応急処置

January 28, 2007

虫歯の思い出 其の三 〜飛行機は鬼門〜

歯の治療をした直後、飛行機は鬼門である。
特に長時間のフライトは要注意。
乗るのなら、痛み止めやら酢やらマキロンやらを仕込んでおくこと(其の二参照)。
もう衷心からそうご忠告申し上げてしまう。

以前カイロに住んでいたころ、思い出すだけで体の中が捩れてきそうなくらい
痛い思いをしたことがあるのだ。

一時帰国の直前に、紅海でスキューバの免許を取っていた。
学科講習で「歯の治療の不備で詰め物と歯根の間に隙間があると・・・」という話を聞いて
「ああ、こんなのは絶対イヤだ」と心底思ったところだった。
なんでも水中に潜ると、気圧の関係で詰め物のわずかな隙間にある空気が、
思い切り膨張して歯根の神経をダイレクトに刺激するのだそうだ。
教室の全員が「うわー」「きえー」「ひぃぃぃ」などと、身を捩って怯えた話だった。
ディテールはいいかげんだが、まあそんなような内容だ。

よりによって同じ頃、偶然とはいえ『マラソンマン』などという本を読んでいた。
ダスティン・ホフマン主演で映画化もされたが、結局よく覚えているのは、追われる男が
ナチの追っ手につかまって、マッドサイエンティストみたいな歯医者に拷問されるシーン。
「しゃべりますシャベリマス何でもしゃべりますからいっそ殺してくらひゃいぃ〜」
と、いうことになるだろうな、ワタシは・・・ひぇ〜、怖っ!、などと思って読了した。
ああ、愚かだなあ。
日常生活にもホラーの隙間は潜んでいるんだよ・・・。

その後、日本に一時帰国して「そういうことになると怖いから」と歯医者に集中して通った。
キレイさっぱり歯も治ったし、ああもうこれで大丈夫・・・と飛行機にのった直後から、
軽く歯の奥に違和感が出始めた。
微妙なGがかかる感じ、とでも言おうか。

今でこそ直行便だが、当時のエジプト航空(以下MS)カイロ行きはバンコク、マニラ経由
(ドサ周りのバスみたいな運行経路だな)。
出発直前まで飲んだくれて歩いたあげく、手当たり次第に詰め込んだ重い荷物をひきずって
文字通り機内の座席にタッチダウン状態。
「・・・ん?」などと歯を気にしながら眠ってしまった、そのしばし後・・・
目が覚めた。
寝ぼけてしばらくなにが起きてるかわからなかったが、なんだかほっぺたが痛い。
ほっぺたっていうか、どうも口の中が変な感じだ。
・・・ていうか、歯が、痛いんじゃ・・・ていうかっ!

んがんがんがんがんがんが、どんどん!

気圧の下降とともに奥歯の隙間で急速に膨張した空気が、歯根に激烈なドラムビートを
叩きつけてくる。
しかも、かなりアフリカン。
行く先はアフリカ大陸つってもエジプトなんだから、もうちょっとメランコリーな
アラビック・チューンで頼みたい・・・なんて、最初は余裕をかましていたが、冗談抜きで
痛みがエスカレートして行く。

しくしくしく。
原理を知らなかったら、もっと気が楽だったかもしれない。
でも、悲しいかな、瞬間で理解してしまったのだ。
「海に潜るのと、空に上がるのって、方向や環境が違っても一部物理法則は同じなんだわ」

根拠は知らんが、間違いないと思う。
ああ、一ヶ月ほど前に「できたら死ぬまでそんな目にあいたくないね〜」などと、
脳天気に笑い話にしていた「アレ」が、いまワタシに起きてるらしい。

座席で暗澹とした気持ちになって身悶えしていたら、バンコクに着陸して少し楽になった。
「やれやれ」と、トランジットついでに「途中給油」する。
MSは酒が出ないので、ビールだワインだウィスキーだという「エネルギー源」を
補給するのだ。
成田でも多少は買い込むが、高いので主要補給地はバンコク。

確かにアレは空気圧の関係だろう。
地上に降りたとたんに、急に楽になった。
だから「痛み止めにビールでも飲むか」という気分にもなったわけだ。
馬鹿である。

さて再び機内へ。
すると、いきなりまた「アフリカン・ビート」が襲いかかってきた。
高度上昇とともに痛みが鋭角化する。
キーーーン。

クルーに訴えたが「あっそ」といったような対応である。
どうにもならない。
この世の終わりが来たような気分で、席に戻って泣いた。
海に潜っているときなら痛ければ水面に戻ればよかろうが、飛行機に乗ってしまうと
手も足もでない。
逃げ場はない。
袋詰めになったような閉塞感だ。
「復路に袋詰め」などとどうしようもない駄洒落までが脳裏をよぎる。

しくしくしくしく。

悲しい、辛いという感情とは関係なく、ましてや恥も外聞もない。
痛いよう。
しくしくしく。

すると、誰かか肩をゆすった。
他所のキャビンの男性エジプト人クルーが立っている。
「歯が痛むんだって・・・?」
「んみー」(→「うん、そう」の意)
「痛み止め、あげようか。オレのだけど」
「うあ〜、んな〜」(→「ああ、お願い、チョウダイ」の意)

さすが、エジプト人とは良くも悪しくもおしゃべりなのであって
「あそこの席の日本人は、歯が痛くて泣いている」という噂話が機内中に伝わったらしい。

「ああ、かわいそうに・・・俺もね、経験あるからわかる。辛いよね」

その後何度も「どうだ、大丈夫か?」と、顔を出して面倒みてくれた。
「とにかくなんか食べて、薬飲んで酒でも飲んで、何とか寝てなさい。
あと二時間くらいしても薬が効かなくて、眠れなくて辛かったら睡眠薬をあげるよ」

