ディナー

September 02, 2006

関内『ラタトゥイユ』で、お誕生日ディナーだった、が・・・

ラタトゥイユ
最寄駅:桜木町 / 関内 / 伊勢佐木長者町 / 馬車道 / 日本大通り
料理:フランス料理
採点:★★☆☆☆
一人当たりの支払額(税込み):5,000円〜10,000円
用途:夕食


あちこちで好評の声高いレストラン。
「よっしゃ」ということで、お誕生日にかこつけてオットとオデカケすることにした。
お誕生日の旨を伝え、一週間ほど前に予約。
電話を受けたのは、ご店主だった、と思う。

ファンも多いレストランのようなので、申し訳ないけれどかなり辛口になってしまう、と、まずお断りしておく。
以下はあくまでワタシの個人的体験と感想なので、お気に入りをけなされた、と立腹する方がいるかもしれないが、その場合は感情的にならず、是非建設的に反論してほしい。
また、薦めてくれたヒトには、こういうこと書いてすみません、とお詫びしておく。
 

実は店内写真を見た時に、軽くイヤな予感はしていた。
私がその辺に小うるさすぎるのかもしれないが、いわゆる「安手の喫茶店みたいな席のレイアウト」なのだ。

ピンク色のシートが喫茶店風ではないにしろ、ソファー風の席を壁沿いに一列貼り付けて、小型のテーブルを並べ、向こう側に椅子を置く、という配列だ。
テーブル間隔は人が一人やっと通れる程度。
 
ランチで回転よくやるには理想的なレイアウトかもしれないが、同じ配置でゆっくりディナーを、となるとこれは厳しい。
料理がよほどのもので、サービスがよくて、店の空気が盛り上がっていれば、あるいは苦にならないかもしれないが、とにかくスタート地点が結構つらいところにあるのは間違いない。

お店のほうは、そのあたりを自覚しているのだろうか?

意外に配慮していないレストランの多いこのレイアウトだが、実は隣やそのまた隣の会話が丸々聞こえてしまって、言ってみれば「長いテーブルで相席」と大差ない状態になる。
席数を確保するには一番効率が良いが、この配列で居心地よく過ごすには、テーブルの間隔がそれなりに広くないと無理なのだ。
しかし、ここでは一人通るのがやっと、という間隔。
はっきり言って、かの「KIKUYA CAFE」より狭い。
 
さて、店に入ると、明らかに「ご同伴風(キャバ系)」のカップルに、このお店のにわかファンらしき中年女性二名。
プラス、どうみても「予約」という雰囲気でないカップルが一組(これが実に、猿以下だった。後述)。

どうみても「一週間前に予約をしました」という風には見えない3組が、店内の「比較的居心地のよさそうな席」を占拠していた。
この店の場合「予約」はたんなる「席とり」に過ぎず、居心地のよい席は誰であろうが来たもの順、ということらしい。
さりげなく、サービス担当者に「今日の皆さんは良くこられるんですか?」と聞いたら、イエ今日は初めてのお客様ばかりで、という返事であった。

フランス料理に限らず、少なくとも「レストラン」を名乗っていたり、それなりに品良くやっている店に対して、ワタシはできる限り予約を入れることにしている。
それがきちんとした店に対するマナーだと思うし、そういう客が優先的にいい席に座れるのが常識だからでもある。
席に限らず、予約の状況で店も仕入れの予測が立つ。
少なくとも、何時に何人来るかわかっていれば、それなりに準備もしておける。
だから、たとえ小さな店でも(いや、逆に小さな店だからこそ)、事前の予約はお互いのためなのだと思う。

同じものを食べるにしても、席の良し悪しで随分気分は変わってくる。
庶民もそれなりの努力を、ということで、ワタシは予約を入れる。
こういうとかっこいいが、どうせ同じカネを払うなら…という、とてもセコイ計算がベースにあるのだ。

しかし、店に入った瞬間、口がぽかんと半開きになった。
デパートの紙袋を隣の席(つまり我々の席)まで、はみ出した状態で積み上げた、オバハン二名の「真隣」に、なんと我々の「ご予約席」というプレートが光っていたのである。

