December 31, 2010

日本橋『との村』の特上鰻重が旨すぎる 〜そして思わぬ邂逅・・・〜

今年一番旨かったものの話。
12月始めのこと。

思いがけず所用が、昼過ぎに都内で終了。
こんな僥倖は滅多とありえない。
「よっしゃ!」と檄を入れて、向かう先は日本橋。
今年の一月、某所の宴会で知り合った出挙さん御紹介による、鰻『との村』へ行くのである。

なかなか行けなかったのは、このごろワタシのフットワークが鈍くなりすぎていることもあるのだけれど、ここはその中でもかなり条件厳しい店。
営業時間が月〜金の11時半から15時までで、夜の営業がないのだ。

しかも日本橋、といっても、最寄駅は馬喰横山。
そこからもちょっと歩くらしい。
方向音痴のワタシにとって、ただでさえ右も左もよくわからない日本橋界隈にあって、辿り着くまでの彷徨時間まで考えると、これはもうミッション・インポッシブルと読んで差し支えない難易度なのだが、なんだかこの日は勢いがついていた。

昼頃の所用も、それが昼過ぎくらいにちゃっかり終了したのも、実はこのために仕組んだことだったりしてさ。へっへ。

で、案の定迷った。
「1時半ごろ行きます」という極端に楽観的な時間予測で電話を一応入れたのだが、前後左右さっぱりわからなくなって泣きながら店に再び電話。
結局女将さんが「ああもうね、お近くですからお迎えに行きますよ」と。
直々にご案内いただいて、到着は2時すぎ。
メイワクな客だ。やれやれ。

さて、涙を軽く拭いて、特上を注文する♪

昨今のグルメ情報の充実って、本当に素晴らしい。
ケチでボンビなワタシは、初手から特上などという贅沢とは縁がないのだが、諸情報を検討した結果「ここまで頑張って行くならば、特上を気張るのがこの店のキモ」と理解していたのだ。おかげさまで。

特上はその場で鰻を割いて調理してもらえる。
それ以外は蒸し置きだそうだ。
ぼんやりと待つ時間こそが鰻のヨロコビだぜ、と思っているので、このパターンは嬉しい。
しかも特上で2500円、肝吸いは100円という価格が、実に懐に優しい。

との村


ひっそりと小さく、飾り気もなにもない、質素な店構え。
カウンターのみ6名ほどで満席の店は、言っちゃあなんだが古くてボロイよ。
いや、古いのはもっともで、開店以来半世紀以上経っているそうだ。
この規模のまま変わらずに。
いい話だ。

ほっこりと落ち着く空気に、和んだ勢いでビールをついつい頼んでしまった。
「今日はお茶だけ」と厳しく心定めていたのに、所詮トーフの根性である。
ま、いいやいいや。
ビールくらい飲んで祝うべき瞬間だと思うし。

との村 (1)


お通しはほうれん草の胡麻和え。
実に家庭的な酒のアテで、これも心和む。
しかもビール大瓶。
ビール大瓶のお店はいいお店なのだよ。
鉄則だよ。

御主人はゆっくりと動く。
身をくねらせる鰻を鷲掴みにして、俎板の上に押さえ込み、トンと目釘で往生させてから、おもむろに割きにかかる。丁寧に。
そうか、こんなにたくさん血が溢れる生き物だったのか、と思わずじっと見つめてしまった。

漬物もウマイ♪
全部自家製だそうだ。
「最近はみんな買ってきちゃうそうなんだけど、なんだかいやなのよねえ」と女将さん。
数種類きちんと盛りあわされていて「鰻屋の漬物」という風情溢れている。
これだけで結構酒が飲めるぞ。

そういえば、鰻屋の漬物が妙に高級化したり、逆に殺伐と不味くなったり、うっかりすると出てきもしないような世の中に、何時からなっちゃったんだろうかなあ・・・とか、昭和初期生まれの爺みたいな愚痴を垂れてみたりする。


との村 (2)


待つこと30分ほど、だったろうか。
女将さんと昼下がりのワイドショーを眺めながら、海老蔵の話なんかしてたら出来上がってきた。
夢にまでみた(?)金扇のお重、ふっふふ。


との村 (3)


一口。
思わずバンザイをしながら「キターーー!」と叫びたい気分になる。
やらなかったけどね。恥ずかしいからね。

しっかりと力強い脂の旨みを湛えた肉身が、ほどよく柔らかに口の中でほぐれるこの感動よ。
美味しいよう。ううう。これは過去ベストの鰻かも。

今回食べたのは、蒸しが軽く入るが焼きが基本の関西風。
昔この辺りは問屋街で、そこに京都から来る業界人が山ほどいた、その名残だそうな。

タレは甘味を抑えた辛口で、ぴったりワタシの好きなタイプだ。
高倉健みたいな鰻重。
ずっと探していたんだよ。
ああ、こんなところにいたなんて。

肝吸いはしっかりした鰹出汁に、ぷりっとした肝♪
妙に上品過ぎない感じが、ちょうどここの鰻といいバランスだ。
100円だって。いいのかそれで。
ちなみに肝焼きなんかは「出せるほど取れないので出せない」との由。
一日十食程度、ということだから、まあそりゃあそうでしょう。

