スパゲッティ
October 15, 2006
虎ノ門『ハングリータイガー』老舗イタリア食堂と名物マダムの取り合わせ
ハングリータイガー
最寄駅:内幸町 / 虎ノ門 / 霞ヶ関
料理:パスタ / イタリア料理
採点:★★★★☆
一人当たりの支払額(税込み):5,000円〜10,000円
用途:夕食
某国滞在時代の知人の送別会があった。
参加者七名である。
18:30に『ハングリータイガー』で集合、と聞いて「なんだって、ハンバーグ屋で最初に集合するんじゃ?」と思ってしまったワタシ、いつの間にかすっかりアタマが「ハマナイズ」されている(嘆)。
ここは、界隈では結構有名な「名物イタリアン」だったのである。
ナニが名物って、ここのマダムだそうで。
曰く、
「ロメスパ系のがっつりボリュームだが、マダムがクOOバアだ」
「若いOLたちが、混んでいるときにのんびり食べていたら、思いっきりどやされた」
「若い男性客が『普通盛』を頼もうとしたら、マダムに『女の子だって大盛り平らげるのに、オトコが普通でどうする!』と叱咤(?)された」
などなど。
それでもランチには大行列、なのだそうだ。
正直言って、この事前調査でワタシの気持ちは相当萎えた。
しかし、アレンジした幹事氏を知る限り、そうそうヒドイ店をわざわざ選ぶとも思えない。
送られる主賓も、某国滞在時代に随分とお世話になった人だ。
マアイイヤ、と出かけたら、虎ノ門の裏小路に目立たぬ入り口。
中に入れば「イタリアの庶民的な食堂」で、ざっくばらんだが好きな雰囲気だ。
しかし・・・ワタシは集合時間を30分間違えて、早く行ってしまったのだ。
しょうがないから、座ってビールでも飲みながら待つことにする。
ビールを注文してボーッとしていたら、突然マダムの声が響く。
「ちょっと、オイカワさん!」
(*注:再々連呼されるので覚えてしまったが、サービス担当の初老の方である)。
マダムは店の常連と思しきダークスーツの人々の席で、なにやら話しこんでいたのである。
「このコに、なにかお飲み物でも出してあげなさいよ!」
「・・・あ、もうビールをお願いして・・・」
「ならいいけど、ガーリックトーストもね!」
と、いうことで、ビールと一緒に、ガーリックトーストも出してくれた。
空腹だったので、即食べてしまう。
数分後、再び・・・
「ちょっと、オイカワさん!」
噂を聞いてはいたが、とりあえずホテルマン時代に身につけた、
無害なアルカイック・スマイルを浮かべて事態を見守る。
「ガーリックトーストでも出してあげなさいよ!
カワイソウに、お腹空かして待ってるんだから!!」
オイカワさんがワタシのせいで責められるのは忍びないので、口を挟む。
「あ、イエ、もういただきまして・・・」
「でももう食べちゃってるじゃないの! あと三切れくらい出してあげなさいよ!」
噂どおりキャラは濃いけど、聞いた話と違ってずいぶん優しいじゃないか・・・と思う。
ワタシにとって「良い人、優しい人」=「積極的になにか飲み食いさせてくれる人」
なのである。
「あと三切れ」に「えへへ」と笑ったワタシの顔を見たか、
「オイカワさん、早く出してあげなさい!」と、マダムは畳みかけるのだった。
横に座っている常連(近隣官公庁関係者らしい)は、にこやかに待っている。
と、こうしているうちに、海外某国赴任前で多忙を極める主賓を除き、全員集まる。
懐かしい顔に、しばし話が弾む。
で、主賓が現れないので「いいからはじめちまえ!」と、勝手に宴会突入。
カツオの和風カルパッチョ、スズキのカルパッチョ、生ハムとルッコラ、ピザは二枚、メインは網焼きのビーフにポン酢添え、などなどと、一斉にオーダー開始。
幹事氏「ここの場合、パスタは〆がよろしい」との由で、あれやこれやに一斉にがっつきながら、ワインをがばがば飲む。
パスタの量は、すごかった。
コレは人数と喰いっぷりを考慮してくれたものなのかもしれないが、二種類のパスタが巨大なボウル二杯分ほど出たのだ。
パスタは若干柔らかめだが、ソースが美味い。
本格イタリアンというよりは、元気のよい和風イタリアンだが、それだけに「〆に喰う」
という幹事氏のアドバイスは間違いない。
「本格イタリアン」にこだわりすぎて、なんだかオブジェのようなパスタを鳥の餌ほど盛られるなら、ワタシはこちらの方がいい。
一品は平均して1000円〜1500円。ワインは一本3000円から。
それほど凝ったものはないし、結構和風でもあるが、中途半端な「南欧風」の店なんぞと比べると、料理は素朴なりに手がかかっていて美味い。
たまに店に響き渡る「オイカワさん!」をBGMに、皆で喰いまくっているうち、
パンチドランカーのような足取りで主賓登場。
既にそこに至るまでに、皆出来上がっている。
主賓の遅参など、もう誰も気にしていない。
某国滞在関係者が集まると、どこでもこういう空気になるのは不思議だ。
まあ、あの国では「カラオケ装備のどんちゃん騒ぎ場所」が常に「どこかの個人宅」だったので、業種職掌年齢を超えたワケワカラン無礼講には、皆なんとなく慣れているのかもしれない。
さて、一品に次ぎまた一品・・・と頼んでいくうち、マダムがテーブル横にやってきて言った。
「アンタタチはね、頼み方がヘタよ!
