January 2021

January 02, 2021

2020年に読んだ本 〜和書編〜

先にも書いたが、今年はどうも華々しい長打が少なかった和書。
和書の場合、ちょっと出遅れると図書館の蔵書は長蛇の列で、なかなか借りられないのも原因なんだろうか?

ついでに2020年を概観してしまうと、やはりコロナ禍の話になる。

副業で二年越しに上手く伸ばしていた通訳案内士業が完全開店休業になったのが一つ。
一応三月に旅行業界系の視察旅行だけは一本できたけれど、今年はそれだけ。
2019年に順調に仕事に幅が広がってきて、三月には二十日近い地方も含めた長いツアーのデビュー戦が来ることになっていたのが、なんと二日前にキャンセルが来た。

しかしその準備で京都に何度か行ってきて、以来すっかり京都にハマってしまった。
なんといっても、この数年ですっかり高まった苔愛を満たすにはやはり世界最高の街なのだ。
コロナのおかげで新しい世界が広がった、とも言える。
いっそこのブログのテーマを京都と苔に路線変更してみるか…(笑)?

それはさておき、ガイドの仕事には正直オリンピックも含めて色々期するところのあった年なので、非常に残念ではあった。中東やらで、若い頃から何度となく仕事根こそぎは経験してきたので、最初はああまたか、てくらいのもんだったが、予想以上にしぶとく長い事態になりそうだ。事実は小説よりも奇なり。まったくなあ。
しかし旅行業というのは、非常に脆いがしぶとい業種なので、まあまたガツガツ稼げる時期も来るさ、と研修研鑽に励む日々。研修研鑽て、要は京都あたりで呑んだくれている、てことなんだが。
ま、それも勉強だよね♩

一方英語を教える方は、大学の授業の大半がオンラインに移行。自他ともに認めるIT原人のワタシには、冗談抜きで地獄のような春から初夏。ガチで発狂寸前だった。ヤダヤダと泣きながらデジタル最前線を無理やり突っ走らされているわけで、まあよく失敗したもんだ。ウチのタケゾウくんが、突然二本足歩行でスーツ着て会社経営を強いられて、トイレの粗相を繰り返すような状況だったよ。その辺がゴメンで済むのが非常時でもあって、いい勉強と言えばいい勉強にはなった。今でもイヤだが。ホント早く終わって欲しい。

そして我がベイスターズでは、我が最愛のアレックス・ラミレス監督が退任してしまった。
そろそろ来るな、と覚悟はしていたがこれはショック。
ついに我が3番ラミレスのユニフォームも引退だ。
今シーズンは何着てハマスタに行こう…?

じゃあ、梶谷のユニでも買うか…と思えば、ウッソーマサカのジャイアンツ移籍。日本プロ野球界で最も弁髪の似合いそうなリードオフマンが奪われてしまったのである。まあ仕方ない、弁髪の思い出はチョキンと断ち切って生きて行くよりないよねえ。怪しい髭ともおさらば。勝手にしろ。ぷんぷん。
ついでに井納の宇宙人発話も、もうハマスタで聴けなくなるか。ないとなると寂しい。
ジャイアンツのバカ〜!

というわけで(?)、今年の和書ベスト10。
小説、ノンフィクション、実用書を全部一緒くたでまとめる。


1.流浪の月

流浪の月
凪良 ゆう
東京創元社
2019-08-29



昨年一番胸に刺さった一冊。自由な両親に慈しまれ育った少女が、一転常識的で一般的な伯母夫婦の家庭での生活を強いられるが馴染めず、逃げ出すように縋った相手は公園で出会った大学生。世間の大騒ぎの中、淡々と穏やかに過ごした二人だが、彼は逮捕される。そして二十年後…少女拉致事件が背骨だが、実は胸を突くほど切ない恋物語。話は一転、二転して、一体どうなるのかと息を殺して話に没入した。生臭さはなく、二人の世界は透明な光に満ちて美しいが、取り巻く世間一般の人々はどこまでも愚鈍で醜い。姫野カオルコの『ツイラク』を読んだ時に近い衝撃だった。