それにしても、このヨロコビを誰に伝えようか。
あ、そうだ、帰ったら出挙さんにまずは御礼メールを忘れんように・・・などと思いを巡らせつつほぼ食べ終わって放心していたら、外に常連らしき人影が立った。

鰻の切れ端をだらしなく口の端から垂らしたような状態で、ぼんやりガラス越しに目が合うと・・・

「あ、アリーマさんじゃないですか〜!」
「おおおあああ、出挙さん、うわあ出挙さんだ」

ワタシも驚いたが、彼も驚いたらしい。
なんか完全に油断してるところで、思いがけず知り合いにあっちゃった、という、まさにその状況。何も疚しいことはしていないのだが、なんかこういう時って、妙に虚を突かれた感じになりますね。

この時、出挙さんは「第XX次お誕生日祝いグルメ強化月間」開催中だとかで、なんと特上の「白焼き」と「鰻重」のダブル注文をされたのであった。
思わぬ奇遇に若干混乱しつつも。

とうに自分のモノは食べ終わっていたのだが、なんとなくビールを一本追加。

「あらあ、お知り合いだったのねえ」と目を細める女将さんは、ついでに肴にしらすおろしを出してくれた。単に酒だけ飲ませない心遣いもステキだが、そこで漬物だけホイと寄越すのではなくて、家庭的で簡素ながら酒肴らしいものをさりげなく出してくれる、この感じがさらに心和む。


との村101202


出挙さんご注文の特製白焼き。
彼は「蒸しなし」をいつも頼むのだそうだが、御主人が「白焼きは、ちょっと蒸したほうがいいね」と呟くように仰ったので、蒸しは入っている。

「どうぞ一口食べてくださいよ!」と、大振りな一切れを取り分けていただいてしまう。
「いやいやいや、ワタシは見るだけで匂いを嗅ぐだけでもう十分で・・・」と、
まあご遠慮はしたのだが、その声に説得力の入り込む隙間のあろうはずはなく
「まあいいから、ほら早く食べて〜♪」という、有難いお言葉に合掌あるのみ。

うううう。
脂が甘い。とろりと蕩けて甘い。甘露と言ってよろしい。
えへえへへへへへへ。

続く「蒸しなし」の重箱。
「是非こっちの蒸し無しも一口食べてくださいよ!」と、これも分けていただいてしまった。
ここの店の場合、普通に頼むと軽く蒸しを入れてくれるのだが、敢えて「蒸し無し」の指定も可能なのである。

う〜ん。
同じ鰻で、どうしてここまで味わいに濃淡がハッキリと出るのだろう。
どっちが好きかと言われると、ワタシはどっちも好きだ。
欲を出すなら、二人で来て両方食べたい。

邂逅の次第は、是非こちらも御参照を♪
出挙さん、ありがとうございました。

鰻の旨味は「月旨」にあり、と思う向きは、仕事をバックレてここで午後の一時を過ごす価値があると思う。
ただ、極上江戸前のふんわり甘い感じがなにより、という人には、ちょっと脂が強いかもしれない。アレもアレでいいもんだとは思うけど、正直ワタシにとっての理想形ではないのだが。
その辺は好みが出るところ、かもしれない。

との村 うなぎ / 馬喰横山駅東日本橋駅人形町駅

昼総合点★★★★ 4.5



との村 ( 馬喰横山 / うなぎ )
★★★★★5.0
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なんと素晴らしき冬の午後だったことよ。

実は最愛の荻窪『安斎』がこの春に閉店してしまい、鰻については行き場をなくして、かなり意気消沈していたワタシ。
まずは行き場ができて嬉しい。

来年はこの店に、何とか時間を作って通うのが課題になりそうな感じだ。



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今年もお世話になりました。皆様よいお年をお迎えください♪


追伸:
安斎の御主人とは、先日ひょんなことで会う機会があった。元気そうだった。
荻窪の店はもう既にないのが残念でならないが、何とか別の場所で再開してくれることを、心から祈ります。


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このシリーズって、読んでみたい気がするんだけど、どうなんでしょう?


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arima0831 at 02:50│Comments(3)TrackBack(0)このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック 浅草・日本橋 | うなぎ

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この記事へのコメント

3. Posted by アリーマ   December 31, 2010 18:11
>とも2さん
なんとなく続けて更新してみました(笑)
年が明けたら、またゆるゆる更新に戻ります。

>ぶりさん
どっちみち方向音痴なので「道」の類に無縁です、ワタシ。きちんと諸要素を鑑賞したり評価したりする能力のある人は、素晴らしいとは思いますが、それができないからイカンとも思わないんですよ。
食べ物なんて、結局要は好き嫌いの世界です。
2. Posted by ふ゛り   December 31, 2010 09:31
鰻道は「好みだから」では済まされぬ難しい世界なようで、主観・直感の私には遠い世界です。

天然鰻漁師が知り合いにいても、です(笑。
1. Posted by とも2   December 31, 2010 09:04
復活されたと思ったらとてもよいペースでの記事の更新ですね♪
しかし、今回の鰻は目の毒でした…

来年もよろしくお願いいたしますね。

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