こういう集まりにしたいんなら、最初っから予算を言ってくれれば、こっちでうまくやってあげるのに、バラバラ頼むと全部勘定することになるじゃないの!!」
まあ、そんな具合に夜は更けた。
ここの店の場合、昼は「ボリューム重視のパスタ屋」だが、夜は近隣の大企業や官公庁の「結構エライ人たち」が、部下や同僚とのざっくばらんな会食に使っているようだ。
創業以来40年という古い店なりの雰囲気は、夜はしっくりと悪くない。
一品のボリュームもあるので、何人かで気楽な集まりをやるにはいい場所だなあ。
こちらのマダムは確かにちょっとした「キャラクター」だが、ここの店の雰囲気の一部でもある。マダムの接客が気になるかならないか、というところが、好き嫌いの分かれ目かもしれない。
まあ、イヤな人は行かなければよろしい。
そういうことなのだ、と思う。
ワタシは、気楽な集まりが都内であれば、また使いたいレストランだと思った。
ところで「早く来たらマダムに優しくしてもらった」と言ったところ、周囲が何を口々に申し述べたかについては、皆様のご想像にお任せします。
ふん!
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その後ワタシは、ひとり野毛で飲みなおしたのでした・・・。
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エーゲ海とギリシア・アルカイック 世界美術大全集 西洋編3
アルカイック・スマイルについて考察したい方へ・・・(いるのなら)。
最寄駅:内幸町 / 虎ノ門 / 霞ヶ関
料理:パスタ / イタリア料理
採点:★★★★☆
一人当たりの支払額(税込み):5,000円〜10,000円
用途:夕食
某国滞在時代の知人の送別会があった。
参加者七名である。
18:30に『ハングリータイガー』で集合、と聞いて「なんだって、ハンバーグ屋で最初に集合するんじゃ?」と思ってしまったワタシ、いつの間にかすっかりアタマが「ハマナイズ」されている(嘆)。
ここは、界隈では結構有名な「名物イタリアン」だったのである。
ナニが名物って、ここのマダムだそうで。
曰く、
「ロメスパ系のがっつりボリュームだが、マダムがクOOバアだ」
「若いOLたちが、混んでいるときにのんびり食べていたら、思いっきりどやされた」
「若い男性客が『普通盛』を頼もうとしたら、マダムに『女の子だって大盛り平らげるのに、オトコが普通でどうする!』と叱咤(?)された」
などなど。
それでもランチには大行列、なのだそうだ。
正直言って、この事前調査でワタシの気持ちは相当萎えた。
しかし、アレンジした幹事氏を知る限り、そうそうヒドイ店をわざわざ選ぶとも思えない。
送られる主賓も、某国滞在時代に随分とお世話になった人だ。
マアイイヤ、と出かけたら、虎ノ門の裏小路に目立たぬ入り口。
中に入れば「イタリアの庶民的な食堂」で、ざっくばらんだが好きな雰囲気だ。
しかし・・・ワタシは集合時間を30分間違えて、早く行ってしまったのだ。
しょうがないから、座ってビールでも飲みながら待つことにする。
ビールを注文してボーッとしていたら、突然マダムの声が響く。
「ちょっと、オイカワさん!」
(*注:再々連呼されるので覚えてしまったが、サービス担当の初老の方である)。
マダムは店の常連と思しきダークスーツの人々の席で、なにやら話しこんでいたのである。
「このコに、なにかお飲み物でも出してあげなさいよ!」
「・・・あ、もうビールをお願いして・・・」
「ならいいけど、ガーリックトーストもね!」
と、いうことで、ビールと一緒に、ガーリックトーストも出してくれた。
空腹だったので、即食べてしまう。
数分後、再び・・・
「ちょっと、オイカワさん!」
噂を聞いてはいたが、とりあえずホテルマン時代に身につけた、
無害なアルカイック・スマイルを浮かべて事態を見守る。
「ガーリックトーストでも出してあげなさいよ!