2.米旅・麺旅のベトナム

米旅・麺旅のベトナム
木村 聡
弦書房
2019-08-23


ちょっとディープでマニアックなベトナム食紀行。フォーやボー、チキンライスといった日本でも一般的なベトナム料理からちょっと凝ったものまで、ベトナム食の奥にあるものを、味わい深い現地の風景とともに描き出す。写真も良い。作者のベトナム食に対する偏愛ぶりが行間からダダ漏れに流れてきて、これはまさにメシテロ。読んでいたら堪らないほどフォーやボーが食べたくなる。いつかは現地で、と言いつつ随分経ってしまったが、是非とも実現しよう、という気になった。

3.落花狼藉

落花狼藉
朝井 まかて
双葉社
2019-08-21


一人の女将の目を通じて見る吉原の歴史。花魁の話だと、薄倖な遊女の人生と悲哀にスポットが当たりがちなのだが、本書の場合はそうした要素も踏まえながら、もっと大きな歴史を紐解いていく。江戸の始まりに日本橋の外れに出来た売色の町の時代から始まり、奥浅草に移転し色街として大きく発展していくまでの六十年ほどを描く。一人の女性の人生を通じて、馴染んだ風景の奥にあるものが色々と見えてきて、時代小説として非常に面白く読んだ。

4.ぼくはイエローでホワイトでちょっとブルー

ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー
ブレイディみかこ
新潮社
2019-06-21



イギリスはブライトン在住の作者。彼女の息子が、そこそこいい小学校から地元の元底辺校に進学した日々を描く。今までなかった角度から描かれるイギリス社会の現実が淡々と描かれていく。元底辺だがそこから脱出するために学校の先生やスタッフたちが変えていったことや、自律的な思考を確立させる教育のあり方など、隅々まで実に興味深かった。スッキリ無駄がないスマートな文章だが捻りも効いていて、母である作者や息子の姿が生き生きと浮かぶ。海外在住日本人母のエッセイかと思ってうっかりスルーしていた迂闊。他の本も是非読もう!ということで読んだ『ワイルドサイドをほっつき歩け』も実に良かった。


5.砂子の中より青き草




正直にいえば『校正ガール』の作者が平安文学ものを…?という偏見がまずあって、手元にあってもしばらく開く気になれなかったのだが、いやはや恐れ入りました。枕草子を下敷きに、中宮定子と清少納言、そして取り巻く人々の息遣いが見事に伝わって来る。煌びやかな平安の宮中世界が濃密に描き出されていて、夢中で読んだ。250ページに満たないほどの話なのだが、じっくりと読んで堪能した一冊。一見こざっぱりした枕草子の世界に肉付けをすると、なんとこんな世界が生まれるのか。是非またこんな平安朝小説を書いて欲しい。

6.じんかん

じんかん
今村翔吾
講談社
2020-05-26



前回直木賞候補作品。前作『童の神』も面白かったが、本作はさらに話が緻密かつ濃厚に。応仁の乱から信長の時代に向かう戦国時代の社会背景や、さまざまな人間模様がみっちり描き込まれた濃い物語を堪能できた。松永弾正の人物造形が、実に高潔で立派で興味深いけど、ほんとにそうなの?とは思ったがまあヨシ(笑)

7.日本の中のインド亜大陸食紀行

日本の中のインド亜大陸食紀行
小林 真樹
阿佐ヶ谷書院
2019-05-17



ある時期から急速に増えた日本国内のインド系在留者たち。そうした人々の日本での食文化やビジネス環境、そして生活実態を観察しレポートした本。インドの代表的な各州、パキスタン、ネパール、バングラデシュなどの地域別に、日本全国各地の状況をまとめている。作者はインド料理の食器を扱う商社を経営しているそうだ。雑多な情報が出てきて多少散漫な印象はあるものの、こうした話はなかなかまとまってこないので貴重な一作。昨年出た『食べ歩くインド』も上下巻でインド全土の食を網羅してスゴイ本。インド三部作、といって良いかも。

8.美味すぎる!世界グルメ巡礼

美味すぎる! 世界グルメ巡礼
サラーム海上
双葉社
2020-08-27



ほぼ十年近く前にエジプトの革命時にカイロに居合わせて、その毎日をレポートしていたのを読んで以来、応援しつつ著作を読んでいる作家さん。本来はエスニック音楽ライターで、日本初の中東料理研究家でもある。取材力と人間関係構成力に、驚くほど健啖な食い意地を以て、いつのまにか他の誰にも真似できない世界を構築した。本書では中東だけに収まらず、世界各地、ついにギリシャやポーランドまでを勢力圏(?)に。カラー写真は少ないが、そちらはご本人のウェブページを参照。むしろ空腹時に穏やかに読めてよかったかも…?(笑)