せめて一卓あけて…という余裕は十分あったし、この店は「お荷物お預かり」というスペース乃至は気配りがないらしい。
 
ここで、店の精神はおおよそ見えてしまうので、勇気を持ってその場で店を出るべきだった、と思う。
単なる食事でなく、せっかくのお誕生日なのだから、出なおすべきだったのだ。

しかし、入り口でフリーズしているワタシの気配を察して「あ、どちらでもお好きなところへ…」という声がかかった。
「お好きそうなところ」を前もって確保しておくのが、予約客に対するマナーなんじゃ?、
と、いう声がどこかで聞こえたが、まあ面倒なので薦められるまま座ってしまう。
 
サービスは、驚くほど遅い。
何が出るときにも「マダかなあ」という気分になる。

まず、メニューが来ない。
やっと来たので食前酒に「クーポンで無料サービス」というスパークリングワインを頼んだが、これも待てど暮らせど来ない。
おかげさまでメニューを三回くらいは熟読できたが、こういうのは、食前酒をすすりながらあれだこれだ、とするのが楽しいし、初めての店ならサービスの担当者に料理のオススメや説明を聞かないことには、我らのごときシロウトはメニューなんて決められんのだ。

のっけからここまでアレコレ思ってしまうと、もうイカン。
完全に最初のボタンを掛け違った状態になっている。

そしてやっと来た食前のスパークリングワインはぬるく、思い切ってクレームしたら「スミマセン、まだ冷えてなかったので」(へ?)と、もう少し冷えたものをサービスしてくれた(さらっと言ってたが「それなりのフレンチ」では、初めてきく言葉だ…しかも開店5時半で、その時点ではもう8時なのである)。

まあ、もう一杯もらったようなものだから、いいじゃないか、と呟きあう二人。
このときはまだ、長い長い忍耐力との勝負になるとまでは予測していなかったのである。

そして、メニューを選び、ワインを選ぶ。
ワインの値段は、プレフィクスの値段や店の構えなども考えるとわりと強気で、ボトル3700円強から。
まあそう悪くもなかったが、コルクがプラスチックだし、原価は…と想像しかけて、やめておくことにする。

いや、他にもリストにあったので聞いてみたら、どれもこれも「ストックなし」とのことだったのだ。要するに「ハウスワインを飲んでください(店的にCPがいいんで)」ということなのかなあ、と邪推したくなるが、そういう気持ちは押さえつけて、オススメに従ったのである。
こうなると、自力で「最低限の快適さ」を確保しなければいけない、という自覚が芽生えてくるのだ。
過酷地でのサバイバル(?)は、一応得意科目ではある。

「冷えてるのかなあ」と、夫が素朴に言う。
「セラーから出してたから、せめて飲める温度なんじゃないの?」

と、言ううちにワインが、たっぷり水を湛えた氷水に浸かって登場。
「冷えていないのでしばらくまってほしい」との由であった。
先の会話で「想定内の事態」だったので、二人後生大事に残しておいたスパークリングワインをチビチビと啜る。

他所のテーブルでも「遅いなあ」という声が聞こえる。
勢い、店内の雰囲気は、活気に満ちたものとは遥かに遠ざかる。
 
そういう状態で食べたので、料理自体の評価も「感動的」とは言いがたくなる。
 
店名にまでなっているラタトゥイユは美味しいし、アミューズとしても付け合わせとしても珍しいとは思うものの、基本的に南フランスなどでは一般的な家庭料理なので、むしろ不味かったら問題だ。

ここまでいうと問題ありかもしれんが、これに近いものは自分でも作れる。
要するに、本来、特に難しい料理ではないのだ。

さてこの間、萎えた気分にさらに塩をぶっ掛けてくれたのは、先述の「猿カップル」だった。
まず、終始一貫煙草を吸いっぱなしで煙突状態。
小さな店が煙ってくるほどの喫煙量である。
まあ、煙草でも吸わなきゃやってらんないほど待たされてる、ということでもあるのだが、ここは少なくとも居酒屋の類ではない。

そして、女性客の声がタマランほどでかく、甲高い。

「ワタシはさぁ、XXXさんのことなんかどうでもいいのよ、でもねアレガコレデカクカクシカジカだから思いっきり気分悪いわけぇ〜(煙草をふかす)。だから、べつにさあ、XXX支店なんてどうでもいいのよ、物件がどうしたとかいう問題じゃなくってぇー(煙草)、ああいう態度がチョーむかつくっていうかぁ〜(煙、思いっきり吹き上げ)・・・」

