろ苦い青春小説として楽しく読んだ。これは是非翻訳してドイツで出版してほしい!





2.『蜜蜂と遠雷』 恩田陸 (幻冬舎) 2016
行間から音が響き渡る、素晴らしい音楽小説。夢中で読み耽った。

蜜蜂と遠雷
恩田 陸
幻冬舎
2016-09-23



3.『東京自叙伝』 奥泉 光 (集英社) 2014
東京の歴史を怪しい地霊が語りつつ、なぜか未来まで・・・。積読山から掘り出した一冊。奇書であり、相変らずヘンな捻りと味わいに満ちている。しかも長い。でもそれが苦にならない。何故なのかは自分でもよくわからないけど、それが相性ってもんなのかなあ(笑)。

東京自叙伝 (集英社文庫)
奥泉 光
集英社
2017-05-19




4.『プロテスタンティズム』 深井智朗 (中公新書) 2017
ルターの宗教改革から始めて、現代のプロテスタンティズムに至るまでの社会的また思想的な背景を丁寧に解き明かした一冊。今迄どうもスッキリ分からなかったことが色々と腑に落ちた。思想の背景には同時代の政治や社会情勢があるのだ、という、要は当然の話だったのだけれど。ちょっと目からうろこ。





5.『お春』 橋本治 (中央公論新社) 2016
読んだ後になるほど、不思議な余韻がじわじわ来る話だった。江戸の世話物の現代語訳かと思っていたら、まったくの創作だと知って驚いた。

お春
橋本 治
中央公論新社
2016-07-06




6.『新・所得倍増論』 デービッド・アトキンソン(東洋経済新報社)2016
「日本のGDPを上げたければ、日本の女性の社会進出をもっと進めよ」という論が新鮮。専業主婦なんて税金の無駄遣い、ということなのだが、そこが論理的に説明してある。別に『世界一訪れたい日本のつくりかた』という『新・観光立国論』の続編にあたるものも出版。今月下旬には『新・生産性立国論』が出るそうです。このヒトの提言は、単にあれがダメこれがダメ系の在日外人愚痴話ではなくて、具体的な提言が説得力をもって書かれているから好き。できたら日本の観光ガイドがあまりに冷遇されている問題を取り扱ってほしいものなのだけれど。

デービッド・アトキンソン 新・所得倍増論
デービッド アトキンソン
東洋経済新報社
2016-12-09



世界一訪れたい日本のつくりかた―新・観光立国論【実践編】
デービッド・アトキンソン
東洋経済新報社
2017-07-07




7.『警視庁生きものがかり』 福原秀一郎 (講談社) 2017
日本内外で輸入生物の違法取り扱いを取り締まる課が警視庁にあって・・・というノンフィクション。どこかに同じような体温の話が…と思ったら『パンダの飼い方』などの白瀬さんと親交のある方だったとやらで、なんだかナットク(笑)。





8.『太閤私記』 花村萬月 (講談社) 2017
普通の小説だと確実に胃もたれを呼ぶ花村萬月の、いろいろな意味でのコッテリねっとり生臭調@R18系が、軍記ものになると案外しっくりきて、意外や楽しく読めてしまった。前編は『信長私記』。続巻も近日刊行予定との由。

太閤私記
花村 萬月
講談社
2017-10-18




9.『西洋医が教える、本当は速効で治る漢方』 井齋 偉矢 (SB新書) 2014
陰陽五行論なんかは基本的に後付けだから、とりあえず効能で使えば漢方は即効でいいぞ!という、なんとも清々しい理論。この方のこのシリーズを三冊ほど読んだが、わかりやすくてよかったな。昨今とみに漢方マニア化してるワタシには面白い本でした。





10.『白い紙/サラム』 シリン・ネザマフィ (文藝春秋) 2009
イラン人の女性作家が日本語で書いた小説集。イラン・イラク戦争当時のイランを背景に、男女の自由恋愛など先ず許されない環境の中、十代の少年と少女がそっとお互いの気持ちを寄り添わせていく情景がとても瑞々しく切ない。

白い紙/サラム
シリン・ネザマフィ
文藝春秋
2009-08-07




さて、今年も面白い本をたくさん読めますように。


PS:
ロンドン話は、あと数回くらいはなんとか…と思っているんだけれどどうなることやら…。



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January 02, 2018

2017年に読んだ本 〜翻訳小説編~

一年が過ぎて年末楽しいのは、一年間何を読んだか思い出して反芻する時。
今年もだらだらと手元を通りすぎて行った、ざっくり200冊ほどの本たちを思い起こしながらビールなんか飲む。「正月だから」ということで、エビスの金缶。これぞ活字中毒者の小さな幸せ。

一応一年を振り返るなら、夏にロンドンに行ったことが一つ。
そしてもう一つ、なんといっても横浜DeNAベイスターズの日本シリーズ進出は大事件だった。
この数年順調に強くなってはいたのだが、それでもハマスタでの日本シリーズ開催は、ワタシも含めたあらゆる横浜の民の予想を超えていた。たぶん数年前のワタシに「三年後にはハマスタで日本シリーズに参戦していますよ」と誰かが予言したら、夢を持つのは結構だけど、このヒトちょっと妄想キツイよな、と笑ってスルーしたことだろう。

忘れもしない、クライマックスシリーズ最終戦、広島に見事勝利を収めたシーンをハマスタのパブリック・ビューイングで見届けたあの夜。
滂沱の涙とともに万歳を繰り返しながら
「これって要するに、次は日本シリーズってことか?」
「え、ナニそれ、まさかハマスタでまた野球が見られるとか、そういうこと・・・?」
みたいなつぶやきが周囲一帯で漏れていたのである。
とにかく現実離れした話だったのだ。
願い続ければ、いつかは叶う日が来る、みたいなファンタジーがそのまま現実に来たような感じ。
小説世界を実体験しているようなもので、本当に夢のような秋を過ごした。
こちらに全力で突っ込んでいった結果、ものすごく体力を消耗したが実に楽しかったナ。