9.宗教改革者




知の巨人で宗教学の専門家が語る、ルターと日蓮に共通する部分とは?読んでいくと、確かに奇想天外な比較ではなく、どちらも基本的には原理主義者と言って良いほど各宗教の基本に忠実な知識人である。基本を真っ当に語り尽くすが故に、本質からズレていた者には強烈なアンチテーゼとなった。ルターはともかく、日蓮についてはかなり色々偏見が入っていたなと反省。立正安国論は是非読んでみよう。

10.魯肉飯のさえずり

魯肉飯のさえずり
温又柔
中央公論新社
2020-08-21


台湾で出会った日本人の男性と結婚して、日本に来た母。日本で生まれ育った娘は、どことなく生きづらさを抱えたまま、若くして結婚。夫は彼女の作る魯肉飯が口に合わない。子供の頃は違和感を覚えた八角の香りが、結婚してどこか不安定な娘の気持ちに何かを生んでいく。そんな母と娘の姿を、短編を重ねる形で描き出す。優しい穏やかな眼差しに満ちている。まずとりあえず、魯肉飯を食べたくなる。台湾にまた行きたいな、と思う。そんな話。他愛無い話に思えたのだが、時間が経つごとに温かなイメージを増した。

次点 下級国民A

下級国民A
赤松 利市
CCCメディアハウス
2020-02-29



遅ればせながら一昨年から読み始めた作家。とりあえず一番強烈だったのが一昨年読んだ『犬』で、呵責なきエロスと暴力が強烈だったが、また違う角度の一冊が読めた。バブル期には派手にやっていた男が、身を持ち崩して東北で土木作業員として生きていく。現場の理不尽、他の作業員との確執、殺伐とした日々。主人公は作家自身で、エッセイなのだそうだが、小説を読むのと同じ感触。だが、エッセイらしくなんだか行間から現実感が漂う。明るさはまったくないのだが、淡々として突き放した筆致がどこかしらユーモラス。泥臭い話なのにすんなりと読めた。挿入される昭和歌謡がいい味。面白かった。


arima0831 at 17:47|PermalinkComments(0)このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

January 01, 2021

2020年に読んだ本 〜翻訳小説編〜

去年ついついサボってしまったので、今年こそは書いておこう!

去年はナンダカンダとトータルで216冊読んだ。
老化の波が押し寄せてきて、ついに夜ベッドでの読書には老眼鏡が必要になり、読書スピードはガタ落ち。
その割に数が多いのは、記録場所を読書メーターに変えたので、今までカウントしてなかった実用書系や上下巻が数に入るようになったから。

実用書は読書なのか?という議論が最近仲間内であったんだけど、ワタシにとっては定食についてくるお新香みたいなものだし、それはそれでよく出来たものは面白いので、ワタシにとっては等しく本。
だからカウントに入れている。
入れないと、図書館で借りて既読のものをうっかりまた借りたりしかねないし。

今年は翻訳小説は豊作だったと思う。
まあワタシの場合、例年このジャンルは打率が高いのではある。
基本的に大手3社くらいをマメに抑えておけば良いからわかりやすくてよろしい。
一方で相変わらず国産小説は苦戦。

何しろ、ざっくりよかった本をリストアップしていくと、翻訳小説は簡単に20冊くらい上げられるのに
国産はノンフィクションや実用書も併せてようやく10冊程度。
じゃあ読んでるバランスは、というと、むしろ国産系の方が多いのだ。

比率でざっくり見ると、翻訳もの50冊対国産小説60冊、と言ったところ。残りは漫画と実用書。
打率が悪すぎる。特に今年はダメだった。

翻訳小説ベスト10は以下の通り。
基準はどこまでも好き嫌い。
読後脳のシワのどこかにきっちり食い込んだ度合いで決めている。


1.アーモンド(ソン・ウォンビョン)
アーモンド
ソン・ウォンピョン
祥伝社
2019-07-12


この数年じわじわとハマっている韓国小説と映画。日本の小説や映画にはない振り切れたストーリー展開が面白い。アレキシサイミア、或いは失感情症の少年が主人公。脳の中に扁桃体というアーモンドくらいの部位があって、そこが未発達だと感情の動きが薄くなるそうだ。そんな少年が成長し、周囲の人々と交わりながら変わっていく話、というとベタだが、随所に入り込むエピソードが実に鮮烈。生々しい驚きの連続は韓国映画を見ているようだ。映画人の作者らしく映像的な描写。翻訳も素晴らしい。まるで韓国の汁物みたいな小説。赤々と強烈に辛そうだが、口にすると甘くかつ塩っぱく、複雑な旨味に多彩な具材を夢中で啜り込む。映画人の作者らしく、非常に映像的な話だった。何しろしばらく経ってから、あのシーンの出てきた映画ってなんだっけ…と自分の記憶をたぐったら、この本の脳内イメージだったと気付いて驚いたくらいの強烈さ。素晴らしい!

2.ザリガニの鳴くところ(ディーリア・オーエンズ)
ザリガニの鳴くところ
ディーリア・オーエンズ
早川書房
2020-03-05


貧困とDVの中で家族に捨てられ、悲惨な状況の中にあって、自然豊かなアメリカ南部の湿地帯で一人生き延びる少女。美しく成長し自然の中に生き、恋をし、捨てられ、苦しみながら成長していくが殺人事件の犯人にされ…。作者は著名な動物学者で、自然描写やそこに息づく生き物の描写が濃密で感動的。自分を捨てた母を待ちわびる少女の切なさや孤独感が胸を刺すが、大自然の中で生き延びる逞しさには惚れ惚れとする。殺人事件の謎、恋物語、そして家族愛。素晴らしい物語だ。500ページが苦にならず、一気に読み通した。読めてよかった!

3.パチンコ(ミン・ジンリー)
パチンコ 上 (文春e-book)
ミン・ジン・リー
文藝春秋
2020-07-30


久々に読み終わるのが寂しい一冊だった。終盤のストーリーを、あと300ページくらい書き込んでくれたら言うことなかったと思うが、十分面白かった。韓国出身でアメリカ育ちの作家の本。貧しい釜山の下宿屋の娘が男に騙され妊娠し、しかし驚くほど善良な牧師に救われて結婚し、夫について大阪へ。日本で在日コリアンとして苦悩していく中での様々な情景が、歴史的背景のうねりに絡んで紡ぎ出されていく。主人公の母からそのひ孫までの三代に渡る一家のドラマだが、登場人物が実に彩り豊かだ。愛も喜びも憎しみも苦しみも、そして信頼も裏切りも、人生の喜怒哀楽を全て満遍なく絡めとり、没入させてくれる作品だった。

4.壊れた世界の者たちよ(ドン・ウィンズロウ)
壊れた世界の者たちよ (ハーパーBOOKS)
ドン ウィンズロウ
ハーパーコリンズ・ジャパン
2020-07-17


ワタシにとって、ドン・ウィンズロウの小説は大好きなものとウンザリするものの両極。中編集と聞いてバランスが不安だったが全編面白く読めた。呵責なき血みどろの闘争を描く表題作。お気に入りは軽いコメディ系の『サンディエゴ動物園』。初老になったニール・ケアリーが脇役復活でしみじみ嬉しい『サンセット』。シリーズで出ていた時から口に合わなかった、ベンとチョンとOの話は案の定イマイチな口当たりだが、思いがけぬ登場人物が出てきて楽しくなった。充実のセレクション。ニール・ケアリーで一冊書いてくれないかなあ。

5.おちび(エドワード・ケアリー)
おちび
エドワード・ケアリー
東京創元社
2019-11-29


蝋人形館のマダム・タッソーの数奇な生涯の話、とだけ聞いたときには、特段興味をそそられなかったのだが、周囲に絶賛の声があまりに高いので読んでみた。淡々としているのに少しだけ生臭くて薄気味悪さも少々。そこにゴシック風味と人間味を併せ持つ話がフランス革命の様々な史実と見事にリンクして実に実に面白い。随所に挿入される作者自身の手になる挿絵も独特の味わいを増していて夢中で読んだ。

6.網内人(陳浩基)
網内人 (文春e-book)
陳 浩基
文藝春秋
2020-09-28


香港発ミステリー。500ページ越え、しかも2段組。長さにちょいと怯んだが、読み出したら一気に最後までよみふけらせてくれた。13・67の香港ノワール調、ディオゲネス協奏曲の多彩さから、今回はノンストップの活劇へ。引き出しの多い作家だなあ、と感心する。何より行間から立ち上る香港の市井の風景がたまらない。匂いも音も、人々の息遣いをも描き出してくれて楽しい。現代香港の若者の風俗やネット社会の闇も興味深く読んだ。続編が出るとのことて、楽しみに待とう。