不動産関係らしい。人間関係が難しい会社らしい。XXX支店はかなり、彼女の勤務する某支店に対する礼を欠いているらしい。特にそこの担当のある女性が、非常に態度が悪いらしい。故に彼女は相当なストレスを溜め込んでおり、恋人と思しき同僚に、思いのたけをぶちまけているのだが、アナタもちょっと何かいってやったほうがいいのではないかと彼女は立腹している…

と、いった、特に関心のない事項が、耳にビンビン響いてくる。
「ちょっと、アナタ、うるさいんですけど!」
と、注意したい衝動に駆られる。
「それに、私たちは煙草を吸いませんから、せめてお食事が済まれるまで煙草はご遠慮いただけませんか?!」

しかし、理性が「この類に注意などすると、余計に気分が悪くなるのが目に見えているよ。やめときなさいよ」と囁く。
サバイバル的受動型自衛である。
理性が正しい。
珍しく理性のほうに従う。
だって、ここまできたら撤退は不可能なのだ。
せめてうまいものが目の前に来てくれれば、と祈るように料理をじっと待つ。

やれやれ。

かくして、やっとサーブされた魚介類を使った前菜は、悪くはないし、値段にすれば量も良心的だが、ナニカどこか間が抜けた感じがしてしまうのは、先入観の故だろうか?
 
その間、猿♀はさらに延々と社内事情と不満を声高に語り続ける。
猿♂は「ふうん」「うんそうだなあ」といった合いの手を入れながら、ひたすらやはり煙草をフカシ上げ続ける。
肘を付いて右手でフォークを持ち、フォークを下ろすと煙草を持っている。
二人とも。

一方で、一見してキャバ嬢同伴系カップルから「ここ、サム〜い」という声が上がる(しかしどうしてこの手の「ご同伴」というのは、一目瞭然なのだろうか?
こういうカップルって、どこで出くわしても似たような空気を放っているのだ)。
見ると、タンクトップに肩丸出し状態であるから、エアコンの効いた店では、そりゃあ寒かろうよ、と思う。

同伴オヤジも、ひたすら煙草を吸い続ける。
店内、次第にグレーの靄がかかってくる。
狭い店なのだ、ここは。

いちいち引き合いに出して申し訳ないが、KIKUYA CAFEが"No Smoking"という札を店の入り口に下げているのは、英断だ、とナントナク思う。
脈絡なく「KIKUYAのオムライス食べたいな〜」などという思念が浮かんで消える。
 
この辺で、同伴組が消えた。
夫が「"One down. One more to go."ってところだな…」と呟きながら笑う。
「それまで生き残れればね」と、ワタシ。

ここで、携帯電話の音が鳴り響く。
猿♀である。
同じ調子で「そうそうそれでぇ〜!」などと、近況をしゃべりまくっているが、幸い目の前に、やっとのことで次の前菜が現れた。
おかげで彼女の近況はわからない。幸いに。

さて、次の料理も海鮮系だが、特に印象は残らない。
ワタシは「サザエのガーリックバター」を頼んだが、ちょいと火が入りすぎ。
でも、ガーリックバターは残したくない。

そこに「パンのお替りはいかがですか?」と、スタッフ登場。
ハイ、ハイッ、お待ちしてました!

すると彼は、小さなパンを一個、夫の皿にだけ置いて去っていってしまったのであった。
ひとつしかパンがなかったらしい。
必死で呼び止めて「ワタシも・・・」と申し述べると「今お持ちします」との由。

「なんだか、アンガールズの田中に似てないか、彼?」
「田中が山根の物真似やってるようだね」
「うむ」

パンは「今温めていますので」と別の女性スタッフが言うが、これがまた忍耐の時間である。
ああ、ガーリックバター…。
せめて、ガーリックバターをパンに…と思ううち、バターに膜が張りはじめる。

ここでようやく、猿たちが勘定をした。
どっと肩から重荷がおりる思いがする。

やっと落ち着いて食べられる、メイン登場である。

仔羊のグリルは、レアに焼いてあり(我々はレアが好みだが、こういう場合焼き加減は聞かなくてよいものだろうか?)、量も大振りのラムチョップ(オーストラリア産のチルド、とのこと)が二本と、見たところ悪くない。
でも、残念ながら、特に際立った癖はない代わり、風味も特にない。汁気も薄い。
 