じつは、これはフライトの乗務員としては、絶対にやってはいかんことなのである。
でもあの時のワタシには、彼の姿は後光がさして見えた。

そうこうしているうちに、睡眠薬をもらうまでもなく無事眠れて、目が覚めた頃には
痛み止めが効いたか少し楽になった。

少し話したところ、彼は「飛行機降りたとたんに歯医者に走って、もうこれで三本歯を
抜いている」
などととんでもないことを言っていたが、少なくとも鎮痛剤はよく効いたよ。ありがとう。
「まあ、家に帰ってまだ痛んだら飲みなさい」と、残りの薬もくれた。
感謝感激。

と、いうわけで、飛行機に乗るときや旅行前などは、歯の痛み止め対策もお忘れなく。
あと「飲酒」は悪化を誘うだけ。
飲んじゃいけません。


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ああ、歯医者さんに行かなくちゃ・・・。




マラソン・マン

久しぶりに読み直そうかと・・・歯の治療中は、やめたほうがいいです。

マラソン マン スペシャル・コレクターズ・エディション

DVDもあります。


arima0831 at 11:45|PermalinkComments(6)TrackBack(1)このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック

January 26, 2007

虫歯の思い出 其の二 〜応急処置の妙案〜

前振りだけで「つづく」にしていたら、虫歯応急措置の妙案が飛び込んできた。
コメントいただいた「けんちゃん」さま、ありがとうございます。
これは「お役立ち」だと思いますので、公開させていただきます。

「緊急時の歯痛には騙されたと思って口をよくゆすいでから、無添加の米酢を原液のまま口に含んでください。消毒と熱冷ましの作用と軽く麻酔に似た作用があるのでかなり楽になると思います。何度か繰り返すと次の日の朝くらいまでは激痛が鈍痛になるくらいの効果はあります」

「無添加のお酢が無い場合には砂糖が入ってない酢でも代用できます。最近は砂糖を足してあるお酢があるのでそこだけは要注意です」

一応漠然と「歯でバイキン(?)が暴れる温床を減らす」というところが肝心らしい、
とは思っていたけど、なるほどこれなら殺菌&消炎鎮痛効果はかなりありそう。
なーるほど!

「それでもダメなら綿棒の先を引きちぎってマキロンの類を染みこませ痛い部位に詰めるか乗せてください。完全に麻酔ですから、ただあまり大量の飲み込むような事は避けてください。あくまでも緊急手段です」

これは強力かも・・・しかし、舌まで痺れそう。
まあ歯が痛くなったらなりふり構わずやるんだろうな。
「うわぁぁぁぁぁ! 抜いてくれぇぇぇ〜!!」状態ですからねえ。
いぬわんクンなど、バーで口に指突っ込んで自力で引っこ抜こうとしてたな。
必死に止めたけど。
あの時、口にグラスの氷を押し込むだけでなく(気休め程度の効果はあったそうだ)
ドボドボ酢を流し込んでやればよかったんだな・・・(もう遅いけど)。

こちらのコメントを下さった「けんちゃん」サマは、学校の先生ということで、

「修学旅行や社会見学先で必ず・・・不思議なくらい歯が痛いって泣き叫ぶ子が必ず出るんですよ。で校医さんの指示がナロンエース+これで次の日まではもつからって。

でも次の日は「歯医者」さんに行って応急処置はさせますよ」と。

なるほど、ワタシも考えて見れば、イタイ記憶はいつも旅行と隣り合わせだ。
環境が変わったり、出発前に思わぬストレスがかかったりして、抵抗力が弱るのだろうか。

一度目は大学受験で東京から札幌へ向かう朝だった
治療済みの奥歯が突然腫れ上がって(どうもヤブ歯医者だったらしい)、
こぶとり爺さんそのまんまの顔で飛行機にのった(周りの人の視線が痛かった)。
翌日、試験会場の外に積もった雪で、休み時間シクシク泣きながらほっぺた冷やしたな。
8度ばかり熱が出て、ヘロヘロになりながら答案に何かしら書きなぐって出てきた。
「お酒でも飲めば楽になるかも」とか言って、ビールとワインをホテルの部屋でがぶ飲み
したら、余計痛くなって眠れませんでした。
馬鹿ですね、ただの。

で、試験のあとスキーしようと思って板を送っていたけど、そのまま送り返して
泣きながらオウチに帰った、かわいそうな19歳(一浪してた)。
ちなみに、初年度は「受験生の宿」にスキー板を担いで入って、大層嫌がられたから、
二度目は気を使って(?)別送に。ついでに宿も普通のビジネスホテルに。
そこまで計画的に根回ししたのに(・・・勉強しろよっ・・・)、スキーどころか
札幌ラーメン一杯喰えずに東京に帰った、あの空しさ悲しさが忘れられない。
まあ、頭の中身がのたくりスポンジ状態だったから、あまり複雑な感興もなかったけれど。

父はしつこく「スキーしないで帰ってきたから、滑んないで済んだんだよなー。
よかったなー」と、なんだか嬉しそうに言い続けましたとさ。
ネタにしてどうするんだっ!とか当時は怒ってたっけな。

そして、もっと凄惨な事態が、それから8年ほどたったある時起きたのだった。

(つづく)


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「けんちゃん」さま、ありがとうございました。


 歯痛用、っていうか、この酢は旨いです。

 ぽん酢がまた旨い(歯痛止めには使えません)




ウチは、ここでたまに売ってると買います。

arima0831 at 10:24|PermalinkComments(11)TrackBack(0)このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック