June 24, 2009

金子貴一『秘境添乗員』 〜そして佳き日のシアワセとカツオのたたき〜

金子貴一という作家がいる。

4月末に新刊が出た。めでたいことだ。
そして、その一ヵ月後の先月末についに結婚した。
これもまた実にめでたいことだ。

新刊は『秘境添乗員』という。
文芸春秋社の『本の話』というPR誌に2年3カ月連載されたものに、
大幅加筆修正を加えたものだ。



彼とのお付き合いはエジプト以来で、20年来の古い仲間である。
交遊の経緯は彼の前作『報道できなかった自衛隊イラク従軍記』の紹介等で
触れたし、最近は休止している中東関係のブログ何度か詳しい話も載せてある
是非ご参照のほどを。

金子クンの本領は「人間力」にある。
文才だの語学力だのという、目先の能力を超えたもっと深くて強いパワーだ。
最近書評を書いた某評論家によれば「過剰な人」であり、いち早く読んでステキな
記事を上げてくれたにっきさんによれば「厚ぼったい人」という印象となる。
なるほど、確かに彼は「独特の濃さ」がある人だ。
その濃さは決して嫌味や傲慢につながらない。
通常「濃い人」は、多かれ少なかれそれなりの灰汁を醸し出すものなのだが、
金子クンには良い意味でそれがない。
常に感じられるのは、直裁で明朗かつ知的な「人間力」である。
この部分は公私共に変わらない。

そしてこの本のタイトルを見て「世界の秘境のオモシロ経験談」なんかを期待すると
うっかり肩透かしをくらってしまうだろう。
この本には「世界の秘境四方山話」にありがちな嫌味がまるで無いからだ。

例えばバングラデシュへ、アルジェリアへ、ミャンマーの奥地へ・・・などなど、
確かに彼が自分で企画主催して添乗するツアーの行く先はまことにユニーク。
こうした所謂「秘境」と世間に呼ばれるところに日本人ツアーを引率して行く
「秘境添乗員」の話は前半部に色々と語られていて、その話自体は大変面白い。
旅行好きならば、まずは楽しく読めることだろう。
添乗員としてサービスにこれ徹する金子クンの姿は、単なるツアーコンダクターを
はるかに超えて「ツアーバトラー」と呼ぶにふさわしく、仕事内容も非常に
ハイレベルでプロフェッショナルなものだ。

なにしろ彼は、戦乱のイラク自衛隊派兵の「添乗員」を立派にやり遂げた人間だ。
戦地に赴く自衛隊随行と観光ツアーの添乗を、同じ目線で語ったら
叱られるかもしれないが、結局のところ仕事の要は等しく「グループが無事に
食って寝て安全に過ごせるように心配ること」だと思う。
時に危険も伴う異文化環境で続発するトラブルに柔軟に対処しながら、
全員の安全を確保する。
現地住民との円滑なコミュニケーションの仲介役としての役割も欠かせない。
異文化コーディネーターとしての力量がものを言うのは、どちらも同じことだ。

しかも彼はどの仕事も、誠心誠意こなして手抜きなどしない。
戦地に行く自衛隊だろうが観光に行くツアーだろうが妙な差別化などもしない。
要するに「プロ」なんである。

ちなみに彼は、異文化環境にいなくても根っから添乗員みたいなヒトだ。
例えば一緒に歩いていると「あ、そこにぬかるみがあるから足元に気をつけて〜」
「この先の角を右に曲がりま〜す。そこの赤いポストのあるビルのところね〜」と
万事常時こんな調子。
本人いたって自然体でこうなるのだから、添乗員は天職だろう。

で、話は単なる秘境四方山話だけでは終わらない。
そういう類の秘境ツアー裏話を、もっと低レベルで書き飛ばしたようなひどい本が
結構売れたこともあるから、全巻秘境話で終始した方が案外受けたのかもしれないが、この本はさらに深く潜り込んでいく。

実はこの本の真価は、この「潜り込んだ部分」にあるのだと思う。
話は彼自身の過去に遡り、アメリカに留学した高校時代の経験や、見事に正しい
真のエジプト人となった学生時代を経て、ジャーナリストとなり戦地へ赴き、
そうした経験の中で得たものを一つ一つ丁寧に自分のものにしながら生きてきた
いわば「金子クンの作り方」を読者はリアルに追いかけることになる。

それは昨今巷で言葉としては始終出てくる「異文化コミュニケーション」のプロが
如何にして生まれたか、という物語でもある。

そして話は過去を振り返るだけでなく、未来へ向かう動きも見せてくれるのだ。
辛い話もあるのだが、それを超える前向きさがとても良い。
なにしろこの過程で、彼は結婚をするのである。
いらん話かも知れないが、ワタシより一歳年上の初婚だからかなり遅い。
実はひっそり心配していたが、やっと訪れた春はたいそう美しく暖かいようだ。
なによりのことで、本当に嬉しい。

BlogPaint先月5月末の披露宴にて。
このシアワセを分けてもらうべく
披露宴に出てきたワタシ。
春を喜ぶ幸福な新郎の顔に
皆さんも微笑んであげてください。

いやあ、よかったヨカッタ♪

そしてこの後、新婚家庭に押しかけて鰹のタタキまでご馳走になってしまった。
わざわざ奥さんのお園さんが郷里の高知から取り寄せてくださったもの。
本の中にも出てくる絶品鰹だ。

確かに金子クンが書いている通り「いままで食べていた鰹はなんだったんだ?!」と
ちょっと無言になってしまうくらいの美味い鰹。
お園さん、本当にありがとう♪

しかし、あれは何が違うのだろう?
絞め方?それとも鰹の質??
関東で食べる鰹は、どんなに良いものでも微妙にカネ臭いような独特の匂いがして
まあそんなもんだと思って今まで来たのだが、どうも大きな誤解だったらしい。
本当にうまい鰹は、旨味はそのままで臭みはなく、口の中で蕩けます・・・。
単に「脂の乗った魚」を口に入れた時の感じとはまたまるで違う、甘味に近いような
深い旨味。
このオドロキは、エジプトで初めて羊肉を食べたとき以来の衝撃、かもしれない。

写真を撮ってこなかったのが悔やまれます。
さすがのワタシも不躾だと思って遠慮したのだが、カメラを出せばよかったよ!
残念!

あ、そうそう、披露宴は立川のPホテルだったが、ここで出たフレンチのコースは
単なる婚礼メシの水準以上に美味かったのだ。
実はこういう宴会コースメシは、過去の職業柄アタマから馬鹿にして高を括って
いるところがあるワタシだが、全体に味がよくてちょっとびっくり。
実は「披露宴前に荻窪でまた鰻・・・」とか卑しいことを考えないでもなかったのだが
やめておいたのは正解だった。
Pホテル、丸の内の本丸が休館中だから、系列各ホテルの厨房がパワーアップ・・・
とか、どうでもいいことまで考えちゃったぞ。

ええと、披露宴も実は5月下旬美食爆食強化週間のことでした。
しかも鰹は「減量強化月間」の昨今の話だった、と一応告白だけしておく・・・。

話が思いっきり脱線してしまったな。
なにはともあれ・・・


秘境添乗員秘境添乗員
著者:金子 貴一
販売元:文藝春秋
発売日:2009-04
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この『秘境添乗員』は金子貴一クンの集大成。
ちょっと間口を広げすぎた感はなくもないのだが、このカオス的な雑多さも彼の
独特の持ち味と思っていただければ幸いなのである。

しかし例えば本書の中の、特に日本でのクルド難民援護関連の話などは、
掘り下げればかなり面白い話になりそうだし、他にももっと突っ込んで欲しい話が
色々とある。
「次回作へ続く」となればなによりだ。