もう一品のメイン、豚ほほ肉の煮込みだけは、上出来でほっとする。
野菜は上質で、スープは優しい味。
きちんと手がかかった感じがする。
ああ、よかった…と、うっすら涙ぐみたい思いになる。
これは美味しい…。
 
付けあわせのサフランライスも、軽く米に芯が残る食感がよい。

さて、そこで、ほっとして、ついイレギュラーなリクエストを出してしまった。
コースに付くデザートを、チーズに変えてほしいとお願いしたのだ。
メイン用にオーダーした赤ワインが、まだたっぷりグラス一杯残っていたのである。

快く受けていただいたのは嬉しいことだった。
しかし、チーズを切るだけの作業のはずが、何をどうしたのか再び延々と待たされる羽目に落ちる。

今度はオットがキレた。
何しろ、激務の合間を縫って寝不足状態で「妻のお誕生日ディナー」なんぞに付き合ってるので、もういい加減にして家に帰りたいのである。
明らかに周辺状況にナーバスになっている妻を、珍しく面白いことを言ってなだめてみたりもしていてくれたのだ。お誕生日だから。

しかも、待っている間に、チーズ用のワインは着々と減ってゆく。

「なんだってこんなに時間がかかるんだ?!」
「それはね…」と、ワタシは思い切り声をひそめる。
「シェフがそこの席の客とおしゃべりしてて、厨房にいないからではないか、と…」
(相席のようなものなので、こちらの会話は丸聞こえになる…はずなのである)

そう、シェフは、残った中年女性客二人と、アルバムなど出して「パリの思い出」を語り合っていたのだ。

ううむ。

ついにオットが「すみません、あまり時間がかかるのならば、もう結構ですから」と
奥に声をかけた。
「申し訳ありません、すぐにお持ちしますので!」

というわけで、我々のチーズ登場。
同時に、小さなブーケと「Happy Birthday!」と書いたクッキーを載せた、かわいらしいチーズケーキ登場。線香花火つき。

確かに、予約のときに「甘いものはあまり食べないので、ケーキのサービスは結構です」といった、その意思は伝わっていたらしい。
甘みを抑えた、美味しいチーズケーキだった。

小さな素敵なブーケまでいただく。
お誕生日に花束、というのは、実に心温まるものだ。
これは嬉しい。

これは嬉しいのだが、そこに至るまでにあまりに色々とあって、申し訳ないけれど
コメントが厳しくなってしまう。
実に残念なことだ。

料理は決して悪くはない。でも、評判に聞くほどよいとも思えない。
好みの問題だろうが、サービスの状況とどこかしら通じ合うものがあるように思える。
 
サービス内容は大いに要改善だ、という印象を持った。
その日はたまたま、諸般の事情で色々ミスが重なったのかもしれないが、とにかくサービスの姿勢と、現実的な人員などの態勢を改善しない限り、ここは到底プロフェッショナルなレストランとは言いがたい。

そもそも、厨房にシェフと助手の二人、フロアのサービス専門の女性が一人、というのは、店の広さなどから言っても無理がある。
だから、アンガールズの田中が山根になったような状態の青年が、パン一個だけ持って「パンのお替り」を聞きに来てしまったりするのだ。
しかも、厨房にかなりのスペースを割いているので、オーナーシェフの目がいきわたらない状態でもある。
いや、行き渡らせようという気持ちがあれば、の話なのだけれど。
 
ランチならば、よいかもしれない。
ランチのCPと内容が大変よい、という話も聞いたことがある。
 
でも、ディナーに関しては残念ながら、悲しいけれどこの評価になる。
そのうちランチに行ってみよう、とは思うが、ディナーで再訪、というのはもうない。

お会計は一人7000円ほど。
それなりにリーズナブルではあるが、釈然としないまま、家路に着いた。

やれやれ。


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同じ狭い小さな店でも、西横浜の『スペリアーモ』は、私は非常に高く評価している。値段的にもかなり似通っている。まあ、好みの問題、なのだろうなあ。





やっぱり、8月終了とならず、まだやってます…いつまで続くのだろう?



arima0831 at 03:47|PermalinkComments(16)TrackBack(2)このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック Share on Tumblr Clip to Evernote