7.スパイはいまも謀略の地に(ジョン・ルカレ)
スパイはいまも謀略の地に
ジョン ル カレ
早川書房
2020-07-16


若い頃、ジョン・ルカレが実はあまり好きでなかったのだが、最新作ということで久々に読んだら、その後間もなく亡くなって遺作になってしまった。大きな派手な事件があるわけでもなく、どちらかと言うと淡々とした老スパイの話なのだが、行間から滲んでくるロンドンの街の匂いや、なんとも言えず洒脱な語り口にすっかり魅了されてしまった。昔はこの味が分からなかったのだろうな。ご冥福を祈ります。

8.レイラの最後の10分38秒(エリア・シャファク)
レイラの最後の10分38秒
エリフ シャファク
早川書房
2020-09-03


トルコのベストセラー小説。イスタンブルの片隅で娼婦の死体がゴミ箱に捨てられる。その娼婦レイラが死んで意識を完全に失うまでの最後の10分38秒の回想。トルコ東部の田舎町に育ち、叔父から性的虐待を受けた挙句にその息子に嫁がされそうになり逃げ出し、でも騙されて娼婦に身を堕とし終に惨殺される…と言えば悲惨で救いようの無い人生だが暗さはなく、レイラの生活、恋、そして友情が、彼女の記憶に残るさまざまな匂いや味をモチーフに飄々と描かれる。序盤やや読み辛いが中盤からは一気に読んだ。様々な風景が活き活きと行間から立ち上ってきて、特にイスタンブルの街角の風景が胸に沁みた。個人的には住んでいたエリア近辺が、ちょうど当時と同じような時代でに出てくるので懐かしかった。とても好きな肌感覚の小説だ。

9.わたしの全てのわたしたち(サラ・クロッサン)
わたしの全てのわたしたち (ハーパーコリンズ・フィクション)
サラ クロッサン
ハーパーコリンズ・ジャパン
2020-06-10


腰から下がつながった、結合双生児の姉妹の物語。ひょんなことで一般の高校に行くことになり、そこで友人を作り、好きな男子ができて恋をしながらも、周囲と様々に食い違ったり、虐められたり…という日々を、非常に素直なトーンの叙事的な詩形スタイルで淡々と描く。正直言って、奇形の少女の物語というイメージでいて、読むべきかどうか少し迷ったのだが、そんな自分をいま恥じている。陰惨さを微塵も感じさせない、気負ったところのない語り口は叙情的で美しい。詩人の最果タヒさんによる翻訳も素晴らしい。特に終盤は胸に刺さった。

10.誓願(マーガレット・アットウッド)
誓願
マーガレット アトウッド
早川書房
2020-10-01


『侍女の物語』の続編。近未来に成立する、女性の権利を一切否定した国家ギレアデに関わる三人の女性の人生が錯綜し絡み合う。今ひとつ没入できなかった前作『侍女の物語』同様、特に序盤は読みづらくテンポに乗りにくく、一冊読み切るのに一週間もかかった。しかし前作で残された後味の悪さや釈然としない感覚が本作で回収されていくので、前作より遥かに面白く読めた。特に後半に入ってからは、一気に話に勢いが出て面白い。前作の話を今ひとつ思い出せなかったが、大きな支障なく読めた。読み返せばもっと面白かったかもしれない。前作よりも完成度が高いと思う。読んでよかった。

次点 ひとり旅立つ少年よ(ボストン・テラン)
ひとり旅立つ少年よ (文春文庫)
ボストン・テラン
文藝春秋
2019-08-06


昨年年頭、最初に読んだ一冊。しみじみ良い本を読んだ読後感に浸らせてくれた。詐欺師の父がニューヨークでの詐欺の失敗から殺されて、稼いだ金をそのまま持っている少年は追われる身に。いや、19世紀半ばくらいのアメリカって、こんなにも無法地帯だったのか?とおどろきながら、少年が一回り成長して、男の顔になっていく物語が胸に染みた。一年経つと、やや印象がぼやけてくるのではあるが、良い本だった。


arima0831 at 21:10|PermalinkComments(0)このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック 本の紹介