August 19, 2011

初盆再び

今年のお盆も初盆になった。
去年はヒメの、そして今年はハナの。
実は6月29日に逝ったのだ。
18歳4カ月だった。

ハナ110515 001


四月の初めごろ、喉を掻いてやっていたら、ごくごく小さなしこりが指に触れた。
気のせいだろうとは思ったが、一応主治医のT先生のところで検査をしてもらった。
十日ほど後に「線維肉腫」という悪性の腫瘍だ、という結果。
しかし、ごくごく初期の小さなものなので、切除できる可能性はあるとの由。
取り急ぎ切除することにして、手術の日取りまで決めた。

手術自体は、数年前ハナが受けた乳癌切除の為の片側乳腺全摘出手術に比べれば、はるかに小規模でダメージが低いものではあるらしいが、今回は再発の可能性が比較的に高いほうだという。
こういうタイプの癌は、小さな癌自体を切除するだけでなく、再発を避ける為できるだけ大きく抉るのが大事なのだそうだが、今回は場所が食道回りなので、抉るにも限度があるそうだ。

癌の手術が辛いのは、元気一杯の姿の者を手術・入院に送り込む決断をしなければいけないからだ。
これは人間の場合でも犬猫の場合でも、おそらくよく似た状況なのではないかと思う。
この数年の間に何度か、猫たちに手術をする、しないという決定を下してきたが、毎回本当に切ない思いをする。
もちろん、成功して元気になることもあったので、必ずしも高齢猫の手術に否定的ではないのだが、今回の場合はどう考えればよいのだろう・・・ううむ。

で、結局やめた。
ハナが庭先で、春の陽射しを体中に浴びて嬉しそうに目を細める姿を見ながら、ひょっとしてこれが彼女の最後の春かもしれない、とふと思ったのだ。
来年の春の訪れが定かならぬのであれば、この春から初夏の穏やかで優しい季節は、健やかにのんびりと過ごさせてやりたい。
だから、主治医に詫びて手術を取り消したのだった。

乳癌の時と違って、今回の腫瘍は肥大が早かった。
最初の受診では「米粒大」と言われたものが、ほんの数週間で豆粒大に、そして直径1センチほどに・・・と、びっくりするような早さで大きくなっていった。

しかしハナ自身はいたって元気で、喉のしこりが痛むようなこともなかったらしい。
手術予定日の前あたりから「食べたいもんはなんでも好きなだけ食べなさいポリシー」が突如導入されたので、マグロにサーモン、茹でチキンに高級輸入猫缶など、せっせと毎日いいものを食べさせることに腐心する日々が始まった。

ヒメの時にも思ったのだが、美味しいものをたくさん食べてニコニコ過ごすことで、免疫力が上がって寿命も延びるような気がするのだ。長さに差はあれど、これは正しいと今でも信じている。
もちろん健康な猫に無駄に美食ばっかりさせていると、腎臓だの肝臓だのがやられて寿命が縮むので、これをやっていいのは基本「ターミナルケア段階」ということになるのだが。

ハナは当初、突然の好待遇にどうも面喰っていた様子だったが、猫の柔軟性って大したもので、三日で「それが当たり前」になってしまうのには、ちょびっとトホホな思いだったけれど。
ヒメが特に喜ばなかったマグロの刺身が、ハナは本当に好きだった。
あとはサーモンの刺身と茹でチキン。

その後二カ月ほどは呑気に過ぎた。
食欲にばらつきはあったが、日向ぼっこを日課にして、至って穏やかに健康そうなハナ。
一時期は体重も増えてきたもので、このままなんとか夏を越え、秋を過ごして冬を乗り越え、春の陽射しに戻ってこられる、そんな奇跡を祈っていたのだが。

ハナ110515 005


ある日、外出するので外で昼寝をしていたハナを起こして家の中に入れたところ、昼寝用のダンボールの底に血痕がついていた。
その前夜からどうも食が進まないので、病院に連れていこうと思っていた矢先のことだった。
どうも口の中から出血しているようだ。

投薬などで出血は止まったが、血小板が大幅に減少している、との診断。
次第に足腰が立たなくなり、食欲は戻らず、ハナはどんどん精気を失っていった。
内臓出血もあるらしい。
腰や体のあちこちに、かなりの痛みが出た。
激しい発作のように、痛みを訴えて激しく鳴くハナを、そっとさすってやりながら正直途方にくれた。