そんなわけで、終戦後一か月ほどは、ほぼ使い物にならずゾンビ化。
しかも秋以降の野球シーズン中は、まるっきり本が進まなかったから重症だ。
やはり読書というのは、脳の認知機能の一定領域を必要とするものだった、という当たり前のことに気付いたのは、11月下旬に来てサクサク本が捗り始めた時。
人間てそんなものなんだナ。ま、そりゃあそうか。

で、今年読んだ翻訳小説ベストテン。
どこかに感想を書いたものは、書名にリンクが張ってあるので、そちらを参照いただきたく。
実は今年はナンダカンダと公私でオーバーヒート気味だったので、11月末までほぼ感想らしい感想がまとまっていないのだが。


1. 『アメリカーナ』 チママンダ・ンゴツィ・アディーチェ

2016年刊行だが、これはもっと早く読みたかった。私的オールタイム・ベスト『半分のぼった黄色い太陽』のアディーチェの最新作だが、こちらはもっと現代的なメロドラマ。肌の色、階級、西洋社会の矛盾などに深く切り込みながら、あくまでも切ないすれ違う男と女の恋の行方を描く話。読み終わるのが惜しい物語だった。読んだのはほぼ一年前だが、むしろ時間がたつほど余韻が深まる。
まだまだ寡作な作家なのだが、いつかは是非ノーベル賞を取ってほしいと切に願っていたりする。来年はアフリカ枠が来る、とかいう下馬評もあるのだが・・・?

アメリカーナ
チママンダ・ンゴズィ・アディーチェ
河出書房新社
2016-10-25



2. 『その犬の歩むところ』 ボストン・テラン
台北の通関で立ったまま読みながら、あふれ出そうになる涙を必死にとどめる羽目に落ちた一冊。犬小説の金字塔。本年刊行のものとしては、これがベストとなった。

その犬の歩むところ (文春文庫)
ボストン テラン
文藝春秋
2017-06-08



3. 『守備の極意』 チャド・ハーバック

アメリカの大学野球を舞台にした、瑞々しい青春野球小説。この数年ほど枕元の積読山で塩漬けになっていたのだが、なんとなく読んだら素晴らしい話だった。もっと早く読め!と自分を蹴り飛ばしたい気持ち。きっとこんな宝がまだまだ埋まっているに違いないのだが。

守備の極意(上)
チャド ハーバック
早川書房
2013-11-22



4. 『幸せなひとりぼっち』 フレドリック・バックマン

昨年同名の映画が公開された一作。映画に行きたいからまず読もう、と言いながら、映画のほうは見逃してしまった。孤独で偏屈な老人と近所の移民たちが交流を深めていく話で、わりとよくある背景だとは思うけれど、なんだか泣ける良い話だった。

幸せなひとりぼっち (ハヤカワ文庫NV)
フレドリック バックマン
早川書房
2016-10-21



5. 『年月日』  閻連科

我が積読山の大きな地層を成している、中国のノーベル賞作家 閻連科の小品。この作家に関しては、あと二冊長大な小説が後に控えているのだが、まずは・・・と手を伸ばしたらこれが実によかった。村人が捨て去った、砂漠の果てにある村に取り残された老人と老犬の話。不思議な寓話的世界だが、とぼけた語り口が実によい。他のも早く読まなきゃなあ。

年月日
閻連科
白水社
2016-11-10



6. 『マプチェの女』 カリル・フェレ

翻訳ミステリー大賞の候補作に上がっていたので読んだのだが、この出会いには感謝。
アルゼンチンの暗い歴史を克明に描いて、中々辛い展開もあるのだが、滾るような熱い暗さに引きずり込まれながら読んだ。必ずしも楽しくはないが後味は悪くない話で非常に面白かった。




7. 『東の果て、夜へ』 ビル・ビバリー

人を殺しにカリフォルニアに向かう、黒人の少年の成長譚。ロード・ノベル的な展開が楽しい。新人作家の作品ということで、これは是非続編が読みたい。




8. 『ノーノー・ボーイ』 ジョン・オカダ

言わずと知れた移民文学の金字塔。2016年刊行の新訳ということで手に取るきっかけになった。戦後の日系アメリカ人の苦難や生活ぶりを克明に描いた作品。これももっと前に読んでおくべき小説だったなと反省。

ノーノー・ボーイ
ジョン オカダ
旬報社
2016-12-14



9. 『13・67』 陳浩基

読んだのは11月下旬で、このころ野球が終わって正気を取り戻したので感想がまとまっている。リンク参照。
香港の社会背景を戦後から現在まで追いながら、警察小説と本格推理も楽しめる二度美味しい作品。香港ノワール映画の匂いも漂う。とりあえず香港の情景がいろいろと楽しかった。

13・67
陳 浩基
文藝春秋
2017-09-30




10. 『アメリカン・ウォー』 オマル・エルアッカド

21世紀末ごろのアメリカが舞台の近未来SF。SFとは思えない現実的な重みが、読んでいて実に辛い。目が離せないまま最後まで一気に読んだ。書いたのはエジプト生まれの作家で、ちょっとしたディテールが面白かった。詳細はリンク参照。

アメリカン・ウォー(上) (新潮文庫)
オマル エル=アッカド
新潮社
2017-08-27





国産小説については、また別途!

今年もまだ面白そうな小説が出るので、楽しみにして待ちたい。



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