全体を通して、異文化と触れ合うときに大事なことはなにかを直接間接に
熱く語りかけてくれる本。
日本のグローバル化が叫ばれる中、現状になにか足りない物を感じる方には特に、
単なる旅行書以上の面白さがあると思う。
間口が広すぎたとは書いたが、内容は通常の単行本の三冊分と言ってよいほど。
中身は濃くて充実しているので、色々な人に是非一読をお勧めしたい。

とりあえずは近いうちに、出没先数ヶ所に一冊づつ「配備」する予定なので、
よろしければ皆さん手にとってみてくださいまし。



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arima0831 at 19:30│Comments(6)TrackBack(1)このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック Share on Tumblr Clip to Evernote 好きな本 | 本の紹介

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1. 金子貴一 『秘境添乗員』 (アリーマ山口)  [ 軍事書評ブログ ]   August 13, 2010 21:23
金子貴一クンの新刊が出たのでご紹介したい。 新刊は『秘境添乗員』という。 文芸春...

この記事へのコメント

6. Posted by アリーマ   September 10, 2015 19:58
ありさん

コメント、ありがとうございます。
なんと金子くんの姪御さん(?)ですか!
素敵な叔父さん叔母さんがいて羨ましい限りです。

お二方ともしばらくお会いしていないのですが、どうぞよろしくお伝えくださいね。

最近はすっかり休止状態で、自分のメモ程度のものしか上げられないけれど、何かお役に立てる話でもあれば嬉しいです。
5. Posted by ありさん   September 10, 2015 19:30
5 こんばんわ!記事を拝見させて貰いました!
読んでいてもっと読んでみよう!って思わしてくれて、読みやすかったです^^
急にコメントすいません(;O;)
わたしは、この中に出てくる本の著者
金子さんの奥さんの妹の子どもです^^
今日まで、園ちゃんと金子さんと色んな所にお参りに行ってた所です^^
金子さんはほんとにいい人ですよね^^
園ちゃんもです!また、日記を拝見したいと思います!
4. Posted by アリーマ   June 24, 2009 23:12
アパ経くん

暴力と声量・・・?
確かに・・・(怖)

貴女が「卑怯添乗員」を刊行した暁にも、拙ブログで是非取り上げさせていただきます。
でもまあとりあえず、彼のエジプト話は我々が居た一番最初の頃に近いので、懐かしいのは間違いないと思うよ。
イラクの方と併せて読んで見てちょうだい。
3. Posted by アパート経営者   June 24, 2009 23:03
いや〜読むべきなんでしょうねえ、私のような
人間力より「ゲバルト力」と「ベルカント力」
(←なんなんだ??)でエジプトと馴れあった
人間わ...
2. Posted by アリーマ   June 24, 2009 22:54
にっきさん

そうそう♪
減量もかえりみずに新婚夫婦とお父さんに遊んでもらってしまいました。わはは。

某書籍販売サイト系の意味不明な読後感については、「秘境辺境旅行マニアは案外狭量である」がひとつ。あともう一つは彼が意図せず招いた「政治的な絡みのバッシング」ではないかと思っています。
なんだかよくわからないけどね。
でも、この類の妙に政治的な人たちって、ワケワカランもんだし。

ビジネス本の話は忘れていました。ゴメン。
でも、本人が書いてるように「執筆速度時速一行」の人なので、変化の激しいビジネス界やビジネス本出版業界がついてこられるものだか・・・?
とりあえず、にっきさん関係で「講師の需要」があったら声をかけてあげてください。
しゃべるともっと面白い人なんですよ。
1. Posted by にっき   June 24, 2009 22:40
なんと、新婚家庭まで押し入ったか!
ワタシの読後感なんて参考にもならんけど、でもこの本は「秘境添乗員のカレ」を丸ごと書いた本である、と見抜いた眼力はさすがだ、ワタシ。(ほとんど自画自賛)ネットでトンチンカンな読後感あげている人もいたからなぁ〜。
でも筆者は本当に面白い人ですね。(アリーマさんとお友達を長年やっているだけのことはあります。)

で、金に困ったらサービス業のビジネス本を書く気はあると言っておられましたか?

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