ある朝、仕事に行く前に一日預かってもらおうと病院に連れていったら、そのまま点滴に繋がれることになった。
「肉球も歯茎も真っ白で血の気がない。夜まで持たない可能性もあるから覚悟してください」と言われて、あまりの急な展開にショックを受けた。

夜、仕事の後で病院に駆け戻り、まずはハナに会った。
「ぐったり寝ていて動かない」ということだったのだが、一日点滴して痛み止めも効いていたためか、朝方よりは持ち直したように見えた。
ワタシの顔を見るとケージの中で体を起こし、怒った顔で点滴のついた右前脚をバンバンと振って見せるハナ。
そしてわあわあと鳴いた。
「家に帰りたいっ!こんなところはイヤ!!」ということなのだろうな。
まあ、それはそうだろう。
それはわかるのだが。

ここで点滴を外してしまうと、まず痛みが戻ってくるし、体もそう長くは持ちはしない。
無駄な延命を頼む気は元よりないのだが、あの痛みにまた耐えなければいけないことは、ハナはきっとわかっていないのだろう。
痛みに苦しませても、家に連れて帰るべきなのだろうか?
でも、痛み止めを点滴しながら、病院のケージで数日生き延びてから逝くほうがよいのかと言えば、そんなはずはあるまいとも思う。

決められない。
ううむ・・・と唸り声を上げながら悩んでいるワタシのところに、T先生がやってきて「わかった、今夜は預かるから、明日また考えよう」と。

すでにありとあらゆる可能性と治療方針などについては、懇々と丁寧に話してもらった後で、後はワタシが決める段階だったが、情けないことに再び堂々巡りを始めてしまう。
連れて帰るならば、早い方がいい。
ただし、点滴を外したら、痛みは戻るし病状は悪化する。
ここに置いておけば、痛みの発作に苦しむことはない。

「いや、連れて帰ります」と、やっと言った。
「痛い思いをさせることになるんでしょうけれど、それは可哀想だけれど、でもやっぱり連れて帰ります」
「それがいいと思う。いいんだよ、あなたの猫なんだから、あなたが決めたことが一番正しいんだ」とT先生。

ハナが逝ったのは、翌日の夜だった。
最後の発作に啼くハナの体をさすってやりながら、もういい、もういい、もう頑張らなくっていいから、早く楽になりなさい、と言っているうちに、次第に呼吸が緩くなり、穏やかな表情になった。
病状が急転してから、たった一週間後のことだった。

不思議なことに、この日は偶然ワタシもオットも仕事が休みになっていたので、二人で一日傍についていられたのは何よりだった。
ワタシに至っては、その翌日まで休みになっていたもので、無事に焼き場で煙にしてやることもできた。
翌日は当然のことだが、普通に仕事に行って、普通の毎日に戻る。
ハナがこのタイミングで逝ったのは、実に不思議なことだがそうせよということなのだろうし、そうあらねばいけないわけだしさ。

このお盆でちょうど四十九日。
今頃は彼岸でヒメと揉めていることだろう。
やれやれ。

お骨は秋風が吹いて、もうちょっと過ごしやすくなったら、春先よく日向ぼっこをしていた辺りに埋めてやろうと思う。

ハナ110515 004


写真は五月半ばに撮影。
不貞腐れて見えるが、これでも結構ご機嫌ヨロシイ顔。

尚、末筆ながら、ハナのことを心に留め気にかけてくださった方々には、心より御礼申し上げます。


人気ブログランキングへ←ポチッとよろしく♪
今でもたまに、マグロの特売に走り寄っては、軽く途方にくれている。


パンダの飼い方パンダの飼い方
著者:白輪 剛史
販売元:PHP研究所
(2010-02-27)
販売元:Amazon.co.jp
クチコミを見る

今度はレッサーパンダでも飼うか・・・(無理だって)。

アニモンダ ラフィーネ Petit ウサギ 85g 83470 猫
アニモンダ ラフィーネ Petit ウサギ 85g 83470 猫

おハナさま御用達だった高級猫エサ。歯の悪いコにオススメでやんす。

arima0831 at 15:37│Comments(10)TrackBack(0)このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック Share on Tumblr Clip to Evernote 猫話 | 日記