カワイソウに、お腹空かして待ってるんだから!!」
オイカワさんがワタシのせいで責められるのは忍びないので、口を挟む。
「あ、イエ、もういただきまして・・・」
「でももう食べちゃってるじゃないの! あと三切れくらい出してあげなさいよ!」
噂どおりキャラは濃いけど、聞いた話と違ってずいぶん優しいじゃないか・・・と思う。
ワタシにとって「良い人、優しい人」=「積極的になにか飲み食いさせてくれる人」
なのである。
「あと三切れ」に「えへへ」と笑ったワタシの顔を見たか、
「オイカワさん、早く出してあげなさい!」と、マダムは畳みかけるのだった。
横に座っている常連(近隣官公庁関係者らしい)は、にこやかに待っている。
と、こうしているうちに、海外某国赴任前で多忙を極める主賓を除き、全員集まる。
懐かしい顔に、しばし話が弾む。
で、主賓が現れないので「いいからはじめちまえ!」と、勝手に宴会突入。
カツオの和風カルパッチョ、スズキのカルパッチョ、生ハムとルッコラ、ピザは二枚、メインは網焼きのビーフにポン酢添え、などなどと、一斉にオーダー開始。
幹事氏「ここの場合、パスタは〆がよろしい」との由で、あれやこれやに一斉にがっつきながら、ワインをがばがば飲む。
パスタの量は、すごかった。
コレは人数と喰いっぷりを考慮してくれたものなのかもしれないが、二種類のパスタが巨大なボウル二杯分ほど出たのだ。
パスタは若干柔らかめだが、ソースが美味い。
本格イタリアンというよりは、元気のよい和風イタリアンだが、それだけに「〆に喰う」
という幹事氏のアドバイスは間違いない。
「本格イタリアン」にこだわりすぎて、なんだかオブジェのようなパスタを鳥の餌ほど盛られるなら、ワタシはこちらの方がいい。
一品は平均して1000円〜1500円。ワインは一本3000円から。
それほど凝ったものはないし、結構和風でもあるが、中途半端な「南欧風」の店なんぞと比べると、料理は素朴なりに手がかかっていて美味い。
たまに店に響き渡る「オイカワさん!」をBGMに、皆で喰いまくっているうち、
パンチドランカーのような足取りで主賓登場。
既にそこに至るまでに、皆出来上がっている。
主賓の遅参など、もう誰も気にしていない。
某国滞在関係者が集まると、どこでもこういう空気になるのは不思議だ。
まあ、あの国では「カラオケ装備のどんちゃん騒ぎ場所」が常に「どこかの個人宅」だったので、業種職掌年齢を超えたワケワカラン無礼講には、皆なんとなく慣れているのかもしれない。
さて、一品に次ぎまた一品・・・と頼んでいくうち、マダムがテーブル横にやってきて言った。
「アンタタチはね、頼み方がヘタよ!
こういう集まりにしたいんなら、最初っから予算を言ってくれれば、こっちでうまくやってあげるのに、バラバラ頼むと全部勘定することになるじゃないの!!」
まあ、そんな具合に夜は更けた。
ここの店の場合、昼は「ボリューム重視のパスタ屋」だが、夜は近隣の大企業や官公庁の「結構エライ人たち」が、部下や同僚とのざっくばらんな会食に使っているようだ。
創業以来40年という古い店なりの雰囲気は、夜はしっくりと悪くない。
一品のボリュームもあるので、何人かで気楽な集まりをやるにはいい場所だなあ。
こちらのマダムは確かにちょっとした「キャラクター」だが、ここの店の雰囲気の一部でもある。マダムの接客が気になるかならないか、というところが、好き嫌いの分かれ目かもしれない。
まあ、イヤな人は行かなければよろしい。
そういうことなのだ、と思う。
ワタシは、気楽な集まりが都内であれば、また使いたいレストランだと思った。
ところで「早く来たらマダムに優しくしてもらった」と言ったところ、周囲が何を口々に申し述べたかについては、皆様のご想像にお任せします。
ふん!

その後ワタシは、ひとり野毛で飲みなおしたのでした・・・。


アルカイック・スマイルについて考察したい方へ・・・(いるのなら)。