トラックバックURL

この記事へのコメント

10. Posted by アリーマ   August 31, 2011 10:19
ようこさん

コメント、ありがとうございます。
なんか周囲の話を聞いていると、こういうことって意外に多いらしいです。
でも、そういうものなのであったとしたら、病院に預けず家に連れて帰ってきてやってよかった、と思います。
9. Posted by ようこ   August 31, 2011 07:33
いつも拝読していたのですがコメントははじめましてです。
うちの猫も18歳で3年前にガンで死んでしまったのですが、
それが元旦でした。
夫もわたしもいるときに、と思ってくれたのかなと思います。
猫たちは、不思議ですがいつ逝くか自分で決めているような気がします。

ハナちゃんはたくさん愛してもらって、たくさん美味しいもの
食べさせてもらって、幸せでしたね。
わたしは次の猫と出会いたいと思いつついまだに逡巡してしまっているのですが、
アリーマさんには素敵なご縁がありますように!
8. Posted by アリーマ   August 21, 2011 11:27
Can☆さん
お気遣い、ありがとうございます。
ヒメ亡き後、ハナは1年8ヶ月ほど甘やかしてやれました。
ヒメ闘病中にほったらかし気味だった分は、これで埋め合わせが出来たのかな、とは思っています。

正直寂しいですが、仕方のないことなので、目下は新しい猫との縁を待ちつつぼんやり過ごしています。
7. Posted by Can☆   August 21, 2011 03:36
ヒメちゃんに続いてハナちゃんまで・・・。
さぞやご心痛と思います(涙)
家族を亡くされたのだからしんどくて当然。
頑張ろうと無理しないでくださいね。
アリーマさんには旦那さまという家族がいます。
お二人で悲しみを分け合ってください。
(うまいこと言えなくてすみません)

雲の上のにゃんこの国には痛みも苦しみもないはず。
ぽかぽか日向ぼっこを楽しんでいると思います。
ハナちゃん、頑張ったんだね、お疲れさま。
にゃんこの国からアリーマさんたちを見守っていてね。
6. Posted by アリーマ   August 20, 2011 23:15
>里香さん
ヒメとハナは仲良しとは言いがたかったのですが、でもまあ「いないよりマシ」みたいな感じ、なのかも・・・。
色々ご心配いただき、ありがとうございました。

>よーぜふさん
なにしろ生まれた時から手元にいたので、まるで自分の一部のようです。

>にっきさん
そうですね。
今頃呑気に楽しく過ごしているはずですから、それでよかったのだと思うことにしています。

>四川赤熊猫さん
レで始まるやつ、いっぺん触ってみたいものなんですが、意外に希少で確保困難らしいんです。
大きいやつほどではないみたいだけど。

>BAGUSさん
日記の方は、実生活の方が諸々忙しくて放置気味なんですよね、スミマセン・・・。
これからもうしばらくは時間があるので、9月にかけて何度か更新できるかとは思います。
ありがとうございます。
5. Posted by BAGUS   August 20, 2011 20:40
ハナちゃんのご冥福をお祈りします。
アリーマさんの切れ味鋭い日記が戻ってくることを併せて祈念します。
4. Posted by 四川赤熊猫   August 20, 2011 09:59
ハナちゃん、ヒメちゃんと楽しくのんびりとお過ごしください。


(レで始まるやつを確保したら、僕にも会わせてください..)
3. Posted by にっき   August 20, 2011 07:02
ハナちゃんもアリーマさんに最後まで看取られて幸せだったと思います。
猫の天国はいつでも美味しいものが食べられて、昼寝ができて・・・楽しいところだと思います。あっちにはヒメちゃんもいるし、寂しくないよ。
2. Posted by よーぜふ   August 19, 2011 23:24
 ハナさんの御冥福を心からお祈りしています。
 本当に愛されていたんですね・・・
1. Posted by 里香   August 19, 2011 18:28
ハナちゃん、ずいぶん頑張ったのですね。
アリーマさんの逡巡がひしひしと伝わってきました。
続けて2人とも逝ってしまってアリーマさんは寂しいでしょうが、
ヒメちゃんは喜んでいるんでしょうね。
ご冥福をお祈りいたします。

この記事にコメントする

名前:
URL:
  情報を記憶: 評価: 顔